生還の助力者
時は戻る。
タリサ配下の三人が殺されたはずの時間まで……
振り下ろされる斬撃。
既に抵抗をする気のないシルアと意識朦朧状態のトリッセル。
抵抗しても無駄と思える程のミフネの本気の斬撃。
それを黙って見ていたビラクは、既に決まってしまった結末を待つだけだった。
そんな確定だったはずの結末は覆される。
1人の守護者により……
金属製の武器がぶつかり合う音と共に、ミフネの斬撃は弾かれた。
予想外の事態だった。
万全の態勢で放たれた自身の一撃が防がれた事に、ミフネは目つきを鋭くする。
「フレイディア……」
ミフネより先に、斬撃を防いだ人物の名を呟くビラク。
「死んだと聞いていたが……」
「そうだろうな……、だが、この通り生きている。
副団長が呼び出したアンデットなんてオチもない」
少しからかい気味の言葉に、ビラクもミフネも武器を構え、臨戦態勢を取る。
2人の動きに反応して、周囲の兵達もそれに倣った。
だがフレイディアは気にした様子も無く、先程まで自信が居た方向へと合図を送る。
それに反応して姿を現す一つの人影。
無警戒にフレイディアの側へと歩いていく人影に、近くに居た2人の兵士が攻撃を行おうとしたが、それは見えない障壁によって弾かれた。
「トリッセルの事を頼む……」
フレイディアの側まで来たのは、司祭の服装に身を包んだ女性だった。
グランデルト王国王都ライデンにある最も大きな神殿である豊穣の神デメルス神殿に仕えるセラミリア・ランク。
おそらく、この国で今のトリッセルを救う事ができる唯一の人物だろう。
それ程の治癒魔法を使用できる女性司祭だった。
「おい……」
「とりあえず、話より治療が先だ……
それに納得できないなら、好きに妨害すれば良い。
できるならな……」
ビラクはその言葉に反論しようとしたが、そこで漸く気付く。
周囲を包む結界の存在に……
(これにより、ミフネ様の斬撃を防いだという事か……)
「あ、言っておくが、先程の斬撃程度なら結界なしでも防げるぞ」
ビラクの心の中を読み取ったかのようなフレイディアの言葉に、ビラクもミフネも驚きの表情を浮かべた。
完全に突然現れたフレイディアに場を支配されていた。
「ほう、先程の斬撃程度とは言ってくれるな。
そんな事を言われる程度では……」
「?
まさか、ミフネ・バルバトスともあろう人が気づいていないのか?」
今度はフレイディアが驚きの表情を浮かべた。
それが芝居ではないと感じ取ったミフネは、
「何がだ?」
と、素直に訊ねた。
「無意識だったということか……」
「?」
「手加減された斬撃だった。
あんな斬撃だったら、トリッセルやタリサが万全だったら、簡単に防がれてたと思うぞ」
「手加減だと……」
そんなつもりはなかった。
だが、フレイディアが嘘を言ってるようには感じなかった。
目を丸くして愛刀を持つ右手を見つめるミフネ。
そうしているうちにセラミリアの治癒魔法が完了する。
「大丈夫か?」
「危なかったですわ……」
「そうなのか……?」
セラミリアの返答に、ずっと余裕の表情だったフレイディアは眉を顰めた。
「でも、もう大丈夫ですわよ」
笑顔で返すセラミリアの言葉に安堵の表情へと変えるフレイディア。
「良かった……」
フレイディア以上に安堵したのはシルアだった。
自分自身の死を恐れてはいなかった。
だが、仲間を失う事は怖かった。
それが回避されて、シルアは心底安堵していた。
「さて、ミフネさん……」
一安心したフレイディアは、そうミフネに訊ねた。
ミフネはフレイディアとシルアの腕の中で眠るトリッセルに鋭い目つきを向けながら考えていた。
そして、考えがまとまったのか、溜息をつきながら言う。
まるで全てに興味を失ったかのように、言い捨てるように……
「残念ながら、今回の作戦の決定権を持っているのは我ではない……」
ミフネは視線のビラクに向ける。
ビラクは急に振られた話題に、呆れ顔を見せる。
(好き勝手に暴れておいて、よく言いますね……)
