8 もしかしてガス式の風呂に入ったことないのか
謎の無言食事会を終え、1息ついた。
「ネネ、風呂に入ってこいよ」
声をかけると、ネネはコクッとうなずき、風呂場へ向かった。
うちの風呂は、いまどき珍しいガス式の風呂だ。
赤と青の2つのコックがあって、赤をひねるとめっちゃ熱い熱湯が出る。
青をひねるとめっちゃ冷たい冷水が出る。
2つのコックを大きくひねったり小さくひねったりして
熱湯と冷水の量を調節する。
そうやって自分の好きな温度に合わせないといけない。
めんどくさすぎるが。
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1人になるとかなり冷静になれるな・・・・・。
そんな時、決まって考えるのが「アイツ」のこと。
最近会ってないな。
「アイツ」のことだ、相変わらずお人よしなんだろうな。
元気だと良いが・・・・。
「うああああああああああああああああああああああっ」
突如響き渡る叫び声。
もちろん俺じゃない。
「・・・・ネネ!」
走って風呂場に駆けつけ、バンッとドアを開ける。
ネネは、服を着たまま浴室にうずくまっていた。
その後ろの蛇口から流れる・・・熱湯!?
「おい、どうしたんだネネ!」
ネネは腕をおさえ、ぐっとこっちをにらんだ。
でも、いつも強気な目は少し弱く、目の端に涙がたまっていた。
「草子!お前はいったいお湯を何度に設定している!?」
え?
いや、ガス式だから温度設定とかできな・・・・
まさか。
「ネネ、もしかしてガス式の風呂に入ったことないのか」
「当たり前だ!私は平成生まれだ!」
俺も平成生まれなんだけど・・・じゃなくて!
「赤いコックだけひねったのか」
「・・・赤いほうが温かいやつが出るのかと思ったんだ」
あながち間違ってはいないけど、「温かい」やつとは程遠いぞ!
「シャワーの温度を確かめようとお湯を出してみたらあつ・・くて・・・」
ネネが自分の腕を抑える。
「・・・・!ネネ、腕見せろっ」