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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
7・魔力の壺
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疑問

 遺跡内に入り、レンがまず疑問に思ったのは……


 (何をもって古代王国時代のものと判断したのか……?)


 というものだった。

 古代の魔法具や魔法書等を求めて旅をしているレンは、数えるのを止める程の遺跡を探索してきた。

 古代王国時代の遺跡に入ったこともあるが、その遺跡のいずれもが古く傷んでおり、見た目で古さを感じる事ができる。

 だが、今回の遺跡は殆ど傷んだ所が見当たらない程の綺麗なものだった。

 古代遺跡はその遺跡を守るための魔法がかけられている事が多いが、古代魔法技術をもってしても、その魔力が維持されることは珍しい。

 魔力が失われており荒れ果てている遺跡が殆どで、魔力が残っていても傷みを完全に防ぐことはできていない。

 古代王国時代の遺跡程古くなくても、発見された時には内部は傷んでいるものだ。

 故に、傷みが見当たらないこの遺跡を古代王国時代のものと判断した理由が気になったのだ。


 (ここまで綺麗な遺跡なんて今まで……)


 入ったことがないと思いそうになったが、

 

 (いや、一つだけあったか、こういった古代遺跡が……)


 ふと思い出すレン。

 それはとても印象深い遺跡探索だった。

 最近過ぎて、逆に一瞬頭から抜けていた。

 忘れるわけがないその遺跡を……

 忘れることができないのは、その遺跡の特異性もその要因の一つだったが、それ以上に心に残っているのは、目の前を歩くアミス・アルリアと出会った遺跡だったから……

 ふと、横に並びアミスへと視線を移すと、ほぼ同時にアミスの視線が自分の方に向けられる。

 何か言いたげな視線に、レンはアミスの言葉を促すかの様に首を僅かに傾げた。


 「古代遺跡って、どこもこんな感じなんですか?」

 

 レンと同じ疑問をアミスも感じ取り、そして、レンと同じようにあの時の事を思い出していたようだった。

 

 「いや、私が知る限りでも珍しいと思うが……」

 「そうですか……ってことは……」


 自分なりに考え込むアミスの思考を、レンが止める。


 「結論を急がない方がいい」

 「え?」

 「今の段階では予想しかできないからな。

 ま、個人的には嫌な予感がするがな……」


 強気な言葉が多いレンから出たそんな発言に、アミスは少し不安になったが、レンの言葉に素直に従う事にする。

 予想しかできない中での結論は、頭の柔軟さを奪う要因になってしまう。

 魔法使いに最も大事なのは柔軟な発想力だと、父から教わったことを思い出すアミス。

 柔軟な発想力は、足りない魔力や技術を補う事ができると……

 特にアミスが契約している聖獣は、柔軟さを持ってこそ活きるものが多い。

 聖獣を除いた魔法使いとしても、魔力も技術も足りない事は自分で判っている。

 その中で、自分が役に立つためには何が大事かを、改めて心に置くアミスだった。





 先に入った冒険者達が消息を絶ったという地下16階までは、何事もなく進むことができた。

 危険と呼べる事は何も無く、特に新しい発見をすることも無かった。

 これからが本格的な仕事だという思いが冒険者全員が思っており、辺りを包む緊張感が増していく。

 先頭を歩く盗賊職のサンクローゼが目の前にある扉を調べていた。

 その固く閉ざされている扉は、元々は魔力を帯びていたことがレンの魔力分析により判っていた。

 だが、今は僅かな残留魔力を感じる程度であり、かけられていた魔法は解除されているようだが、扉自体は重く閉ざされていた。

 魔法の錠が解除された扉を、その後閉じた者がいる。

 それが何を意味するのか、その場にいる全員が理解していた。

 故に扉の先に危険があるという緊張感がどんどん増していく。

 

 「罠は無いな、扉自体にはな……」


 サンクローゼは呟くように言う。

 扉を開ける事自体が、危険を呼び込む罠の様なものなのだと理解しながら……


 「解錠はできるのか?」

 「問題ないが、開けていいのか?」


 全員が気付いているだろう扉の先にある危険を再度促すため訊ねた。


 「開けない選択肢があるとでも?」


 依頼主からの当然とも言うべき返答に、サンクローゼはすぐに解錠作業に取り掛かった。

 その後ろには何か起こった時にすぐに対応できるようにリンが控えていた。

 リンは遺跡に入ってからはサンクローゼの側についていた。

 「気になる事がある」と言ってアミスの側から離れた彼女の真意はアミス達には判らなかった。

 アミスやラスにも、サンクローゼの纏う精霊力のバランスの悪さは気付いていたが、リンがそこまで気にするのが不思議に思っていた。

 そんな疑問を頭に浮かべる一行とは違い、リンは1つの確信を得ていた。 


 (やっぱり、そうだ……)


 じっくりと精霊力を感じ取り、予想したことに間違いない事に気付くリン。

 それは精霊や魔法等に関して自分より詳しいはずのアミスやレンも知らないだろう事。

 それはかつての経験からリンが知る事になった知識。

 思い出したくない経験から得た知識だった。

 リンは思い出しそうになった嫌な記憶から逃げるかのように、目の前の男に意識を集中させる。


 (私が何とかしないといけない。

 そうすることが……) 


 そうすることで、アミスとの出会いにより薄れている過去からの呪縛を完全に消し去ることができる。

 リンはそう思えてならなかった。

 その為にアミスに出会ったのだと……

 その為に目の前の男に出会ったのだと……

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