そんなビラクの心内も判っているのだろう。
ミフネは自分の仕事は終わったとアピールするかのように、フレイディア達に背を向け、離れていく。
「あ、最後に一つ訊いていいか?」
「なんでしょう?」
「俺が意地でも2人を殺そうとしようと言ったらどうしてた?」
「守るだけです」
「できると?」
「ええ、今のあなた相手なら……」
ミフネの鋭い目が、フレイディアに再び向けられる。
その威圧的な視線をフレイディアは、口元に笑みを浮かべて軽く流す。
「……自惚れだな……」
ミフネはそう呟くと、居合切り一閃で間合い内の木々を全て斬り倒した。
その数本はフレイディア達に向かって倒れていったが、フレイディアが剣を振るうと木々は彼女達を避けるように地面に倒れた。
「……ご自身の事で?」
「……ああ」
そうミフネは自分自身の自惚れを実感していた。
トリッセルの実力を認めながらも自身には遠く及ばないと思っていたのが一つ。
敵意のある者が接近してくれば、どんな状況であろうとも感知できる自信があったことが一つ。
自分が攻めに転じれば、どんな防壁も突破できると思っていたのが一つ。
それらが全て自惚れだった。
「まだまだ修行が足りぬわ」
ミフネはそう言うと笑い声をあげながらその場を後にした。
そんな彼を見送ったフレイディアとビラクの視線が不意に合った。
フレイディアは何も言わずに、ビラクの反応を待つ。
ビラクは再び呆れ顔で溜息をつく。
「私に決定権があると言いながら、勝手に去りますか? 普通……」
そう言うビラクから既に敵意は感じ取れなかった。
フレイディアもビラクと同じような呆れ顔を見せる。
「ま、あの方が居ない状態で守護神を倒せるとは思っていませんので……」
ビラクはシルアに視線を向ける。
「2人の事は貴女に譲りますよ……」
そう言いながら、ビラクは目を伏せた。
「ビ、ビラク……」
シルアは驚きの目でビラクを見つめる。
そんな2人の表情を見て、フレイディアは小さく笑い声をあげる。
「なにか?」
「いや、妬みだけではないようだな……」
「……?」
ビラクは首を傾げた。
フレイディアが言いたいことが判らない。
「妬み、憎しみだけだったら、殺す事に躊躇いを見せないだろうからな。
好意ももっているのだろう?」
「好意?
それは当然ですよ。
シルアには一度も勝てなかった。
その才能に憧れて尊敬してますよ」
ビラクの言葉にシルアは更に驚く。
悪意だけを持たれていると思っていたからだ。
「言うべき立場ではないのでしょうが……」
ビラクは失笑ぎみに笑みを受かべて言う。
「少し安堵してますよ」
「ビラク……」
「ライバルに死なれると、私も張り合いが無くなりますからね」
ビラクはそう言うと、シルア達に背を向けた。
「本当に良いのか?」
「良いも何も、ミフネさんが立ち去ってしまっては、私だけではどうにもできないですよ」
振り向かずにそう返すと、ゆっくりと歩き出す。
シルアもフレイディアも黙って見送る。
任務に失敗した以上、何らかの罰を受ける事になるだろう。
敵対している立場ではあるが、思わずビラクの事を心配してしまうシルアだった。
(こんなんだから、甘いといわれるんだろうな……)
シルアは感傷的になりながらも、心の中で安堵し、そして感謝する。
助けてくれたフレイディアやセラミリアに……
見逃してくれたビラク達に……
自身の腕の中で眠っているトリッセルをそっと抱きしてめながら……
力を失ったヨネン・ゲンシュの体から、ゆっくりと剣を抜くマリーナ。
支えを失ったヨネンの体が徐に倒れていく。
マリーナは、剣を手放しそれを咄嗟に支えると、そっと地面に横たわらさせた。
「!?」
そっと、衝撃を与えないようにしたはずだったが、地面に背が当たった反動でなのか、止まったと思われていたヨネンの呼吸が復活していた。
とても弱々しく苦しそうな呼吸。
一瞬躊躇うマリーナだったが、直ぐに手放した剣を拾い直し、ヨネンの頭の上に振り上げる。
