厳冬
寒さ厳しい冬の夜だった。彼が何もかもを失ったのは。
日付12月24日。午後9時24分。
クリスマスプレゼントの代わりに届いたのは一本の電話。
それを知ったとき、彼は思った。
―――もう、こんな世界要らないじゃないか
神様なんてやつがいるなら、間違いなく自分は嫌われている部類に入るだろう。
そして、彼は外に出た。
目を開けていられないほどの吹雪の中、彼は昇った。上へ。
上にたどり着き街を見渡すと、吹雪の中に繁華街のイルミネーションが点滅していた。
―――綺麗だな
あと少しで、この空に消えていけるのならば、それも悪くない。
そして、彼は、一歩、上から足を踏み出した。
重力で下へと突き進む身体。
落下していく中で彼は、不思議と今までの人生を思い返す。
そして、苦笑した。
―――いい思い出なんて、ほとんどない
どこで狂ったのか。自分の人生は。
考えた。簡単だった。
だが、今更どうにもなりはしない。
人生にやり直しは効かないのだ。
いや、たとえやり直せたとしても、自分には何も出来なかっただろう。
自分の無力さを嘆きながら、彼は白銀の絨毯にダイブした。