肉団子のト・リ・コ。
村の彼方此方から、美味しそうな匂いが漂ってくる夕暮れ時。
作業帰りの男達の足取りも、軽やかになっていく。
ココもジョーパパが狩った猪肉で、アンディ待望の団子汁を作っていた。
待ちきれないアンディは、スプーンを手に、すでにスタンバっている。
「ただいまー」
ジョーパパが帰ってきた。
「おかえりなさい~」
ココがお出迎えをする。
残念ながら今日は、アンディのお出迎えは無いようだ。
アンディの脳みそは、団子汁の行方でいっぱいいっぱいなのだ。
「はい。おまたせしました」
たっぷりのスープと団子を注いだお椀を、ココが配膳していく。
「旨そうな匂いが外までしていたよ」
ジョーパパもこのビジュアル&匂いにノックアウトだ。
みんな揃って。
「「いただきまーす」」
お椀に顔を被せてハクハクモグモグと、アンディが肉団子にかぶりついている。
「アンディ。あついのきをつけてね。おかわりあるから、ゆっくりたべてね。パパもね」
5才でもココはもう、立派なお母さん代わり。
「おかわりするのー」
一番に食べ終えたアンディのお椀に、スープとお団子を継ぎ足す。
肉団子をすくったアンディが、一点を見つめたまま静止している。
「ん?どうした?アンディ」
「んーと。たべりゅ?」
肉団子を宙に掲げる。
そう、掲げたその先には、団子汁を凝視して涎を垂らさんばかりの天使トリオの姿があった。
「たべりゅ?」
差し出された肉団子を、一号がパクリと頬張る。
「おいし?」
口いっぱいモグモグさせながら、一号は何度も頷く。
体全体が感激と喜びで輝いている。
初めて人間から食べ物をもらった。
初めて下界の食べ物を食べた。
感想は?
『ウメ~~!』
『ず、ずるいよー!わたしも食べたいよー』
『同意!』
食いしん坊一号に出遅れをとった二号と、控えめに三号も暴れだす。
「ぼきゅのがなくなりゅの~」
天使たちの勢いに、肉団子を全部食べられてしまうと思ったアンディは、泣きべそだ。
「あの。これをどうぞ」
ココがおずおずと、肉団子を差し出す。
『いいのですか?』
『いただきー』
天使たちは、直ぐさま肉団子に飛びつく。
そして……。
『なにコレー』
『!』
羽をバタバタさせ、宙に浮いたまま、蕩けている天使たち。
放出されるキラキラが食卓を彩っている。
下界の食事は、かなりお気に召されたようだ。
「お、お前たちは何だー!」
どうやらジョーパパにも、天使トリオの姿が見えたようだ。
やっとだよ。