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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
6・激動のグランデルト
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理由

登場人物紹介


◎アミル・アルリア

 男性 15歳 ハーフエルフ 魔導士

 本物語の主人公

 聖獣使役に類まれない素質を持つ、心優しい少年魔導士

 タリサを助け、そして助けられる


◎タリサ・ハールマン

 女性 19歳 人間 暗黒騎士

 元グランデルト王国騎士団の闇氷河将軍

 ゼオル・ラーガのクーデターにより、国を追われて逃走中


◎エリフェラス

 男性 人間 魔法剣士

 知衛将軍と呼ばれる知将として知られる将軍

 とある理由で単独行動中

 アミス・アルリアは目を覚ますと同時に直ぐに起き上がった。

 そして、すぐにタリサの無事の姿に気付き、胸を撫で下ろす。

 そんなアミスを見て、タリサは苦笑いを浮かべた。


 「お前は、どこまでお人好しなんだよ……」


 改めて実感するアミスの人の好さに、タリサの苦笑いは優しげな笑みへと変わっていく。

 そんなタリサの表情にアミスは動きを止める。

 タリサが優しい人なのは、アミスは実感していた。

 それは時折出る自分を心配するような発言で感じていたものであり、表情にそれを見せる事は今までなかった事。

 アミス達に見せてきたのは、常に冷静でクールさを感じさせる表情ばかりだった。

 その冷静さが崩れるのは彼女の心が乱れている時であり、先程まで見せていたものがまさにそれだった。

 まだ、そんなに長い付き合いではない関係だったが、色々判ってきたアミス。

 それでも初めて見るタリサの表情から感じ取れる優しさに、アミスは少し驚き、そして同時に安らぎを感じ出していた。


 「? どうかしたか?」

 「え? いえ……」


 アミスは言葉に困り、顔を少し赤らめてしどろもどろになってしまう。

 僅かに首を傾げるタリサ。

 そんなタリサにアミスは更に冷静さを失う。

 戦闘時にはどんな劣勢な状況下でも、冷静さを失わないアミスだというのに……


 「そ、そういえば……、何があったんですか?」

 

 漸く別の話題が浮かび、慌てながら口に出す。


 「僕、気を失ってたみたいですけど……何があったんですか?

 何か嫌な魔力を感じた所までは覚えているんですけど……」

 「追っ手がな……」


 タリサは返す言葉を濁した。

 どこまで話せばいいか?

 大元となる話はできない。

 できない理由があった。


 (約束してしまったからな……)


 タリサは思い出す。

 エリフェラスとのやり取りを……




 エリフェラスの説明は完全に信じ切れるものではなかった。

 シルアもトリッセルもヨネンも生きている。

 それだけではなく、死んだと思っていたフレイディアも、処刑になるのは確定だったはずのブランキス王も死なないとエリフェラスは言う。

 信じたい感情と信じられない心が葛藤する。

 だが、事細かく説明するエリフェラスが嘘を言っているようには感じなかった。

 今まで何度もエリフェラスの嘘を耳にしてきたタリサだったが、何故か今回の事は嘘と言い切る事が出来なかった。


 (真剣味を感じるからか……、でも、何故だ?)


 タリサは考える。

 考えても自分だけでは答えは出そうになかった。

 だから、一番の疑念点をストレートに訊ねることにした。


 「エリス……、いや、知衛将軍エリフェラス……」


 エリフェラスが誤魔化した言葉を返さない様に、真剣さを見せる為に、タリサは普段の親しげな呼び方をやめた。

 エリフェラスもそれは感じ取ってはいたが、口元に笑みを浮かべたままだ。


 「なぜ、お前はそこまでする?

