トリオ・ザ・天使。
数日前から、天国では大騒ぎが起こっていた。
神様が暇潰しに、神力を丸めて一人キャッチボールをしていた時だった。
絶対に落とすはずがない丸めた神力を、神様はキャッチし損ねた。
あ。
と、思った時には丸まった神力は下界に落ちていた。
そう、その丸まった神力こそが、ジョーパパファミリーが拾った、あの白い石だ。
下界に降り立った天使トリオが神力を探し出した時には、既にジョー達が神力を吸収してしまっていたのだ。
これは……。
ヤバイよ。ヤバイよ。
神様のうっかりのせいで、神様パワーが下界の生き物に宿ったのだ。
しかも神力が消えた状態の神様は、今すぐ下界に干渉出来る力が残されていない。
ヒ~。
慌てた神様指示の元、ジョーファミリーの動向を天使トリオが探っているのだ。
神様の名にかけて、その力がどう使われるかを見極めなければならない。
ぶっちゃけ、自らのおっちょこちょいのせいで、下界を滅茶苦茶にするわけにはいかないのだ。
『神様~。何か大丈夫そうですよ~』
ジョー達の動向を見守っていた天使トリオが報告に戻ってきた。
『亡くなった奥さんからもらった力だって勘違いしてるから、悪いことには使わないんじゃないですかね~。なんかノホホンとした一家みたいだし』
『お姉ちゃんも大丈夫そうだよ。洗濯とか掃除に使ってるだけだし。使ったらズルしたみたいで悪いとか可愛いこと思ってるし』
ココについていた二号も報告する。
『末っ子のアンディはほとんど神力を使っていません。力を自覚出来ていないのでしょう。ただ、感情に任せて神力が漏れる事があるのが心配です』
アンディつきの三号が苦言を呈する。
う~む。
一応難しい顔つきで報告を聞いている神様だったが、まず大丈夫だろうと踏んでいた。
今は神力は殆ど無い状態だが、そこは神様だ。
下界に干渉は出来なくても、ジョー達の魂のオーラを見ることは出来る。
濁りなし!
久々に出会った美しい魂だった。
この家族の、ほんわか魂にふれて、神様は嬉しくなっていた。
下界には幸せの種を幾つも与えているのに、争い事は尽きず、腐り果て濁った魂がどれだけ渦巻いていることか……。
神力を与えたままで一家の行く末を見守るのも良いかもしれない。
時間が経てば自らの神力は回復する。
吸収された彼らの神力を排除するより、一家を観察している方が、ずっと楽しそうだ。
『一号二号三号!お前たちはこのままジョーファミリー付となり、彼らを見守り報告するという職務を与える!』
『御意!』
『……え?』
『ヤダ』
神様の英断に、その使徒である一号二号が猛抗議を始めた。
『反対!絶対反対!』
『反対!断固反対!無理な転勤辞令の撤回を要求します!』
一号二号の鼻息は荒い。
『三号は良いのか?』
素直に了承した三号に神様が問いかける。
『はい。私がついているアンディくんは可愛いですし。たまには下界生活もいいと思います。私はお二方ほど花園の甘露に依存している訳でもありませんから』
澄ました三号の発言に動揺した一号二号は、顔を真っ赤にして無茶苦茶な飛行をしながら叫ぶ。
『ち、違います~』
『か、甘露の為に天国と下界を行き来するのが面倒などと、毎日何度も甘受したいなどと、そんな浅ましい考えで神様の意向に反対しているわけでは決して、決してないのですー』
あんたたち……決してあるから。
寧ろ反対の理由は、それだけだろう。
『……』
『一号二号三号、下界でジョーファミリーを見守ること。こ・れ・は神命だ!』
神命。
それはやたら滅多らには発動されない、神様からの絶対命令。
逆らえば羽をもがれ天国から追放される。
『『ハハァー!』』
いやしんぼを含む天使トリオはひれ伏し、電光石火で下界へと降りたって行った。