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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
6・激動のグランデルト
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らしくない思い

 静かな夜。

 これから何かが起こるとは思えない程の……

 いや、逆に嵐の前の静けさと、穿った見方をする者もいるだろうか?

 夜道を足早に進む彼等も、後者の見方をしているのかもしれない。

 薄雲が月を包み足元はかなり暗いが、灯りを灯さずに進んでいく。

 本来なら道案内役として、先頭にいて欲しいラディとミスティアルは、偵察に出たまま戻ってきていない。

 彼等の戻りを待つことも考えはしたが、偵察に出発する時に、彼等がすぐには戻らない可能性があると言っていた。

 もし、戻らなければそのまま逃げて良いとも……

 アミスの性格上、彼等を見捨てて逃げる事は考えれない。

 故にタリサの救出と、ラディ達との合流という2つの目的で、行動を開始することにしていた。

 退避場所だった小屋に伝言だけ残して……


 一行は、リンを先頭に、レン、アミス、そして、最後尾にラスという隊列で進む。

 種族特性により夜目が利くリン、常時発動型の魔法道具により、ある程度見ることができるレン。

 この2人のおかげで、暗い中でも問題なく進むことができる。

 ラスも多少は夜目が利くが、それ以上に見える者がいるので前方はその2人に任せることにしていた。

 木々が繁った空間を抜けて開けた場所に出た時だった。

 雲が切れ、月明かりが強くその場所を照らし出した。


 「少し、休もうか?」


 先頭のリンがそう言って足を止めた。


 「え? でも……」

 

 少し焦るアミスを、ラスが後ろから制する。


 「焦るな。常に冷静に判断するクセをつけた方が良い」

 「……はい」


 アミスは素直に従った。

 暗闇の中だからこそ、密かに動く事ができている。

 光に満ち、開けた空間を進むのは、リスクが高いということが、少し落ち着いて思考したアミスにもわかったからだ。


 木々の下に戻り、4人は少しの休息につく。

 アミスは焦る気持ちを抑えて、静かに目を閉じて瞑想に入る。

 リンは、そんなアミスを気遣いながらも、周囲への警戒は弱めない。

 ラスも同様に警戒していたが、ふいに真後ろに気配を感じて、振り返る。

 いつの間にか背後に回っていたのはレンだった。


 「どうした?」

 「いや、面白い魔力を持っていると思ってな……」

 

 エンチャントドールの魔力を感じ取っているのだろう。

 そんな話をする機会も無かったため、レンにはラスの体の事は説明していない。

 ラスは一瞬どう返すか悩んだが、すぐに別の話が頭に浮かんだので、話を変える事にした。


 「お前の魔力も相当のものだと思うがな……」

 「私の場合は、長い年月をかけて、魔法の研究と魔力を鍛えることを続けた結果だがな……」

 「そうか、それより……」

 「?」


 風の精霊に乗せて、レンにしか聞こえないように言うラスに、その事に気づいたレンが真剣な表情を見せる。

 その表情に僅かに警戒心が見て取れる。


 「そんな警戒する必要は無い……。随分と乱暴な説得だったなと思ってな……」


 レンには、その言葉の意味はすぐに解った。

 故に失笑とも取れるような笑みを見せる。


 「あいつらの約束か何かは知らないが、あのままでは、互いに意固地になって決別し、互いに後悔するのは目に見えていたからな……」

 「だから、挑発して、精神を掻き乱した。か?」

 「ま、成功する確率は低い手だったがな……。元々、説得や交渉なんて得意ではないからな。あんな手しか浮かばなかった」


 思いの外、素直に答えが返ってきて、ラスは少し驚いたが、


 「ま、それは俺も似たようなものだがな……」

 「ふっ……、だからこそ、私の言葉の真意に気付いていたと言う事なんだろうな……」


 ラスは、『なるほど』と思った。

 それ故に、あの時ラスは口を挟むのも控え、そして、今、レンはこんなに素直に質問に答えてくれるのだろう。


 「それより、本当に手伝ってもらっていいのか?

 これから救出する相手は、基本的に敵なんだぞ?

 アミスの精神状態を考えて、俺は渋々従うことにしたが、お前まで付き合う道理は無いと思うが……」


 ラスのその言葉に、レンは返す言葉に悩んでるようで、答えはすぐには返って来なかった。


 (余計な事を言ったかな?)


 と、思うラスだったが、レンからの答える迄の間は、そんなに長くはなかった。

 

 「ま、頼まれたからな……」


 予想外なほどにシンプルな答えに、ラスは少し呆気に取られてしまう。


 「中々、義理堅いんだな……」

 「意外だろ?」

 「ん……」


 図星を突かれたラスは、言葉を詰まらせた。

 次なる言葉に困って、黙り込んでいるうちに、再び月は雲に覆われて、隠密行動向きの暗闇が生まれる。

 空を見上げると、先程までどこから月が顔を出していたかわからないぐらいに、空は雲で満たされていた。


 「さて、行こうか?」


 リンの言葉に、全員頷いて行動準備に入る。

 そして、動き出す直前に、レンがボソッと呟く。


 「私が1番驚いているよ……。今回の自分の行動にな……」

 「……」


 そう言ったレンの複雑な表情に、ラスは思う。

 闇の種族と称されるダークエルフ。

 今までその種族らしい生き方をしてきたのだろう。

 自らの利益にならない事はやらない。

 誰かの為という考えも持たなかったのだろう。

 ラスのその予想は、大きく外れてもいなくても、完全に当たっているわけでもなかった。


 確かに、レンが誰かのために動くことなど滅多にない。

 基本的に自らの利益を優先する。

 ダークエルフという種族に対して、大きな拘りはもっていないが、この種族故に受けてきた他者からの仕打ちや視線を完全に無視してきたわけではない。

 好んで他者の命を奪う事はしないが、敵対する者に容赦する必要も感じない。

 正式な依頼があれば、護衛などの依頼も受けることもある。

 だが、それ以外で誰かを守ろうと思ったのは、初めてのことだ。

 アミスと出会った時は、展開に流される形で協力し合った。

 しかし、今回は違う。

 自らアミスを助けるために行動している。

 あの時の恩があるとはいえ、それは逃す手伝いで充分に返せてるはずだった。


 それなのに……


 レンは戸惑いながらも、敢えてその気持ちに逆らう事はやめることにした。

 今は、アミスの願いを叶えるだけ。

 1人の女性を助ける為に、力を尽くすだけだった。

今回も短めです

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― 新着の感想 ―
[良い点] (ΦωΦ)ちょっとしたインターミッションとも取れる回でした。 徐々に気持ちが交錯し合う「見えない部分」が存分に描けていて、 読んでいてホクホクしました。 …いいねっ!!
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