 お前は、私の敵になることを選んだはずだ。

 それなのに、何故そこまでの事を……?」


 誤魔化した言葉は求めていない。

 それが伝わるように、これ以上にない真剣な表情と真剣な口調とトーンで訊ねた。

 暫しの沈黙。

 エリフェラスも悩んでいるようだった。


 (言えない事ということか……

 何を考えているエリフェラス……

 何を企んでいるゼオル・ラーガ……)


 やはり、敵と思うしかないのかとタリサが諦めかけた時だった。

 エリフェラスは軽く失笑すると、

 

 「わかったよ……タリサ」

 「?」


 何がわかったのか?

 それが伺い知れないタリサは、怪訝な表情をエリフェラスに向ける。


 「言っておくが、企んでいるとかではないからな……」

 「何も企んでない?」


 ありえないと思うタリサだったが、


 「何か企みが合って、今回助けに来たわけではない。

 確かにお前に頼みたいことはありはするが、それがメインではない」

 「では……」

 「あとな……」


 タリサが追加で質問しようとするのを遮るように、エリフェラスは言葉を続ける。


 「俺はお前の事を気に入っている」


 タリサは目を丸くする。

 少し顔を赤らめながら……


 「いや、誤解をするな……」


 タリサの滅多に見せない表情に、エリフェラスは慌てて言う。

 そんなエリフェラスの表情も、タリサから見れば珍しいものだった。


 「お前とは相性も良いと思っていたし、騎士団内では一番信頼できる相手だと思っている……」


 徐々に落ち着きながら言葉を続ける。


 「だが、だからと言って副団長に目をつけられるリスクを背負ってまで助ける理由にはならない……、お前には申し訳ないがな……」

 「それは覚悟していた。

 あの時に見逃してくれただけでも、充分に感謝していた……」


 そう、エリフェラスが見逃してくれていなければ、王の間で捕まっていてもおかしくないのだ。

 だからこそ、あれだけでも充分にエリフェラスの心が判った。

 今まで築いてきた関係は、完全に偽りだった訳ではない事が知る事が出来た。


 「それは、何故?」


 何か企んでる訳でもなければ、タリサの事を優先した訳でもない。

 後は何が残っているのだろうか?

 タリサは完全に判らなくなっていた。

 もう予想がつく事も無い。


 「……」


 だが、今まで見せた事の無い落ち着きの無い態度を見せるエリフェラスに、タリサは彼の言葉を疑う事を止めていた。

 一度落ち着いたと思っていたのだが、再び崩れ出すエリフェラス。

 何度も溜息をつき。

 何度も頭を掻きむしり。

 せわしなく視線を動かし続けていた。

 

 「エリス……」


 タリサは、その動きを止めてやろうと考えたが、彼の名を呼んだと同時に思わず吹き出すように笑ってしまった。


 「な、なんだよ……」


 エリフェラスは頭を押さえて、笑うタリサに恨めしそうな目を向ける。


 「いや、すまない……

 常に冷静な知衛将軍らしくないと思ってな……」


 と、謝りながらも、タリサの口元から笑みは消えていなかった。


 「そんなの……」


 エリフェラスも軽く笑いだす。


 「それこそ、偽りの姿だからな……」

 「偽り?」

 「別に策を考えれないとは言わない。

 ジジイよりはいい策を考えれる自信もある。

 だがな……」

 

 エリフェラスは、少し不機嫌そうに言う。


 「そういうのは、実は好きではない」

 「……は?」

 「こそこそと策を練って裏で動くとか好きではない」


 きっぱり言い切るエリフェラスに、タリサの思考が少し止まる。

 それが知衛将軍と呼ばれたエリフェラスの真骨頂だと思っていたからだ。


 「え? どういう……」

 「そのままの意味だ」

 「……えっと……」

 「ま、そんな事はどうでもいい」


 エリフェラスは、これ以上この話題を続けないとばかりに、右手を乱暴に振りながら話を遮った。

 そして、今度こそとばかりに口に出す。


 「俺が、ここまでするのはな……」


 エリフェラスはキッパリと言い切る。

 タリサと()()()を助ける理由を……

 それは、タリサが予想だにしていない理由。

 予想できるはずもない理由だった。

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