どうせもう助からない。
いや、助ける訳にはいかないのだ。
既に精神的に限界だったマリーナだったが、何とか心を強く持ち、苦しみから解放させる為に、止めを刺す事を決断する。
「……ヨネン……」
改めて実感する自分の想い……
本来、偽りだったはずの絆が、どれだけ自分にとって大事なものだったかを……
意を決して、ヨネンの頸に剣を振り下ろそうとした瞬間だった。
闇の魔力を感じ取り、咄嗟に後ろに跳ぶ。
マリーナが立っていた地面に、無数の針が突き刺さる。
魔力のよって作られた黒い針は、直ぐに溶けるように消えていく。
「油断しすぎではないか?」
月光が薄雲に遮られて、闇と化している森の中から声が聞こえた。
聞き覚えの無い声に、マリーナは警戒を強めた。
「もっと周囲に気を配った方が良い……
でないと、簡単に暗殺できてしまう」
そう言いながら、黒いフードと黒いマントに身を包んだ人影が姿を見せる
暗いその場では、フードを深く被ったその顔は確認できない。
「だ、誰……?」
マリーナは自分の記憶内の人物を思い出しながら検索する。
そして、1人思い当たった。
名前までは憶えていないが、タリサと交戦した経験のあるダークエルフの暗殺者。
タリサから聞いていた情報から、黒い針の使い手としてその人物に行きつく。
そう決めつけてじっくりと観察すると、フードの奥に浅黒い肌と長く尖った耳が見えてくる。
(どういうこと? なんで暗殺者が……)
考えるマリーナは、一つの結論に行きつく。
「あのダークエルフの魔術師の手伝いですか?」
首を傾げながら訊ねるようにそう口に出した。
「魔術師? あ、レンのことか?」
マリーナは名前まで知らなかった。
だが、おそらくレンというのがアミス達が逃げる時に助力した魔術師の名前なのだろうと予想はついた。
「残念ながら、今回の件についてはあいつは関係ない……」
正解だと思っていた予想が簡単に否定された。
一瞬、誤魔化しているのかと思いもしたが、そんな誤魔化しに意味があるようには思えない。
「では、何故……?」
「別に依頼者がいるという事だ……」
(別の依頼者?)
他に誰が依頼できると言うのか?
あと、繋がりがあるとすればタリサだったが、その2人を結びつけるのは早計に思えた。
依頼を出す機会なんてあるとは思えなかったからだ。
マリーナは残っている兵士に合図をし、警戒させる。
決して無理には攻撃はさせない。
タリサと互角にやりあったような実力者だ。
攻撃をしかけるのは、無駄に兵士を失うだけと簡単に判断がつく。
そして、兵士の代わりに、失っても痛くない下級アンデット達を動かした。
残っている下級アンデットでどうにかなる相手とは思ってもいなかったが、時間稼ぎぐらいにはなるかもしれないと判断して、その間にヨネンに止めを刺せばと思いながら……
だが、その考えは簡単に崩される。
一斉に襲い掛かるアンデット達が一斉に崩れ落ちる。
両断され、燃え、崩れる。
ただの動かぬ肉塊になったそれらの上に、黒い羽が舞い落ちた。
目を見開いたマリーナの目に前に現れたのは、背に黒い翼を持った人影だった。
ダークエルフと同じく、顔をフードで覆い隠しているその人物は、ゆっくりと地面に舞い降りる。
微かに見える口元が笑みを浮かべたのが確認できた。
黒い翼の右手に握られた剣が炎を纏う。
すぐにそれがアンデット達を倒したのだと悟ったマリーナは、
「下がれ!!」
そう兵士達に命令をしながら、自らも後ろに跳び退いた。
退いた後にすぐに立っていた地面が炎によって抉られた。
その場に残っていたらどうなっていたかと思うと、額から冷たい汗が流れる。
恐怖の感情が判断を遅らせ気づく事を遅らせる。
もう1人姿を見せた人影が、ヨネンの側に既に立っている事に……
「どうですか?」
「まだ息はある……」
それは若い声だった。
黒い翼の者は少年で、最後に姿を見せたのが少女だろう。
2人共、成人になったばかりといったところだろうか?
