6 すごく・・・かわいいかもしれない
さて、この毒舌恩知らず少女は置いといて。
さっきからの違和感を探ることにする。
家を出る前の記憶と、帰ってきた時の記憶を順番に比較していく。
玄関までさかのぼった時、ハッとする。
(何で玄関の前の通路に、踏みしめられるほどの砂が落ちてたんだ?)
疑問は仮定へ。
仮定はネネの顔をよく見た瞬間確信へ変わった。
ゆっくりネネに確認する。
「ネネ・・・・よく掃除道具入れの場所が分かったな」
そう。
家じゅうが驚くほどきれいになっていたのだ。
玄関の砂は通路に掃き出され、1粒も残っていなかった。
キッチンに置きっぱなしだった食器は、水が入れられてシンクに重ねられている。
雑誌までひとまとめにされ、テーブルも吹き上げられていた。
リビングにあった俺の服が、ズボンとかシャツとかで、分けてたたまれている。
テレビの上のホコリもないし、窓の結露の後も消えていた。
ネネのひたいと前髪が汚れで黒くなっていたから、もしかしてと思ったのだ。
こんなにきれいにしたことなかったから、違和感を感じたんだ。
・・・・・そういえば、ネネがさっきから黙ったままなんだが?
「おい」
と声をかけると、ビクッと肩をふるわせ、早口でまくしたてた。
「そ、掃除道具は家の中から探し当てたんだ!あ、あまりにも汚かったから
掃除しようと思っただけだ!ベべべ別にお前のためじゃない・・・からな!」
ネネのうつむいた顔が真っ赤になっている。
覗き込もうとするとバッと視線をそらされた。
・・・・・・・。
なんだろう。
すごく・・・かわいいかもしれない。
ネネなりのお礼なのかな。
ぎこちなく手を伸ばしてネネの頭に乗せる。
ネネがほんの少し顔を上げた。
金色の目が揺れている。
俺は手をそっと動かす。
サラサラの髪が気持ちいい。
頭を撫でてやりながら、恥ずかしいけど言葉を投げかける。
「・・・・ありがとう、ネネ」