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僕のチーフは敏腕です

作者: 灯影
掲載日:2026/06/05

「では。今回の契約更新のメンバーを発表してください」


 僕はいま、とてつもない圧を、目の前の女性から受けている。


 どんなに僕が契約更新を推しても、彼女、チーフによって毎回一人は契約が打ち切られてしまうからだ。


 何としても彼らを守りたい。


 チーフはとても冷静に見極めて、僕のチームの最終決定を下すのだ。


 契約打ち切りとなった場合、チーフがより良い場所を斡旋するので、彼らにとっては出番が増えて良いことだとは思う。


 だけど、僕にとっては苦楽を共にした大切な仲間なので、情が先にたってしまうのだ。


 だがしかし!


 そんな弱気な僕も今日までで終わりだ。


 なぜならば、それを繰り返した事で、僕の手元には精鋭が揃った。


 もう負ける気がしない。


 そうだ。強気だ。


 言うんだ!


「今冬のアウターは、全部置いときます! 来年も必ず彼らは活躍します!」


「ダメ。一着着てないやつあるでしょ? 出して」


「いや、それはこれに合う下がなかったからーー」


「この前ボソッと『もう、ときめかないんだよな~』て言ってたの聞こえた」


 あれ聞かれていたのかー!!


「チーフ! チャンスを下さい!」


 ここぞとばかりに頭を下げる僕。


「却下」


 言うが早いか、彼女は僕のクローゼットからダッフルコートを取り出すと、リサイクル行きの段ボールに丁寧に詰めた。


「僕のダッフル君がー!」


「ダッフル君は、次はもーっと着てくれる人のところへ行って幸せになります」


「それを言われると……!」


 がっくりと項垂れる僕の肩をポンと叩いて彼女は言った。


「ときめくか、ときめかないか、だから」


 ……くっ! そんな良い顔で!

 僕のときめき信用してないくせに!


 あの人は、人のものに口出しはダメってテレビで言ってたじゃないか!


 心の中で叫んで、気持ちに折り合いをつける。



 こうしてまた今回の横暴な整理が終わった。


 おかげさまで、僕のクローゼットは、とてもすっきりと片付いている。


 妻という名のクローゼット部門、敏腕チーフによって。


 悔しいけれど、彼女の判断はだいたい正しい。


 だから今日も僕は、契約更新会議に挑むのだ。


 余談だが、きれいに片付いた後、ウキウキ鼻歌ステップ混じりの妻を見て、可愛いなと未だにときめいている事は悔しいから内緒にしてる。

 

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