僕のチーフは敏腕です
「では。今回の契約更新のメンバーを発表してください」
僕はいま、とてつもない圧を、目の前の女性から受けている。
どんなに僕が契約更新を推しても、彼女、チーフによって毎回一人は契約が打ち切られてしまうからだ。
何としても彼らを守りたい。
チーフはとても冷静に見極めて、僕のチームの最終決定を下すのだ。
契約打ち切りとなった場合、チーフがより良い場所を斡旋するので、彼らにとっては出番が増えて良いことだとは思う。
だけど、僕にとっては苦楽を共にした大切な仲間なので、情が先にたってしまうのだ。
だがしかし!
そんな弱気な僕も今日までで終わりだ。
なぜならば、それを繰り返した事で、僕の手元には精鋭が揃った。
もう負ける気がしない。
そうだ。強気だ。
言うんだ!
「今冬のアウターは、全部置いときます! 来年も必ず彼らは活躍します!」
「ダメ。一着着てないやつあるでしょ? 出して」
「いや、それはこれに合う下がなかったからーー」
「この前ボソッと『もう、ときめかないんだよな~』て言ってたの聞こえた」
あれ聞かれていたのかー!!
「チーフ! チャンスを下さい!」
ここぞとばかりに頭を下げる僕。
「却下」
言うが早いか、彼女は僕のクローゼットからダッフルコートを取り出すと、リサイクル行きの段ボールに丁寧に詰めた。
「僕のダッフル君がー!」
「ダッフル君は、次はもーっと着てくれる人のところへ行って幸せになります」
「それを言われると……!」
がっくりと項垂れる僕の肩をポンと叩いて彼女は言った。
「ときめくか、ときめかないか、だから」
……くっ! そんな良い顔で!
僕のときめき信用してないくせに!
あの人は、人のものに口出しはダメってテレビで言ってたじゃないか!
心の中で叫んで、気持ちに折り合いをつける。
こうしてまた今回の横暴な整理が終わった。
おかげさまで、僕のクローゼットは、とてもすっきりと片付いている。
妻という名のクローゼット部門、敏腕チーフによって。
悔しいけれど、彼女の判断はだいたい正しい。
だから今日も僕は、契約更新会議に挑むのだ。
余談だが、きれいに片付いた後、ウキウキ鼻歌ステップ混じりの妻を見て、可愛いなと未だにときめいている事は悔しいから内緒にしてる。




