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日記

4つ目

作者: セイ
掲載日:2026/05/02

声を上げない人間の不幸は見逃される。


私は、何度もそれを見てきた。


人がいる世界ばかりではなかったが、人がいるなら、それは当然のことだった。


辛いと叫べたやつから、救われていった。


不満を持てたやつから、救われていった。


そういうものなんだと、思う。


伝わらなければ意味がないというのは、当然であるから。


でも。


私は、みんなを救いたかった。


だから、頑張ったんだ。


どれぐらいだったかは憶えいないが、たしか、国ぐらいなら、全力でやれば滅ぼせるようになっていた頃だと思う。


そこで私は、私腹を肥やす偉いやつらを見た。


そこで私は、今を生きようともがいている人を見た。


助けるのは簡単だった。


でもそれは、続かないと思った。


正攻法でやるしかないと思った。


まず、一時しのぎとして、食料を与えた。


私がなんでもできるとバレたらいけないから、そこらへんの野生動物を取っていった。


私ありきでは、堕落して終わってしまう。


それは、私の望むところじゃない。


そして、彼らがいかに不幸であるかを解いた。


大袈裟だが、ただ、立場を持っている人間がしていることを知らせただけだ。


彼らはそれを、静かに聞いていた。


感情は揺れているようだった。


でも、今を変えようとはしなかった。


今に、満足しているらしい。


私は、あぁそうかと。


それっきり、あきらめた。


私がやっても意味がないから。


彼らが満足なら、なんの問題もないのだから。


その頃の私は、あてもなく彷徨うのが趣味だった。


運悪く連れていかれるのは4度目ぐらいだったから、まだ、新鮮さが残っていたんだろう。


それから時間が経って。


状況は変わらなかった。


でも、たまに、そこに寄った私を、彼らが頼るようになった。


必要とされるのは気分がいいけど、色々と理由をつけて断っていた。


私が私の力が嫌いだったのも、一つの理由かもしれない。


そんなことを続けていたら、いつの間にか私は、目の敵にされていた。


力があるのにそれを使わず、助けることができる人を、助けないからだとか。


私がいろいろなことができるというのは、いつ伝わったのか。


ただの憶測だったのかも、私にはわからない。


私は、もちろん弁明した。


「今に満足していると言ったのは、あなたたちじゃないですか」


「そうだ。でも、できるのにやらないのは、違う」


「そもそも、なぜ、僕ならできると?それは、どこからの情報なんですか?」


「知らん。だが、お前は上の事情を知っていた。どうせ、貧しい暮らしをしている俺らを笑いに来た、お貴族様なんだろ」


「違います」


「口ではなんとでも言える」


何を言いたいのか、当時の私にはよくわからなかった。


でも、いまならわかる。


彼らは、対価を無しに、利益だけを得たかったんだ。


ついでに、現状が辛い理由を私に向けた。


上が腐っていると思ったら、下も腐っていた。


今ならわかる。


でも、当時の私は、馬鹿だった。


彼らに叱責されても、彼らを救いたかった。


私は馬鹿正直に、城へ出向いた。


それで、とにかく、まず話をした。


話の内容は、憶えていない。


それほど、私にとってはショックな内容だったんだと思う。


気がついたときには、赤い液体が部屋に飛び散っていた。


それ以外は、部屋になかった。


それが、初めてだったろうか。


殺したのは。


どうしようもなかった私は、力で統治をした。


本当に、本当に、そんな立場になりたくはなかったけど、そうするしかなかった。


もちろん、上手く行くわけがなかった。


そりゃそうだ。


なにも知らないんだから。


それに。


そのときはずっと、人を殺したという事実が、私に、耐えがたいほど重くのし掛かっていた。


正直、それ以外考えられなかった。


そんな、領主としてあたふた頑張っていたころ。


突如として、軍が攻めてきた。


理由は、憶えていない。


頭が真っ白になったことだけは憶えている。


平野に当たり前のように転がる死体が、私の意識を戻した。


おそらく、私が、それらをやったんだろう。


周りを見ても、淀んだ空気だけがあった。


私は、膝から崩れて。


ただ、涙を流しながら。


口から溢れるなにかを、垂れ流していた。


「あぁ、違う。僕は、こんなことがしたかったんじゃない。こんなこと、こんなこと、少しも望んじゃいなかった。あぁ、なぜ殺した?なぜ?なぜ?」


今も、理由はわかっていない。


それから、城に戻った。


報告が伝わっていたのか、皆、私を英雄だと称えた。


私は、領地を更地にした。


もう、おかしくなっていた。


最初からやり直そう、なんて思って、私はそうしたんだ。


今でもびっくりするほど、そのときの力は凄まじかった。


真っ白になんて、もうもどれやしないのに。


確か、それで、その世界での生活は終わりを告げた。


私に、一生落ちない色が着いた世界だった。

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