電車の大きな靴の足元に一目惚れ
はあー、はあー。
ああ、もう電車きてる。
はあーはあー、はあーはあー。
足の歩幅も不規則になった。
最寄りの駅は、今では珍しく、平面で駅の改札に入れる。ゆえに、電車が駅に入ってくるのが、目の当たりに見える。
ちょっとだけ、電車、待ってーっ!
駅に停車しようとしてる電車に、心で叫んだ。
もう、ダメだ 走れない。私が乗るまで、誰か遅れて電車にゆっくり乗ってーっ!
電車は停車して、すでに扉が開いて、皆が乗降を始めた。
ああ、ダメだ!次の電車で間に合うかなあ。
電車は扉が開いたまま、まだ何とか停車中だった。
私が電車に乗るやいなや、電車の扉は、グググ、グーン、ペタッ。ピッ、バゴン と閉まり始めた。
乗れたあ。間に合わないと思ってたのに、良かったあ。
すみませんでした、と誰にともなく呟いた。
息の荒さの恥ずかしさや、ギリギリに乗った申し訳なさとで、ずっと下を向いて、静かに息を少しずつ整えてた。
一瞬の事だが、電車の扉が閉まる寸前に、電車の扉のレールの上に、直角に乗ってる大きな靴に気付いた。その靴がレールから車内に戻ったと同時に 扉が閉まったようだ。
じっと、その靴だけを見続けた。 この大きな靴の人は、扉が閉まらないようにレールに靴を乗せて、助けてくれたんだ。
すぐに顔を上げても、どの人の靴かわからず、お礼も言えなかった。
ありがとうございます、と誰にともなくお礼を言った。
追伸
電車には余裕を持って乗ります!