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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
8・剣の娘
121/144

運命の歯車

登場人物(アミス一行)紹介


◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する見た目美少女の少年魔導士


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 アミスに対して仲間意識より忠誠心の方な強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 精霊魔法を使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命により、アミスを守る為に仲間となった


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる盗賊

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強い

 仕入れた情報を整理してみて判った事。

 その遺跡は思ったより危険度が高いものだということだった。いや、表面に見えるものだけで判断すれば、遺跡から無事に戻ってきている冒険者は多く、危険も無ければ、得る物の殆どないと思える。だが、僅かに確認できた戻って来れていない冒険者達に目を向ければ、遺跡にはまだ誰も解明できていない秘密がある可能性がある。

 それがアミス一行が行き着いた結論だった。

 そう判断した上で、一行は悩むことになる。

 帰って来れていない冒険者が上級ランクに格付けされているベテラン冒険者ばかりだという。

 つまり、中堅程度では見つけることが出来ない隠されたモノがあり、それは高ランクな実力者達でも戻ることが叶わないものということ。


 「止めといた方がいいかもしれないな……」


 ラスはそう呟いた。それに対して、アミス、リン、タリサはその意味を感じとり、各々考え込む。


 「随分と消極的だな」


反論気味にそう口にしたのは、サンだった。


 「もしかして、例のこと?」


 4人の躊躇いの表情を見てとり、ジーブルがそう訊ねる。そのジーブルの言葉により、サンも4人の躊躇いの理由がようやく予想付いた。そして、彼の目は1人の女性へと向く。


 「暗黒騎士団の可能性があるのか?」

 「いや……」


 その可能性を真っ先に否定したのは、元暗黒騎士だったタリサだった。

 それに対して、ラスとリンは意外そうな表情を見せる。

 そして、タリサは否定した理由は述べた。

 かつてタリサが仕えていたグランデルト王国の動向は、常に把握するように情報を集めている。その動向を見る限り、遠く離れたこの国、セリス公国に斥候以上の兵を割く余裕はないはずだ。更に別視点からとして、元将軍として多くの兵を使っていた立場から見て、そこまでする情報がこの国にあるとはおもえない。少なくとも一年前はこの国はその程度相手だった。


 「聖獣の情報を仕入れて、動いている可能性はないのか?」


 ラスが別の可能性を問う。

 タリサは考えながら答える。


 「クーデター以来、聖獣の事は後回しにしているようだがな……」

 「それは、クーデター後だったから、安定するまで国政を優先にしてたからじゃないですか? タリサもそんな事言ってましたよね。でもそろそろ安定してきたのでは?」


 アミスのその考えは、タリサの頭の中にもあった。

 しばらくの間、他国への侵攻を行わずに、国内の内政の安定と、内乱などの鎮圧に集中していたが、最近になって、隣国との小競り合いが始まったという情報も耳にしている。


 「新たな人材も育ってきてる可能性はある。だが……」


 タリサの予想では、まだ遠方の聖獣に手を出すとは思えなかった。よほど、信頼と実力を兼ね備えた冒険者系の家臣が手に入ってない限りは……

 いや、居たとしても隣国との戦が始まりそうな現状況下では、そんなことに人を割くことはしないだろうと、タリサは確信に近い考えを持つ。


 「あの爺さんでも、そこまで馬鹿では……」

 「爺さん? 副団長だっけ?」

 「そう、あの自分勝手副団長も今は好き勝手に動く余裕はないはずだ。ライバルである知衛将軍の立場が強くなっているらしいからな」


 ラスとリンはその可能性を考えていた。トラウマになりかけるほど、痛い目を見てきたからこそ、2人の暗黒騎士団の可能性に対しては敏感だった。


 「タリサがそう言うなら、可能性が低そうですね」


 あっさりと考えを変えたのはアミスだった。

 ラスとリンは、そんなアミスに視線を向ける。

 2人からすれば、アミスは自分達以上にトラウマになっているはずだと思っているからだ。

 だが、そんなトラウマを抑えれるほど、それだけタリサのことを信頼しているのだろう。


 (かつて、自分達を騙していた者を、よくそこまで信頼するな……)


 そう考えるラスとて、一年前程疑っているわけではない。この一年間で充分に信頼できる存在だとは認識している。それでも、一年前の事を完全に忘れて、100%の信頼を寄せれるほど、自分が甘い性格をしてるとはラスは思っていないのだ。いや、アミスやリンが簡単に人を信じ過ぎる傾向がある以上、自分が厳しく、疑い深くいなければならないと思っているのだ。


 「では、どうしますか? 彼の国が関わってないからと言って安全というわけでないと思いますけど……」


 ジーブルの言葉が迷いの一番の要素である。元々それが悩みの元なのだ。暗黒騎士が関わってなくても危険度が高い可能性がある。つい昨日までの方針なら確実に止めていた危険性を感じられる。方針を変えたばかりで早々に悩む状況になっているのだが……


 「どうしますか?」


 と、ジーブルが目を向けたのは悩む表情も可愛らしい少年。流れた一年の時は、アミスの容姿をより美しくしていた。落ち着いた表情が馴染んできたせいか、僅かにあった少年ぽさが消えてきて、美少女から美女へと近づいてきた印象だ。

 歳の近い女性のジーブルですら見惚れてしまいそうになるほどだった。

 だが、不意にその女性ぽかった表情が本来の性別を強める表情へと変わる。

 それは男らしい決断の表情。

 ラス達には、その表情が表すもの、アミスがどういう決断をしたのかは簡単に予想できた。普段の弱気さを無理やり消すように男らしくしようとする表情。それが何を表しているかは明らかなのだ。

 ま、その表情を見せなくても、その予想は充分に考えられるもの……。必要以上に強くあろうとする最近のアミスのことを鑑みれば簡単に予想できることだった。





 アミス達が入ると決めた遺跡に、彼らより先に足を踏み入れる1つの影。危険度不明の遺跡にたった1人で躊躇いもなく入って行く。

 成人したばかりの若い少年にしか見えないその姿は、外見だけでは冒険者として高い実力を持つとは思えないもの。彼を知らぬ者から見れば、このような遺跡にたった1人で入っていい存在とは思えないだろう。

 彼にとっては慣れた行動だった。

 だが、遺跡に入るのも約1年ぶりのことであり、少し違和感を感じ、彼は進めた足が一度止めた。

 ある目的を達成するために、聖獣を求める遺跡探索を控え、自分の実力を見直すことにしたのだ。

 聖獣頼りでは、目的を達成することができないことを実感したからこそ……


 ロルティ・ユトピコ

 執拗にアミス・アルリアを狙っていた半魔族。

 アミスと因縁のある彼がこの遺跡に来たのは、アミスとは一切関係ない理由だった。

 今回この遺跡に来たのは、とある人物からの依頼によるもの。当初はそんな暇はないと断るつもりだったロルティ。今は実力を磨くのが優先事項なのだ。

 だが、自分より格上にあたるその存在に上手い具合に説得されてしまった。


 (いや、口車に乗ってしまったというのが正しいんだろうな……)


 苦笑いを浮かべ、彼は足を再び遺跡の奥へと動かし出した。

 この後、アミス・アルリアがこの遺跡に入ってくるなんて思うこともなく。

 アミスとロルティ

 2人の関係を知るものならば、ただでは済まないことが起こることは容易に想像できるだろう。

 そんな2人が再び邂逅しようもしている。

 アミスの運命の歯車が、再び、激動へと進めようと回り始める。

 

 くるくると、ゆっくりと……

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