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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
8・剣の娘
129/144

姿を現す魔獣

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 自分を魔法生物カさせた者を探している

 魔法生物化されて者特有の高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 仲間からサンと呼ばれている盗賊職

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる。

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強いが、そこにはアミスにもまだ解析できない理由が……


☆他


◎ロルティ・ユトピコ 男 半魔族

 聖獣を賭けてアミスと争い、その時の敗北によりアミスを目の敵にしている半魔族の少年

 今回のみ一時的に手を組むことになった


◎女性剣士

 仲間と逸れたという女性剣士

 何故か名を名乗らない

 半魔族のロルティと、仲間と逸れた名乗らぬ女性剣士。接点のないはずの2人の間に突然生まれた殺気に、ラス達は戸惑っていた。これから共に強敵と当たろうという時に起こった予想外の事態に、普段冷静なラスも少し混乱気味である。

 他の者達も事態が飲み込めていない中、1人落ち着いた様子で殺気立つ2人の間に入ったのはアミスだった。

 殺気を放っている女性剣士を庇うような姿に、ロルティは呆れ顔を作りながら、静かに笑みを浮かべる。


 「アミス・アルリア……。今、ボクが用事あるのは彼女にだ。邪魔しないで貰えるかな?

 少なくとも、今はボクから攻撃を加えるつもりはないからね。ま、そっちがどう考えているかわからないけどね」


 女性剣士の方がロルティに向かって殺気を放っているのは、アミスにも感じ取れている。それでも、アミスはまずはロルティの説得をしようとしていた。しかし、ロルティには自分から攻撃を仕掛ける気はなく、相手の出方と返答を待っているだけであり、相手からの返しは一切なく、ただ、もう隠す気がなくなった殺気だけが高まっていく。

 ロルティは深いため息を吐くと、自分の予測を話し始めた。


 「で? 仲間は居ないんだよね? 最初から……」

 「どういうことなんだ?」


 ラスはそう言いながら、アミスのすぐ横に移動した。他のタリサ達は、少し離れた場所でいつでも動けるような体勢で待っていた。それはラスの指示であり、その中でも、サンだけは意識を皇魔獣が居るであろう奥の部屋への警戒に重きを置いていた。


 「それは彼女は人間ではないからだよ。ね? アミス・アルリアも気づいているだろ?」

 

 それを聞いてラスはアミスへ目を向ける。

 アミスは躊躇いながらも静かに首を縦に振り、視線を女性剣士へと向けた。


 「聖獣……ですよね?」


 ロルティの言葉には殺気しか返してこなかった彼女たちも、アミスのその言葉に初めて別の反応を返す。

 殺気を収めて鞘から右手離し、攻撃の意思をとりあえず無くした事を示す。


 「君は早くから気づいていたんじゃないのかい?」

 「そうですね……」

 「誰にも言わなかったのは確信はできてなかったからかい?」

 「いえ、名前を名乗らなかった時点で確信してました」


 ロルティは聖獣の可能性がある程度でしかなかった為、アミスのその発言には素直に驚きを見せた。だが……


 「なるほど……そうか、名前か……」


 アミスの言葉を意味に気づき、すぐに理解した。ラスや他のメンバーはわからなかったが、今は口を挟むタイミングではないと思い誰も口を開かなかった。

 聖獣とは、元々名前を持たない存在だった。それは聖獣に限らず魔獣や精霊、竜などもそうだ。その中でも聖獣にとって名前は特別なモノであり、自ら名前を付けることは出来ない。いや、正しくは名付けはできるが、その行為には大きなデメリットがあるのだ。

 聖契石で契約する時に、その為の呪文と共に必要となるのが命名であり、それにより契約者との結び付きを強くする。先に名前を持っていると契約の力が弱まり、発揮できる力も弱くなるのだ。故に、聖獣は他者と契約して名付けられるまで名前を持たず、仮初の名前すら名乗れないのだ。


 「聖界と繋がっている空間のようでしたから、もしかしたら聖獣と遭遇するかもしれないと思ってました……」

 「なるほど……」


 ロルティもその可能性はあるとは思っていたが、聖獣が契約前に他種族を助けるなんて思っていなかった為に、彼女が聖獣であることを心の奥で否定する考えが捨てきれていなかったのだろう。


 (こいつは契約前から聖獣に好かれるということか?)

 

 契約前の聖獣から助けられているアミスに対して嫉妬するロルティ。その考えが思い違いだとも思いもせずに……

 だが、ロルティにはもう一つ疑問点があった。

 それは未だに向けられている強い殺気の原因。時折感じられていたが、正体がバラされた今も絶え間なく向けられている理由がわからなかった。

 聖獣と契約できなくなっている事が影響しているのかとも思いましたが、それならば、出会ったばかりの時には感じられてなかったのはおかしい事。


 「なぜ……」


 考えても解らないことを聞くしかない。

 そう考えて問いの言葉を口に出そうとした瞬間だった。奥の部屋から感じ取れていた強大な魔力と殺気が動き出す。

 まるで、その魔力と殺気を浴びた存在が、この場にそれが現れることを教えてくれているかのように、アミス達が居る部屋へと流れてきている。


 「来るぞ!!」


 ラスのその一言で、仲間達は戦闘陣形を取る。

 タリサとリンが前衛にその後ろにサンとラスが付き後衛にアミスとジーブル。

 これが後ろからの来る敵が居ない時の基本陣形だった。敵の数が多ければサンも前に出るが、今回予想する敵の事を考えればこの形が良いと判断する。

 遅れて聖獣だという女性剣士は中衛でラスの前に入り、ロルティは更に遅れて、少し考えてから上空へと浮くことにした。

 全員の立ち位置が決まっと所で、アミスとジーブルが防御結界を張る。感じ取れる強大な魔力を踏まえ、アミスは≪ 白翼天女(ラシェール) ≫と≪ 魔女(ニーネル) ≫の2体の聖獣を呼び出し、自らの魔法とジーブルの魔法を合わせて四重の結界にした。ここまで重ねるとこちらの攻撃にも影響が出てしまうが、敵の力がわからない以上、まずは防御優先にしようと思ったからだ。