マリーナが受けた印象はそんなものだった。
そんな自分より若いと思われる存在に恐怖を感じていた。
特に黒い翼の少年に……
「どうにかなるか?」
「預かっているこれ次第ね」
いつの間にか、少女の近くに移動していたダークエルフの言葉に少女はそう返すと、懐から小さめの棒状の物を出した。
(魔力……いや、法力が込められている?)
少し冷静さを取り戻しつつあるマリーナは、少女が取りだしたアイテムを分析する。
(回復アイテムか……しかし……)
既に致命傷と言ってもいい傷を負ったヨネンを回復させる物とは思えなかった。
それならば、もっと強い法力や魔力を帯びてると思えたからだ。
そのアイテムが作動し始めたのか、僅かに感じ取れる法力が強くなった。
しかし、それは大きな差では無く、強力なアイテムには思えないという考えに変わりはない。
止めるべきか悩むマリーナだったが、結局止めずに結果だけを確認することにした。
そう決めた理由はいくつもあったのだが、その一つが戦力的に止める事が無理という事。
新たに現れた敵を倒すことは任務には無い事であり、任務外の事で兵を無駄に失う必要はなかった。
(彼女を倒した事が充分な成果……)
喜ばしい成果のはずだった。
それなのに目の前で使用された、おそらく治癒系の魔法道具であろうそれが大した効果が無いと予想できたことに、残念という気持ちが生まれていた。
(私はそんなに……)
心の中に生まれているその感情に、マリーナは戸惑う。
持ってはいけない感情だった。
主である副団長モルデリドの為には、そんな甘い感情は持ってはいけなかった。
(これも将軍の影響か……)
周囲には冷静で冷酷とも印象を与える態度を見せながらも、実は仲間思いで、下々の者に対して優しく思いやりを持って接するタリサ・ハールマンという人物。
彼女の側にいる事はとても心地よかった。
タリサを支えるメンバー達も深い絆で結ばれている仲間達だった。
最初からあの中にいれば、絶対的な忠誠を誓いたくなる環境だった。
だが、彼女達と出会った時には、既にモルデリドという存在がマリーナの心にはあった。
命の恩人であり、師であり、親の様な存在だった。
マリーナにとっては一番の存在なのだ。
(このままでは、駄目だ……)
剣を持ったマリーナの右手に力が込められた。
「……?」
それに気づき、ダークエルフは剣を構えて警戒する。
「どいてください……」
「そんな言葉を聞くとでも?」
「私は彼女を……、ヨネン・ゲンシュに止めを刺さなければいけません」
マリーナは目つきを鋭くする。
それはヨネンとの戦闘中でも見せなかった程、鋭さだった。
「断る……」
ダークエルフは静かに返した。
「助けるために来たというのに、その対象を引き渡すわけがあるまい?」
「そうですよね……」
判っていた事だった。
だが、マリーナは自分の心の中に生まれている甘さを捨てる必要があった。
その為にも、ヨネンの命を自らの手で取らなければならない。
そんな強迫観念に支配されていた。
「大地に眠りし者達よ……」
マリーナは呟きだす。
それが呪文の詠唱だという事は相対する3人にはすぐに判った。
しかし、聞きなれない系統の呪文であり、どんな魔法か予想がつかなかった。
だが、そんな予想はする必要がなくなる。
何故なら、マリーナの呪文の詠唱が途中で止まったからだ。
