天国からの贈り物?
ヒュ~と、竜巻が舞う。
なぎ倒された木が次の瞬間には、薪へと形を変える。
その横には剥がれた皮の上に、きれいに六等分に切り分けられたウサギ肉が置かれていた。
村外れの高原で、オンジ村長は目の前で起こっている出来事に、目を瞬かせていた。
ジョーから聞いた話は、にわかには理解しがたかった。
何でも叶うという意味を測りかね思案しているオンジ村長に、百聞は一見に如かずと、ジョーは魔法を披露することにしたのだ。
そして今、オンジ村長は固まっていた。
この村長、実はなかなかの人物だった。
田舎農家の生まれながら神童と呼ばれ、都の商人に丁稚奉公に上がり、番頭まで勤めあげ、色恋のすったもんだの挙げ句、引っ込んだ先で伯爵からマッキー村の開拓を任され、僻地に井戸を掘り、農業と家畜の飼育を推進し、貧しいながらも餓えないように、一代で村を導いた。
一見、ヨボヨボじいさんにしか見えないが、マッキー村の大功労者なのだ。
そんなオンジ村長も困惑していた。
確かに魔法だろう。
捌かれたウサギが出てきたのだ。
だがジョーが言っている事は……。
「今は、鍋用のウサギ肉と、調理する為の薪が出て欲しいと願いました。ウサギ鍋を願えば、調理された鍋があらわれる気がします」
ポリポリと頭をかきながら、申し訳なさそうに説明をするジョーに、オンジ村長の混乱は増すばかりだった。
「……考えたのですが、この力はココにもアンディにもある。おかしくないですか?家族みんなが魔法使いになる。あり得ない。イヤ、実際そうなった。ならば、我々にそんなことをさせるのは……セリーナしかいない」
「……」
「セリーナがくれた力だと思うんです!幼い子供たちの為に」
きっぱりと、ジョーは言い切った。
ジョーがたどり着いた考えは、天国にいる妻から贈られた力だ。
だから家族みんなが、魔法を手にした。
この力にはきっと意味があるはず!
遥か昔、神童と呼ばれていたオンジ村長にも、判断しかねていた。
家族みんなが突然魔法使いになるだと?
天国から贈られた石の力で?
望んだ事が叶う?
それでいいのか?
大丈夫なのか?
……。
村に魔法使いがいるのは、ありがたい事ではないか。
ジョーもココもアンディも、大切な村の民だ。
オンジ村長は、何とかその力業でまとめてしまおうとしといた。
『天国からの力だって~』
『惜しいー。ニアピンだー』
『ある意味、正解ですよね』
ジョーパパとオンジ村長の周りを、くるくる取り巻いているモノ達がいた。
人には見えないモノ達。
白い羽と光るわっかを持った。
その名は、天使トリオ。
一号二号三号。
天使トリオはクスクスフムフムと、ジョーパパの動向を観察していた。