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光る石。

 今日はメーメの放牧に三人で出掛けた。

 帰ってからジョーパパは畑仕事に向かい、ココとアンディは家のお掃除をした後、白い石を転がしながら一緒に転がるという、何が面白いのか皆目見当もつかない遊びを繰り返していた。

 

 ココは白い石をじっと見つめる。

 何だか不思議なのだ。

 何かを感じる。

 この石を触っていると、体がポカポカとあたたかくなってくる。

 

 あつい。

 喉がカラカラだ。

 

ココはコップに水を汲み、半分飲んでアンディに渡した。

 ゴクゴクとアンディの喉も鳴る。

 

「パパにアプをもっていこう」

 アプの果実はジューシーで甘い。

 疲労回復と水分補給に効果的だ。

 難しい理屈はわからなくても、疲れた時はアプの果実と、村人は皆知っている。


「アンディもいくよね?」

「いきゅー」

 白い石をポケットに入れ、木箱からアプの果実を二つとる。

 布で巻いて、腰にくくりつける。

 さぁ、アンディと畑までお出掛けだ。

 

 手をつないで、小さい二人はメーメの小屋を横切り、ナナちゃん家も過ぎた先にある、開けた畑を目指す。

 中腰で青菜を駆っているジョーパパを見つけた。


「パパー」 

「パッパー」

 可愛いチビッ子たちが駆けてくる姿に、ジョーパパは目を細める。


「よく来たなー」

 がっちりした逞しい両腕を広げて二人を迎える。

 遠慮なしにチビッ子は飛び込む。

 ココの腰に巻いたアプの実がジョーパパの足にぶつかった。


「ん?これは何だい?」

「アプをもってきたの。いっしょにたべるの」

「たべりゅの」


 ココは布をほどき、アプの果実をジョーパパに渡す。

「そうか。ありがとう」

 ジョーパパはアプ果実を手の力だけで半分に割る。

 一つを食べきれないココとアンディは、いつも半分こだ。

 畔に座って皆でアプの実をかじる。


「おいしーにょ」

 ジューシーなアプの果汁で、アンディはベトベトだ。

 ココは巻いていた布で、アンディの手や口元を拭う。

 そんな微笑ましい二人をジョーパパが見守っている。

 

 自分の手も拭き終えたココは、ポケットが熱くなっているのに気づいた。

 やっぱり、あついよ。

 ごそごそと白い石を取り出し、ジョーパパに翳してみせる。


「パパ。この石……」

「ん?どうした」

 ジョーパパは、翳した石をのぞきこむ。


「あのねー。あつくなるの。ひかったりするの。なんかへんなの。いきてるみたいだよ」

 ココは真剣な面持ちで白い石を手渡す。

「どれどれ。あー。確かに温かいな」

 

 ポーンと投げてキャッチする。

 手のひらに置いて、三人で見つめる。


「んー。でもまぁ、石だな」

 そう。紛れもない丸い石だ。

「いし」

「いしーっ」

 ジョーパパの手のひらに置いた石をココが触り、真似っこアンディも手を重ねる。

 その時………。


 キラリ。


 白い石が輝き始めた。

 だんだんと目映い光を放ち、光は大きくなり、それは目を開けて入られないくらいの眩しさになる。

 思わず三人は、手を重ね握りしめ合っていた。

 白い石を。

 

 どれくらい時間が経ったのだろう。

 まずジョーパパが目を開け、ぎゅっと目を閉じたまま固まっているココとアンディを揺さぶる。

「おい。ココ!アンディ!大丈夫か?」

 

 恐る恐る目を開けても、チビッ子たちはまだ動けない。

「……ひかった」

「……ひかっちゃ」

 ビックリしたのだ。


 握りあっていた手を離し、ジョーパパが開いた手のひらに……白い石はなかった。

 消えていた。

 光とともに消えたのだ。


「……」

「……」

「……にゃい」


 辺鄙な村の青菜畑で起こった、昼下がりの出来事だった。

 



 


 


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