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あなたを探して旅してました。  作者: SAYA
1.Gerbera
3/63

3

シルビィー、王子??

王子様みたいと思っていた人は本当に王子様だった。

王道王子なんて、架空の存在だと思ってたのにっ!セイラは愕然とした。

その様子を知ってか知らずか、シルビィーは気にした様子もなく、自分の部屋に連れてきて今に至るのだ。


とっ、とにかくこんな場違いなところは、居心地が悪すぎ。

「そのっ、本当にぶつかってすみませんでしたっ!観光もさせていただいて、お城まで入れてもらったのでもう十分ですっ。だから、「これなんだけどさぁ」(帰してくださいっ!!)

遮られたっ!

絶対わざとだっ!


王子ということに驚きはしたが、だからと言ってシルビィーへの評価は変わることはない。

間違いなくこの人は、腹黒い人!!

架空の存在を体現した人が、腹黒なんて世知辛い世の中なのね…。


今までの経験上、そんな人に勝てた試しのないセイラは、色々と悟った気分でシルビィーの差し出した物に目を向けた。

「えっ、それっ!?」

慌てて自分の胸元に手を当てた。

なっ、無い!!悟ってる場合じゃなかったのね!

シルビィーの手の中にあったのは、間違いなくセイラのネックレスだった。

どうやらぶつかった拍子にチェーンが切れて落ちてしまったらしい。

「セイラのだよね?」

「はいっ、よかったぁ。大切なものなんですっ」

私の命と同じぐらい大切な物。

私が旅を続けている理由である、大切なネックレスだ。


セイラはそのネックレスが無いことに気づいてギョッとしたが、ホッと安堵し、シルビィーの手からネックレスを受け取ろうと手を伸ばした。


しかし、

「珍しいよねぇ、これ」

そう言ってシルビィーは、セイラの手に返すことなく自分の目の前に持っていった。

腹黒ってより、いじわるっ!

親切に拾ってここまで持ってきてくれたのに感激して、シルビィーに対する評価にちょっと後ろめたさを感じたぐらいだったのに、一瞬で裏切られた。

セイラは、思わずムッとした表情を顔に出した。

だがシルビィーは、そんなセイラを無視して、しげしげとネックレスを観察していた。


切れてしまったチェーンは、そこらへんにある普通の物だ。

しかし問題はそのトップ。

これは私が知る中では、同じ物は見たことがない。

正直言って、どんな素材でどんな風に加工されているか、まったく分からない物なのだ。


世界中に存在する、

彩という彩。

光という光。

闇という闇。

それを一つにまとめたような、小指の先ほどの大きさの硬い魔力の指輪。

その不思議な指輪を、ネックレスのトップにしていたのだ。

「返してもらってもいいですか?」

セイラは、きっぱりとシルビィーに言った。

「うん、もちろん返すよ。けどさ、お願いがあるんだよね」

なっ、なぜだか、とてつもなく嫌な予感がするんですけど。

まだ何を言われた訳でもないのに、全身から冷や汗が吹き出ている。

なんなのよぉ、この圧迫感はっ。すでに、泣きそうな気分に陥っているんですが。

心を騙しつつ、なんとか強気の表情を保って、シルビィーを見つめる。

「僕さ、魔力の研究をいているんだよね。よかったらこれ、3ヶ月ぐらい貸してくれないかい?」


ニッコリ…。

辺り一面に花びらが舞った様な、今まで見た中で最上級の微笑みだった。

初対面でこんな微笑を見せられたら間違いなく王子様(本物だが)と思って、恋に落ちるだろう。


しかし…、


(ダ・メ・デス~~~~!!)


セイラは、顔面蒼白になりながら心の中で絶叫した。


さきほどから、なぜだかこの人には逆らってはいけないようなオーラを感じているのだ。

普通なら冗談じゃないっ!と、文句の一つでも言ってやるところだが、その曇りなき?黒い微笑みを前にすると、そんな気を持つことすら、恐れ多い気がしてくる。

しかし、無理だと分かっていてもここで負ける訳にはいかない。

「そっ、それは、とても、と~っても大切なものでして。おいそれとお貸しする訳には…」

脅迫のような圧迫感に耐えながら、冷や汗を流し一生懸命言葉を紡いだ。

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