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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
7・魔力の壺
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遺跡探索依頼

 朝食を取ってから直ぐに仕事を探す予定だった。

 だが、その行動を起こす前、注文した食べ物が席に届けられる前に、突然声をかけられる。

 直ぐに動けるように装備類を準備してから食事に着いていた。

 だからだろうか?

 それは仕事の依頼。

 いくら冒険者が多く利用する宿とは言え、専用の冒険者ギルドという訳ではない。

 故に、ラスは明らかな疑念の思いが籠めた瞳をその男に向けた。

 そんなラスの様子を見て、相手はこの集団のリーダーが彼だと判断したのか、ラスの瞳をじっと見て説明を始める。

 が、ラスは掌を依頼者に向けて静止する。

 

 「?」

 「まずは朝食を取らせてもらう……」

 「あ、ああ、構わんよ。

 では、あちらの席で待たせて貰うので、食事が終わったら声をかけてくれ……」


 そう言い返事を待ったが、ラスは敢えて何も返さなかった。

 少し、不満げな表情を見せながらも、それ以上何もを言わずに少し離れた席へと移動する依頼者。


 「随分と冷ややかな対応だな……」

 

 レンは小さな声でそう言いはしたが、その口ぶりや表情からは不満を見せていなかった。

 寧ろラスの対応に間違いはないかのような物言いだった。


 「受ける気はないのね?」


 二人のやり取りを見てリンがそう尋ねると、

 ラスはチラッと男を見てから、小さく頷く。


 「直接依頼に来る奴に、ろくな依頼者はいない。

 俺の経験上な……」


 その言葉を受け、リンは少し考える。

 そして、


 「そんな経験、今までなかったから判らないわ」


 と、苦笑いを浮かべた。

 一般的に冒険者に対する依頼は、冒険者ギルドを通して行うのが普通であり、それ以外の形で仕事を受けることなど稀なことだ。

 リンの様にそれ以外の形で仕事を受けたことがない者も、決して珍しい存在ではなかった。

 ラスもリンから返ってきた言葉に、そんな経験が多い自分が、逆に稀な存在なのだと実感していた。

 

 「ま、判断は話を聞いてからだな……」


 ラスはそう呟きながら思う。


 (嫌な予感しかしないけどな……)


 それは確信に近い予感。

 最近、当たりすぎて困る悪い予感だった。





 依頼内容は遺跡探索の護衛だった。

 それだけ聞くと珍しくもないものだったが、詳し内容を聞けばかなり特殊な仕事と感じた。

 まずはその人数。

 目の前にいる依頼主であり、この土地の領主ウェディック・バールソンとその側近2人他に冒険者を20名程連れて探索に入ると言う。

 遺跡の探索の仕事にそれだけの人数を借り出すのは聞いたことがなかった。

 中に入ってから分かれて探索するのだろうか?

 そう思い確認しては見たが、一つの集団で行動するとのこと。

 理解しがたい話に、ラスの嫌な予感は強さを増し、その心は断るという結論に決まりつつあった。

 だが、それを感じ取ってか、ウェディックはラスの考えを覆すための言葉を発した。


 「この町で仕事をするなら、今はこれ以外に無いですぞ……」


 ラスは訝しげな目をウェディック向ける。


 「ど、どういうことだ?」

 「私は冒険者ギルドの長も兼ねています。

 今回の仕事に集中して貰う為に、私の部下も派遣して他の仕事は片づけたばかり。

 故に冒険者ギルドにも初級冒険者向きのモノしか残っていないのが現状です。

 いえ、その程度の仕事で良ければいくらでも手配しますがね」


 ラス達が初級レベルの冒険者ではない事を判っていての言葉なのだろう。

 その言葉からは余裕を感じられた。

 ラスは悩んだ。

 正直、手持ちの旅費が少なくなってきている。

 更に、次の仕事までと同行しているジーブルの存在もあり、この町で仕事を一つ受けておきたかった。

 一時的な旅費を稼ぐだけなら、初級者用の仕事を複数こなすという選択肢もあったが、できるだけ早めにグランデルド王国からもっと離れたいという思いが強い。

 

 「もっと詳しい話を聞かせて貰えるか……」

  

 嫌な予感がどんどん強まっていたが、受けるしか選択肢がないと諦め気味にラスは訊ねた。

 

 (グランデルトの一件以上に悪いことはないだろう……)


 そう思いながら。

 そう願いながら。

 それが甘い考えなのだと理解しつつも、そう願うしかなかった。





 依頼を受けることを決めて、一行は冒険者ギルドに場所を移した。

 アミス達6人を加えた事で目標の人数に達したらしく、依頼主は直ぐにでも一同を集合させて出発させるつもりらしい。

 あまりに性急な流れだったが、それは経済的に理由らしい。

 領主としての責任として、新たに見つかった遺跡の調査を指示したらしく、最初は3組の冒険者一行(パーティー)を派遣した。

 それにより様々な稀少な魔法品等が見つかり、その遺跡は古代王国時代のものだと予想がつけられた。

 優秀な冒険者達だったらしく、順調に探索は進められていた。

 支払う報酬以上の結果がもたらされ、快く探索してもらおうと追加報酬まで出した。

 それにより、3組の冒険者達は競い合い、更に結果を出していった。

 最初の一ヵ月程は……

 一組の一行(パーティー)からの定期報告が途絶えたのが二ヵ月程前の事。

 残った二組に細心の注意を払う様に指示を出したが、彼等も戻る事はなかった。

 最後に受けた報告では地下15階まで到達していた。

 その先により危険な何かがいると判断し、領地外にも優秀な冒険者を求めた。

 危険を踏まえて人選し、それ相応の報酬を用意して高レベルな冒険者達を新たに派遣した。

 が、地下16階で先の冒険者達の遺品を見つけたと報告を受けた後、消息を絶った。


 「やる気を煽る為に、その報告に高い報酬を払ったのが失敗だったのかもしれない……」

 「その報酬で満足して立ち去ったと?」

 「いや、遺跡に再度入ったのは確認している」


 ウェディックが失敗といった理由は、それが財政を少なからずも圧迫しているということだった。

 故に次の探索は必ず成功させなければならない。

 今まで消費した財産を無駄にしないためにも……

 だが、ラスやリンはそれに賛同することはできなかった。

 口には出さないが、これ以上の損失は領民を苦しめることになることが目に見えていたからだ。

 重税という形で……

 もしかしたら、それをしないための行動かもしれない。

 だが、実際に探索が成功したとしても、それに見合った物が得られるとは限らない。

 得られなければ、それは失敗と同じモノを生み出すだろう。

 なまじ、最初が順調だった事が不幸の始まりだったのかもしれない。

 それが引き際を見失わさせ、冷静な判断を失わせた。

 話を聞く限り、決して頭が悪い領主とはラスには思えなかった。

 だが、今の思考・判断は頭が良い者のそれでは無いとも思えた。


 (他に仕事がなくても、受けるべきではなかったかもしれないな……)


 ラスがそう思いながら仲間たちに視線を向けると、みんな同じ心境なのか少し困ったような表情に見えた。

 嫌な予感を拭えぬまま、冒険者ギルドに到着する一行。

 他の冒険者達が待機してるという広い部屋へと通される。

 そして、入ってすぐに見知った顔を見つけ、ラスは頭を押さえた。


 (ヴェルダ・フィライン……)


 かつて、ラスとアミスが敵として戦った相手。

 ラスに至っては、何度も戦った相手。


 嫌な予感ほどよく当たる。

 それを強く実感し、そして更に強い悪い予感を感じずにいられないラス・アラーグェだった。

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