2 少女の身の上話
あわてて俺も車に乗り、エンジンをかける。
「で?とりあえずお前のことを教えてくれよ。
拒否すれば家には連れて行かない。」
少女はゆったりと後部座席に座り、毅然として答えた。
「私はネネ。年は6つ。家出途中にお前に当てられ、それを脅しの道具にして
家出の手伝いをさせようとしている。」
「はあぁぁぁぁぁ!?」
何なんだよこいつは。訳が分からん。
「家出なんかするんじゃない。親が心配するぞ」
それを聞くなり突如ネネは目を見開き、うつむいた。
「私に親はいない。保険金目当ての親せきに引き取られ、こき使われている」
・・・・・・・。
それ聞かされたら無理に家に帰せねえじゃん。
ハンドルを握り、アクセルを踏む。
「?何をしている?」
「家に向かってるに決まっているだろう。ったく・・・。よし、とりあえず
契約結ぶぞ」
「けいやく?」
ネネが運転席に乗り出してきた。
あんな小難しいしゃべり方するくせに契約も知らないのかよ。
変なところで6歳児っぽいな。
「ああ。俺はお前を家で育ててやる。お前は卑怯な親戚の家に帰る必要はない。
だが、その・・・」
「事故をなかったことにしろ・・か?当たり前だ私は警察に会いたくはない。
連れ戻されるのはごめんだからな。 いいだろう。その条件で契約する」
あれ?契約の言葉の意味知らないんじゃなかったのかよ。
バックミラー越しに後ろを見ると、自分のポシェットに何かをしまっている。
本・・・か?にしてはやけに分厚いな。
タイトルは・・・・・・「明和監修国語辞典」
なるほどな。
「6歳で読むものじゃなくないか?」
ネネはポシェットをパチンと閉め、
「悪いか?親戚の家にあった、ただ1つの遊び道具だ。私はこれで言葉を覚え、
これで字を覚えた。1歳の時に親が死んで親戚の家に行ってから、誰も相手を してくれなかったのでな。」