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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
1・聖獣と少年
1/144

始まり


 「こっちのはずなんだけど・・・」


 不安な声色で小さく呟く。

 木々が鬱蒼と繁り、薄暗い森の道を進む一人の少年。

 フード付きのローブに、魔法の印が入った杖。

 そして、その小柄な体型には不釣り合いな大きなリュックを背負っている。

 そのリュックの中身を港町ルオタまで運ぶのが、今回の仕事。

 故郷から旅立ち冒険者になってまだ10日程の少年、アミス・アルリアが受けた、二つ目の仕事だった。

 依頼主から教えてもらった通りの道を通ってきた。

 その道なら2日目の昼には到着できると聞き、進んできたが、もうすぐ2日目の日も傾いてきている。

 

 歩く速度の問題だろうか?

 昨夜の野営に入るのが早すぎただろうか? 

 途中、休みすぎただろうか?


 色々な原因を考えられるが、今はルートに間違いがないことを信じて進むことにした。


 「 ? 」


 急にかすかな音と強い魔力を感じ取った。

 アミスは、迷いもなくその魔力の方向へ駆け出した。

 仕事の期限までは丸一日以上ある。

 それより、突然現れた強い魔力に緊急性を感じたのだ。

 林道を逸れ、林の中に入ってそれ程しない場所に、木々の無い開けた場所があり、そこで冒険者らしき二人組がヒト型のモンスターと戦っていた。

 アミスはすぐに強い魔力の正体がそのモンスターだとわかった。


 『ウッドゴーレム』


 古代の魔術師によって作られた動く人形。

 アミスも知識として知ってはいたが、実際に見るのは初めてだった。

 目の前のウッドゴーレムは、人間より二回り程大きく、横幅の広い重厚感のあるタイプだ。

 色々なタイプがあると聞くが、自分が知る限りでは、まだまだ冒険者になりたての自分では厳しい相手だと思えた。

 そして、目の前で戦っている二人組でも厳しく感じる。

 男女二人組の冒険者で、男は片手剣と木製の盾を持ち、女はやや小さめの弓、そして、二人とも革製の鎧を身に着けており、それらは新品同様に見えることから、新米冒険者なのだろうと予測できたからだ。


 (助けなきゃ)

 

 そう思うと、アミスはすぐに呪文の詠唱を始めた。


 「風の精霊よ 彼の者を切り裂け  【 風 斬 】(ウインドカッター)!!」


 早さを優先し、詠唱の短い攻撃魔法を発動させた。

 アミスの杖の先より生み出された風の刃がウッドゴーレムに襲いかかる。

 自分が最も早く発動できる、この初歩の精霊魔法で倒せる相手とはアミスも思っていない。

 ウッドゴーレムは風の刃に切りつけられバランスを崩す。


 「今のうちに逃げて!!」


 何が起こったのか、すぐに把握できなかったのだろう。

 二人が行動を起こす前に、ウッドゴーレムは体勢を立て直していた。

 ウッドゴーレムが腕が振り回してくる。

 男冒険者は、咄嗟に盾で受け止めようとするが、まともに受けきれるパワーではなく、盾と共に大きく吹き飛ばされてしまう。

 女冒険者が咄嗟にその前に出て弓を射る。

 大きな的であるウッドゴーレムに簡単に命中はするが、それ程ダメージを与えているようには見えなかった。

 ウッドゴーレムとの距離が縮まり、彼女は弓を捨て、腰の短剣を抜く。

 男冒険者も立ち上がり、剣を構えて女冒険者の前に立つ。

 

 (・・・苦手だけど、ウッドゴーレムには・・・)


 「ク・セサリ・ルム・フィスタ・・・・・」


 アミスは、先程とは違い古代語による長い詠唱を唱えだす。

 木製のウッドゴーレムには、火系の魔法が最も効果的であり、この詠唱はアミスが使える火系の攻撃魔法の中で、最も威力のある魔法の詠唱だ。


 「・・トクセリ・ファム・・・・・【 火 炎 球 】(ファイアーボール)!!」


 ウッドゴーレムの攻撃より先に詠唱が終わり、アミスによって生み出された大きな火炎球がウッドゴーレムに炸裂し、ウッドゴーレムは火を纏いながら吹き飛ばされて木に激突し倒れた。

 苦手な系統の魔法だったが、無事倒せたことに、ほっとしてアミスは二人の冒険者に駆け寄った。


 (僕の魔力で、倒せるとは思わなかった・・・、ウッドゴーレムの弱点だったからかな?)


 「大丈夫ですか?」

 「あぁ、たすか・・・」

  

 途中で言葉を止めた相手の目線が、自分ではなく自分の後ろへ向けられていることにアミスは気づいた。

 そう、先程ウッドゴーレムが倒れた方へ。

 慌てて振り向いたアミスの目に、自分へ近づいてくるウッドゴーレムの姿が映った。

 すでにウッドゴーレムの攻撃範囲、呪文の詠唱は間に合わない。

 二人の冒険者は、自分ではどうにもならない状況に硬直してしまう。

 逃げる、防御態勢を取る、反撃する、冒険者であればいずれかの行動を取るはずだが、2人の冒険者は強直してしまっていた。

 そして、そんな二人の前でウッドゴーレムの腕が振り下ろされようとした瞬間だった。


 「 ガラコ!! 」


 目の前の少年アミスが一言放った瞬間、突然放たれた炎により、ウッドゴーレムは吹き飛ばされ、燃え始めた。


 「びっくりしました、油断しちゃだめですね」


 と、苦笑いを二人に向けるアミス。

 その横には、炎に包まれた獣が寄り添っていた。 

十数年ぶりの小説執筆で、初めての投稿となります。

かなり昔に作った構想を思い出しながらの執筆となりますので、続きの更新は不定期になると思いますが、なんとか完結を目指します。

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― 新着の感想 ―
1日1話読むぞー
[一言] あり得ないほどつまらないb
[良い点] (ΦωΦ)2周目! ネギは2週目は飽きが来る質だけど、すらすら読めたw さぁ、今回はさらに深く…物語へダイブ!
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