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あのネックレスは自分の命のような物。
それが、あの人の手にあるということは、自分の命もあの人の手の中…。
今にもキュイッと潰されてしまいそうな心臓を守るように、胸に手を当ててしまう。
「大丈夫、何も心配はいらないよ。もちろん大切に扱う。それに、研究している3ヶ月の間は、もちろん国賓として、君も大事に接待させてもらうよ」
いやいやそんなことを望んでいる訳ではないのです、って、国賓ってアホかっ!
「けど、私は旅をしてまして急いで次の街に行かなくちゃいけなくて…」
本当は路銀を貯める為にこの国で3ヶ月ほど働こうとか思っていたけど、もうそれどころじゃない。
しどろもどろになりながらも、必死だ。
一刻もはやくこの人の前から逃げ出してしまいたい!
「急ぐ旅でも路銀が必要だろう?失礼だけどあまり持ってないようだし。どうだろう、3ヶ月待ってくれたら君に報酬として、これぐらい?」
そう言って、シルビィーは小切手にサラサラと数字を書き、セイラに見せる。
浅ましいと思いながらも、ついつい、その金額を追ってしまう。
えぇ、ゼロが6,7,8・・・
って、豪邸が買える?!!
思わず目を白黒させてシルビィーと小切手を見比べてしまった。
その間もシルビィーのうそ臭い微笑みは変わらなかった。
逆に怪しすぎるっていうの!
心を静めながら、なんとか逃げ切るための言い訳を絞り出す。
「たっ、確かに路銀は必要ですがこんな金額を貰うなんて恐れ多いですし。とにかく返して「あぁ、なんか急に肩に痛みが…」
絶対ウソだぁ!!!
シルビィーは再びセイラの言葉を遮った。しかも先ほどセイラのぶつかった肩を抑えて、顔を顰めている。
さっきまでまったくそんなそぶり見せなかったじゃん!!絶対ウソ!!
しかしぶつかった手前、それを言われるとセイラは後ろめたくて何も言えなくなってしまった。
慰謝料がどうのなんてなったらもちろん払える訳がないし。
口惜しいが、何も言うことが出来ないセイラ。
その様子に満足したように、シルビィーがにっこりと微笑んだ。