3 少女の旅路
そうこうしているうちに俺の住むマンションが見えてきた。
「リンクリンク」
これが俺の住むマンションの名前だ。
正直センスを疑うが、もう気にならない。
出所してすぐ、大阪から引っ越してきた時はかなりビビったがな。
「ほう、なかなかのとこに住んでるんだな」
車を降りた後、ネネはじいっとマンションを見ている。
ここは3階建てで、俺は最上階の一番左の部屋に住んでいる。
東京のマンションにしては、かなりさびれたトコだが、ネネは気に入ったらしい。
ん?そういえば・・・
「おいネネ、お前、どっから来たんだ?
親戚の家ってのはさっきの場所から近いのか?」
その途端、マンションに見入っていたネネがキッと睨みつけてきた。
「なぜいう必要がある?出会ったばかりの子供にプライバシーはない、とでもいう のか!?」
いや、出会ったばかりの大人に家に連れて行けっつったお前が言うなよ。
「ネネ、これからは一緒に生活していかないといけねーんだぞ。込み入ったことは さすがに聞かねーが、その位は最低限いいだろう」
ネネはハアッとため息をつき、
「大阪だ」
・・・へ?
おいおい、おいおいおい。
さすがに遠すぎねーか?
ココ東京だぞ。
どーやってここまで来たんだよ。
何回目の疑問かしらんが、お前ほんとに6歳か!?
「なんだ。何を突っ立っている?」
唖然とする俺をネネが首をかしげて見上げる。
「い、いや、俺も大阪から来たので、な。は、ははは・・・」
その場しのぎの言い訳。
ネネは
「ずいぶん前からためていた貯金が結構な額になっていてな。
親戚の家にも愛想が尽きてきた頃だったし、電車を乗り継いでここまで来たが」
という。
「飯は?風呂は?土地に詳しくないのによくこれたな」
俺の素朴な疑問にネネは無言で答えてくれた。
全くうれしいね。
無視されたのは出所後、親せきと当時住んでた借家の大家以来だ。
う・・・やばい。
あの時の衝撃とショックがぶり返・・・。
「おい、どうした。早く家に入らせろ。」
ネネの言葉に何とか我をとり戻す。
「あ、ああ。上にあがるぞ。205室だ。」
俺たちはゆっくりと階段を上がり始めた。