1 異質な少女
母親は俺の車の音が聞こえていなかったらしい。
病気でも患っていたのだろうか?
警官が話しているのを聞いただけなので、詳細は分からない。
赤ん坊は孤児院で育てられることになった。
名前はアルト。
まあ、俺が知ってても意味はないんだろうけど。
俺は3年の牢屋生活を命じられた。
あーあ。
終わったな、俺の人生。
暇で退屈で何の価値もない3年を過ごし、俺は解放された。
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あれから2年。
もう事故は2度と起こしたくない。
人の人生をめちゃめちゃにしたくない。
そう思っていたのに。
人のいる気配が全くしない道路で、飛び出してきた小1位の少女。
当てちまった。
やべえ。
もう俺は命を犠牲になんかしたくないのに。
とりあえず行かなくちゃ。
車を降り、少女に駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
すると目の前で、信じられないことが起こった。
たった今俺の車にぶち当たった少女が普通に立ち上がったのだ。
その姿に、俺は思わず見入ってしまった。
この年で何やってんだよと言われそうだが、それ位美しかったのだ。
風になびく絹のような銀髪。
背中まで垂らされ、華奢な体を強調している。
金色に輝く瞳。
まだ幼いのに、刺すようなまなざし。
威圧感が半端ない。
そして、さらなる衝撃が俺を襲った。
少女が小さな口を開いた。
「とりあえずおまえの家に連れてけ。幸い、見た人はいないようだしな。」
・・・・・・。
おい、ちょっと待てよ。
何言ってんだこいつ。
たった今自分を殺しかけた相手に家に連れてけって・・・。
どういう神経だよ。
ていうかそれ以前にちょっといいか?
「おまえ、年いくつだ?しゃべり方、異常すぎないか」
少女はキッと俺をにらみつけた。
「そんなことよりさっさと車に乗せろ!人が来るといろいろ面倒なんだよ!」
そしてすたすたと俺の車に近づき、バンっと荒々しく扉を閉め、中に入ってしまった。