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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
8・剣の娘
117/144

盗賊団『飛竜の寝床』

登場人物


◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する見た目美少女の少年魔導士


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 アミスに対して仲間意識より忠誠心の方な強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 精霊魔法を使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命により、アミスを守る為に仲間となった


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる盗賊

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強い

 アミス達が遺跡を出た先に待ち受けていたのは、この一帯で……いや、隣国にまで名を知られている盗賊団。

 かつて、魔術師ギルドの副ギルド長を務めていた男、そして、盗賊ギルドで実力者と名を馳せていた男。そんな2人の男が作り出した盗賊団らしく、元々実力を持った者が作り出したそれは、幾つもの討伐隊を返り討ちにし、そして、その度に寝ぐらを移す事で既に10年以上存在し続けている盗賊団であった。

 長い年月により成長を続けてきた『飛竜の寝床』と呼ばれるその盗賊団の評判は、その場所場所によって様々であり、ある地域では義賊として民から歓迎されていたり、別の地域では悪名ばかりを耳にするような、そんな捉えどころのないもの。

 それでもかつては討伐できるかもしれないという他と変わらぬ隙のある盗賊団だったのだが、1年前に加入したある1人の男が存在が今では討伐不可能という評価の集団に変貌させていた。

 とある国の騎士団長を務めていた男が新たな頭となってから……


 そんな盗賊団が現在寝ぐらとしている深い森の中で、1つの遺跡が発見された。

 およそひと月前の大きな地震により崩れた岩山から見つかったその遺跡の調査の依頼を受けたアミス一行は、盗賊団を刺激しないように注意を払いながら遺跡内に侵入し、無事に調査を終え、後は気づかれないよう街に戻るだけという状況だった。

 だがしかし、事はそうは上手くは進まなかった。

 警戒しながら遺跡を出て、少し進んだ辺りで周囲に気配が生まれ出したのだ。


 「どういうことだ?」


 先頭を歩いていた盗賊職(スカウト)のサンクローゼは充分に周囲を警戒していた。自分の技能(スキル)に自信を持っていた彼は小さな声で呟き、そして、それに対してすぐ後ろを歩いていたら魔法剣士のラスが冷静に答えを返す。


 「魔法……おそらく精霊魔法だろう……」

 「精霊魔法? 木の精霊(ドライアード)か?」

 「たぶんな……」


 黒魔法系の強いマナは感じなかった。

 感じ取ることができる気配は十や二十では無い。それだけの気配を隠していたのだから、黒魔法であれは魔法の源であるマナの動きを隠せるわけがなかった。

 精霊魔法であれば……術者とのシンクロ率の高い精霊の力を借りた高レベルな精霊魔法であれば可能かもしれないとラスは考えていた。


 (しかし、魔術師ギルド出身と聞いていたが、黒魔法だけでなく精霊魔法も得意ということか……)


 メンバー全員が既に気配を感じ取っていた。こちらに気付かせる為に敢えて隠していた気配を解放させたと思える。だが、それが何故かは判断できる程の情報は持っていなかった。

 アミス達が足を止め、いつでも戦闘に移行できる陣形を取る。

 魔導士のアミスと神官のジーブルの中央に置いて、2人を背に守るように他の4人で四方に体を向ける。すると、草木をかき分ける音と共に数人の人影が姿を見せてきた。

 

 「何かいい物見つかりましたか?」


 身なりの良い中年の男がそう尋ねる。口元には笑みを浮かべている。普通の出会いであれば好感を持てそうな自然な笑顔だった。それが今の状況では逆に違和感を感じてしまうほど自然で不自然な笑顔に感じられた。


 「残念ながら何も見つかってません」


 そう返したのはアミスだった。

 その素直な返しは偽りの無い事実。2日間かけての探索での収穫はほぼゼロに近いものだった。一つだけ発見した鍵付きの箱の中にあったのは、少し前の古銭だけだった。売っても今回の費用にもならないほど価値の薄い物であり、探索の結果として依頼先に提出するつもりの物。


 「そうですか……それなら、代わりに装備類だけでも置いていってもらいましょうか……」


 口調は不自然なほど丁寧なままだったが、その瞳に明らかな敵意が浮かび上がる。それに合わせるように他の賊達が武器を構え出した。


 「賊らしくないな……」


 今にも攻撃が仕掛けられそうなそんな状況下でラスが笑みを浮かべながら呟いた。


 「……?」


 ラスの不自然な笑みに、男の口元から一瞬笑みが消える。その笑みも呆れた様子と共に戻り、


 「見た目より冒険者歴は長いようですね。流石エルフの血が流れているということですか……」

 「そうでもないさ……、見た目と実年齢の差はそんなにないからな」

 「そうですか……、どちらにしても無意味に虚勢を張るのは、やめた方がいいですよ」


 男はそう言いながら右手に持つ長剣を高く掲げる。その仕草が何を意味するのか、その場にいる誰もが判る状況だった。

 攻撃の合図へ繋がる動作であることは一目瞭然であり、実際に賊達の武器を持つ手に力が入っていく。


 「別に虚勢を張っているつもりはないんだがな……、続けたらどうなるんだ?」


 返答が判り切った問いを口に出すラスに、男は黙り、少しの間を置いてから長剣を振り下ろした。

 合図と同時に動き出す賊達。

 見えない位置から十数本の矢がアミス達に向かって飛んでくる。その矢の数はラス達が思っていたより多かった。


 (風の精霊魔法か……)