詠唱中断の理由が判らずに驚く三人だったが、その理由に最初に気づいたのは、魔法道具によってヨネンを治療していた少女だった。
一瞬、マリーナが驚きの表情で自分を見つめている様に誤解していた。
だが、その視線が向けられているのが、自分ではなく自分の腕で眠っていたヨネンである事に気付き、そして彼女が詠唱を止めた理由にも気付く。
「ヨネン……」
マリーナの口から無意識に出た言葉。
「なんだ……?」
ヨネンがそう返したのも無意識だった。
朦朧とした状況であり、現状を理解しきれていないのだろう。
「ふぅ……、良かった……」
安堵の息をついたのは、治療をしていた少女だった。
心の底から感じられるその感情は、マリーナの心にも伝わる。
自分にも同じ感情が沸き起こっている事に気付き、マリーナの体から力が抜けた。
魔法発動の為に溜めていた魔力も霧散していく。
マリーナは目を伏せた。
そして、ゆっくりと考える。
その思考に答えが出るのに時間はかからない。
マリーナは、魔法の発動体とする為に抜いていた剣を鞘に納めると深く溜息を一つ。
「ヨネン……」
「なんだ?」
「今回は私の負けです……」
「?」
少しずつ思考が戻ってきたヨネンは、首を傾げる。
自分が負けたはずだった。
致命傷を負ったはずの自分が、誰かの腕に支えられている。
そして、自分に致命傷を与えたはずのマリーナが敗北宣言をしている。
まだ朦朧とした頭では理解できなかった
「ま、貴女に負けた訳ではありませんけどね……」
だが、もうヨネンに勝つこともできないだろう。
いや、もう戦うことすらできない……
「さよならです……」
マリーナはヨネン達に背を向けて言う。
その別れの言葉をどんな気持ちで言ったのか、ヨネンには判らない。
いや、そう言ったマリーナにしか判らないのだろう。
「マリーナ……」
「さよなら……」
もう一度言うと、マリーナは兵士達を引き連れて撤退した。
統率の取れたその動きには無駄がなく、あっという間の事だった。
一瞬の静寂。
そして、風が木々を揺らす音で、止まっていた時が動き出す。
「何とかなったようですね……」
周りに気配がなくなった事を確認してから、黒翼の少年がフードを頭部から外しながらそう口にした。
「そうね……」
少女もフードを外す。
「お前達は……」
フードの下から現れたその二つの顔は、ヨネンには面識の無い顔だった。
だが、特徴を見て2人の名前の予想がついた。
タリサから聞いた名前。
(ミスティアルとラディ……だったか……)
「二人ともまだ任務中だぞ……」
そう言うダークエルフの元暗殺者のキルはフードを取らなかった。
ただ、くるりと踵を返すと
「報告に戻るぞ……」
ぶっきらぼうに言い放ち、2人の返事を待たずに歩き出した。
ラディとミスティアルは互いに顔を見合わすと、笑みを向け合いキルの後に続いた。
ラディがヨネンを背負い、ミスティアルは傷の痛みに顔を歪めるヨネンを心配する。
(なぜ、彼等が……?)
浮かぶ疑問、だがそれを考える間もなくヨネンは眠りにつく。
ミスティアルの眠りの魔法だった。
元々は簡単に効果の出る魔法ではなかったが、衰弱して朦朧しているヨネンには充分な効果を発揮していた。
「今は、まず眠ること……体力を回復させるためにね」
そう言うミスティアルの瞳は、とても優しげな色をしていた。