 そんなアミスの判断に文句を言う者は居らずに、一行はその体制のまま奥の部屋から現れるモノを待った。緊張感で張り詰めた空気の中、それはゆっくりと姿を現す。

 それはアミス達の予想を超える大きさの魔獣だった。遺跡という閉鎖した空間にいるには、あまりに大き過ぎる存在。広く作られたこの部屋だからこそ動くことができるが、アミス達がこの場に来る為に通った通路を通ることはできないだろう。

 その外見を見る限りでは、アミス達の知識の中に。その魔獣の情報は無かった。知っている魔物に敢えて喩えるなら、翼を持たないタイプのドラゴンに近いだろう。そんな外見がアミス達に1つの危険性を思わせる。ブレスを吐いてくるのではないだろうかと……

 今いる部屋が広い空間になっているとはいえ、この大きさの口から吐き出されるブレスを回避するのには、余裕があるほどではない。

 万が一に備えてアミスがブレス対策の結界を重ねようと≪ 風の乙女(セラリス) ≫を呼び出した。


 「ほう、面白い者がいるな……」


 不意に聞こえてきた声に、アミスの動きが止まる。

 誰が発した言葉か最初はわからなかった。ただ、すぐ側から聞こえたわけではないので、仲間の誰かが放ったわけではないことはわかる。上空聞こえたわけではないのでロルティでもない。

 目の前の魔獣なのかと思いましたが、その口から発せられたにしては、あまりに綺麗で透き通った声だった。だが……


 「せっかく、魔法により会話できるようにしてやっているというのにな」

 「まさか……目の前の魔獣が……」


 ラスは信じられないといった言葉をあげる。


 「この身体で魔法を使うとは思わなかったか? それとも、言葉自体を話せるとは思わなかったか?」


 その両方だった。

 予想外のその事実は、アミス達に目の前の魔獣が予想していた以上の危険性な存在なのだということを解らせる。その大きさだけでもどう対策するかと悩むところだというのに、会話して魔法を使用できる知力があるのだ。

 今まで感じた中で間違いなく一番の危険度だった。


 「強い魔力を持った者いる。いいな……、久しぶりに我が餌に相応しい者が来てくれた。お前達を喰えば、この結界から出る為の魔力は溜まるやもしれぬ……」


 見た目では表情が判らないその魔獣が楽しそうな笑みを浮かべているように思えた。そして、その発言により、ロルティが言っていた神話の元となった存在である可能性が高まる。

 ここには来てはいけなかったのでは?

 もし、神話の話が真実であり、自分達の魔力を吸収したこの魔獣がこの空間の結界から出ることになったらどうなるだろう?

 

 「倒しましょう……」


 アミスが呟くような小さな声で言った。


 「アミス……」

 「逃げてもこの空間から出る手段がありません」

 「そうだな……、だが最悪撤退することも考えて戦うぞ。あの大きさなら、少なくとも通路まで逃げれば追っては来れないからな」

 「そうですね……」


 アミスとラスのやり取りに反対意見は出ずに方針は決まった。

 アミスはブレス対策の為に風の防御膜を作り出す。先に貼られていた防御結界をあり、どんな攻撃にも対応できる状態となっている。


 「ほう……やる気か……」


 魔獣はそう言いながら再び笑みを浮かべている様に感じた。それと共に高まる魔力……


 「来るぞ!!」


 魔獣からの攻撃の意思を感じとり、各々が動き出す。リンは半獣化して前方に伸ばすようにヘヴィランスを構え、タリサは氷の聖獣の魔力を纏わせることにより、盾を大きく堅く強化した。アミスに教わった聖獣の活用法であり、まずは防御重視と考えてのこと。

 逆にラスは攻撃の為の魔法の詠唱を始める。それはこの1年間で覚えた新たな攻撃魔法の詠唱だった。

 女性剣士は先の戦いで見せた居合術の構えでアミスの前に立つ。

 サンを含む後衛3人中では、アミスが2人を守るように前に出ていた。万全の対応をするために呼び出している3体の聖獣がアミスを囲むような位置どりをしていた。

 宙に浮かんでいるロルティは、ラスより早くから、一撃必殺の攻撃魔法の為の集中に入っている。


 「ほぅ……」


 そんな一行を見て、魔獣は感嘆の声を上げる。それが何を表しているのかはアミス達にはわからない。ただ、人と同じ程度の知恵を持つ魔獣に対して、嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 未知の力を持つモノと戦いに、防御重視で攻めるきっかけを掴めないアミス達。

 そんな者達を相手にしている魔獣は、仕方なしと自分から動くことを決めた。


 「まず、お前達の期待を応えてやろう」


 そう呟くと、魔獣は口を大きく開げる。


 「ブレス!?」


 開いた口の中に生まれる魔力の塊。

 アミスは風の結界を強めてそれに備え、各々も身構える。

 そして、放たれるブレス。

 まるで戦闘開始の合図のように……

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