 木々の量や配置を見る限り、弓矢を放つ射手が10人以上隠れているとは、ラスには思えなかった。そう思うと同時にそれの答になる魔法が頭に浮かでいた。


 【風霊の矢(シルフィードアロー)


 本来ならば一本の矢を飛ばす精霊魔法であるが、風の精霊シルフと特殊な契約をしている者ならば複数の矢を飛ばすことができる。

 だが数を増やせばその分魔法力の消費は大きくなる。


 (……射手が多いと、隠れている賊がまだまだ居ると思わせるためか……。中々頭を使ってるな……)


 元々騎士団に所属していたという噂は本当なのだろう、と、ラスは思った。だが……


 (それでも考えが甘いがな……)


 風の精霊(シルフ)の力を借りているだけあって矢の狙いは正確だった。守られるように中央に位置しているアミスとジーブル、2人の魔法を使う者に確実に向かって飛んでいっていた。だが、その全てが目標を目の前にして前に進む力を失い地に落ちた。


 「何!?」


 驚きの声をあげたのは、先程から言葉を発していた男に隠れるような位置に居た男だった。


 (あいつが魔法使いか……)


 そんな驚きの表情を見せなければ、彼が魔法使いであることはアミス達には判らなかっただろう。身を包んだ装備姿も身に纏っている魔力の強さも、他の賊達と変わらぬように思えるものだったからだ。

 しかも、魔法を使う時ですらそれ感じさせないことは、簡単なことではない。

 呪文の詠唱も無く、魔力を高める様子も、周囲の精霊力が乱れた様子もなかった。

 故に、精霊魔法を使用するラスもリンも、どこか姿を隠した場所で魔法を使っていると思っていた。


 「油断するな……中々の実力者だぞ……」


 ラスは仲間に注意を促す。

 元々小さな町の魔術師ギルドとはいえ、そこの副ギルド長を務めていたのだからある程度の実力があるのは当然だった。それでも、その実力の一部を垣間見た今、改めてその実力を警戒する必要あるように思い、咄嗟にそう口に出たラス。

 

 「気を引き締める必要がありそうですね……」


 敵対相手への警戒を強めたのはアミス達だけではなかった。

 盗賊団のリーダー、ラロッカ・カール。かつてブランバール王国の騎士団長勤めていた彼も魔法による矢を完全に防がれたことで、目の前に居る冒険者達が思った以上の実力者だと考え直すことにした。

 ラロッカには、まだ若い冒険者の集まりにしか見えなかった。だが、その実力を垣間見た彼は改めてアミス達を観察することにした。改めて見れば2人耳が尖っていることに気づき、それが長寿の種族であるエルフの血が流れていることを表すということを理解した。先ほど否定はされたが見た目よりは歳を重ねているのかもしれないと考えを改めて思い浮かべ、このハーフエルフどちらかが、先ほどの無数の矢を防いだのだろうと予測する。


 (6人中、女が4人か……、あの2人が見た目通りの歳じゃなかったにしろ、大した冒険者一行には思えないがな……)

 

 「ラロッカよ……」

 「!?」


 近くからの声に、仲間がすぐ横まで来ていることに気づいた。


 「どうした? ヤコバよ……」


 声の主は、先程の大量の矢を飛ばした魔術師であるヤコバ・タケーだった。


 「おそらく風の精霊だな」

 「風の精霊魔法か……」

 「あぁ、俺と同じだな……」


 そう予想するのは簡単だったが、実際にあれだけの数の矢が、ましてや精霊の力が宿ったそれが完全に防がれたことは正直予想外過ぎることだった。

 自分と同じで風属性が得意属性なのだろうと、ヤコバは予想を立てる。でなければ、全ての矢が完全に塞がれた説明がつかないという考えのもと……


 (あるいは……聖獣か……)


 ヤコバはそれが簡単に手に入る力ではないと判っていながらも、その可能性も頭の片隅に浮かべていた。

 その可能性を持ったのは正解であったが、だが、それ以上の可能性もあると思わなかったことが、彼に取っての最大の失敗だった。

 目の前にいる若者達が、複数の聖獣を持っているなんて、思ってもいない。ましてや、その殆どが1人の少年が契約している力なんて……


 そして、盗賊団『飛竜の寝床』のリーダーであるラロッカも思っていなかった。

 自分が騎士団長という立場を失うきっかけとなる存在が目の前にいるなんてこと……

遅くなりましたが執筆再開しました

次の話の冒頭に書きますが、前話から一年の刻が過ぎています

何とか執筆速度上げたいと思いますので、よろしくお願い致します

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