クーリングオフ。
『私たちは、味方よ~』
『安全な天使だよー』
『怪しくはありません』
口いっぱいに頬張っていた肉団子をのみ込んだ天使トリオは、目をひん剥いて驚いているジョーに無害アピールを始めた。
「天使、だと……?」
『そうよ。力を持った貴方たちの見張り……もとい、サポートをしてるのよー』
「……力の事を知っているのか」
『ええ。私はジョー、貴方に付いている天使一号よ』
天使一号が、くるくるとジョーの周りを飛ぶ。
『私は天使二号。ココちゃんに付いてるわ』
天使二号は、一回転してココの前のテーブルにペタンと座る。
『私は天使三号です。アンディくんに付き添っています。宜しくお願いします』
天使三号は、アンディの前で恭しく頭を下げる。
「天使……。そうか、セリーナが遣わしたのか!」
天使と初対面という状況も、セリーナパワーで受け入れてしまうジョーパパの目は輝いていた。
『私たちは天界から来ましたが、セリーナさんが関わっているわけでは……』
「イチゴ!ニゴ!サンゴー!」
アンディが天使たちをそれぞれ指差し叫ぶ。
「イチゴ!ニゴ!サンゴー」
「すごいね。アンディ。てんしさんのなまえ、もうおぼえたの?」
ココが無邪気に名前を叫んでいるアンディの頭を撫でる。
「おぼえちゃー」
両手をあげて、キャッキャ喜んでいる。
天使トリオを、珍しいオモチャだとか思っているに違いない。
『イチゴって、私のこと?』
『私はニゴ?』
『サンゴーは、伸ばさないと駄目なのでしょうか?』
どこまでも真面目なサンゴーだ。
「てんしさん。なかよくしてくださいね」
「くだちゃい」
チビッ子たちのつぶらな瞳で見つめながらの挨拶に、天使トリオは撃ち抜かれる。
ズキュン。
もう、メロメロだ。
『く~。この家族イイわ。下界の食事も悪くないし』
『神様に感謝だねー』
「かみさま?」
『そうですよ。ココちゃん。私たちは神様からの御指示でここにいるのです。だから安心して下さいね』
「……セリーナの指示じゃないのか?」
『天使を使役出来るのは神様だけです』
「……じゃあ魔法は?魔法もセリーナからの贈り物ではないのか?」
『ん~。ぶっちゃけ皆の力は、神様の落とし物なんだよねー。神力を探しにきたらもう吸収しちゃっててー。困ったよ』
「……」
『取り戻しに来たんだけど、神様が今度は見守れって言うし。意外と気まぐれなのよね。使徒の身の上としては従うだけだけどさー』
『イチゴ!ニゴ!止めなさい』
面も割れて気が楽になったのか、内情暴露を始めたイチゴとニゴに、サンゴが待ったをかける。
『はぁ~い』
『てへっ』
ペロリと舌を出しブリッコしてみても、このお喋りを神様に知られたら懲罰モノだろう。
「セリーナからの贈り物ではないのか……」
『ジョーさん、大丈夫ですよ。我々が見守るという事は、神様からのお墨付きを戴いているという事です』
サンゴがフォローしているが、俯いたジョーの顔は曇っていた。
「……返す」
『え?』
「この力、お返しする」
『『えーー?』』
そんなこと言われても……。
そんなこと言わんといてや……。
きっぱりと思い切ったジョーに、天使も思わず訛ってしまう。
「ココもアンディも、それでいいな?ママからの贈り物じゃないんだ。お返ししよう」
ジョーの決意は固いようだ。
でもそうしたら、わたし達は任務失敗?
天使トリオは顔をひきつらせていた。
イヤ。チビッ子たちはまだお子ちゃまだ。
魔法を手放すのは惜しかろう。
きっとジョーの意見に反対するはず!
天使たちは期待しながら、チビッ子たちの答えを待つ。
「……わかった」
「わかっちゃ」
え?
え?え?え?
煩悩まみれの天使たちは、ココとアンディが殆ど神力を使わずに生活をしていたことを忘れていたようだ。
『『これは……』』
『はい。ヤバイですね』
顔を見合わせた天使たちは、次の瞬間、消えた。
悲鳴を残して。
『ウギャ~~』