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森本くんの軟式野球部日記  作者: れもん
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今日もグラウンドにいます

森本くんの流されやすい日常です。あまり野球の話は出てこないです。

始業式の朝、僕はうきうきで学校に向かう。

4月の穏やかな日差しで照らされた木々が眩しいくらいに晴れやかな日だ。新入生らしきピカピカの制服を着た中学生もちらほら歩いている。

こんなに穏やかな気分で登校するのは3年ぶりだった。

中高一貫校であるこの高山学園に入学して3年間、朝練のために早起きする日々は本当に辛かった。

しかしそれも昨日まで、今日からは高校生として新たな学校生活が始まるのだ。


翔「おはよう!」


背後から聴きなれた大きな声が聞こえた。

振り返ると中学野球部キャプテンであり、今日から僕と同じ高校生になったはずの翔が立っている。


「おはよう。高校でも野球部に入るつもりなのか?」


思わず嫌味が出てしまった。翔に会うと野球部のことばかり思い出す。

翔は中学から着ているパツパツのブレザーに高校生になって新しくなったネクタイをしめ、肩にはエナメルバッグを提げている。僕も昨日まで毎日持っていたが今日は置いてきた。やっと解放されたのだから今日も持っている翔の気が知れない。


「俺はこれしかカバン持ってないからな。まあ、楽しみにしてろよ。」


そう言って不敵に笑った翔は何か企んでいるようだったが、巻き込まれるといけないので深くは突っ込まないことにする。


教室に入っても中学から変わりばえのない顔触れで担任の教師もよく知った数学の若い先生だった。始業式の日は午前中で終わりだ。放課後になると話題は部活のことで持ちきりだった。

高校でも部活に入る生徒は多くない。受験に向けて勉強を始める人が多数派なのだ。さすが自称進学校だな、と実感する。

それでも部活に関心がないわけではないようで、見学に行くか話し合っているグループが多いようだった。


茜「森本はどうするの?」


前の席に座った茜が振り返る。

茜は小学校からの幼馴染で、名前順で座ると前後になることが多いためよく話をする仲だ。


森本「しばらくはのんびりしたいな。」


そう答えると、おじいさんみたい、と笑われた。確かにそうかもしれないが、まあ今は部活をしたいという気にはなれない。

グラウンドからカーンと音が聞こえる。

立ちあがって窓から外を見ると見慣れたグラウンドで後輩たちが練習しているのが見えた。中学はまだ春休み中のようだった。

昨日まではあの中にいたのに、遠い昔のことのように感じる。2度と戻りたくない場所だった。


しばらく見ていると後輩が気がついた様子でこちらに手を振っている。

よく見えないが反射で振り返すと、後輩が慌てて帽子をとってこちらを向いた。


翔「森本ー!降りてこい!」


聴きなれた大きな声だった。

よく見えないはずなのに翔がニヤリと笑う顔が浮かんだ。

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