第3話【子分ども】
第3話【子分ども】
「出てこい!」
マサオがヒレを振り上げる。
ヒョコ。
ヒョコ。
小さな影が、ゆっくり現れる。
「・・・」
「・・・え、何これ」
ヒヨコが2羽。
「かわいい・・・」
思わず声が漏れる。
「戦力だ」
「ピョ」
「戦力に、なるの?」
「ならねぇ」
「ならないんだ」
即答だった。
ヒヨコたちはマサオの周りをちょこちょこ歩いている。
完全に懐いている。
「お前、育てたのか?」
「当たり前だろ」
少し間。
「・・・どうやって」
マサオはそっぽを向く。
「・・・色々だ」
その一言で終わらせようとした。
でも。
ヒヨコがマサオのヒレに頭を擦りつける。
「ピヨ」
「・・・甘えるな」
言いながら。
払いのけない。
(あぁ、こいつ)
(優しいやつだ)
そう思った瞬間。
「お前は無視だ!!」
「なんで!?」
急に背を向けられた。
「こいつらは俺の子分だ!」
「うん」
「勝手に懐くな!」
「いやもう懐いてるよ」
ヒヨコが僕の足元に来ていた。
ちょこちょこ。
「ピヨ」
「・・・」
しゃがむ。
指を出す。
つん、とつつかれる。
「・・・かわいい」
「触んな!!」
マサオがキレた。
理不尽すぎる。
「ピヨ」「ピヨ」
ヒヨコ達がマサオの周りをぐるぐる歩き始めた。
「マジかよ。今かよ」
マサオは奥から蓋つきバケツを持ってきた。
ヒヨコ達は爛々とした目でバケツをつつく。
蓋を開ける。
マサオは顔をしかめる。
震えていた。
「・・・ヒィ」
悲鳴みたいな声が微かに聞こえる。
バケツにヒレを入れる。
その手元には—―ミミズ。
ブルブルしながら、それをヒヨコの前に置いた。
「はぁはぁ・・・食え」
「ピヨ」
ヒヨコがつつく。
マサオは顔を背けた。
「うう、気持ち悪い・・・」
でも、その場から離れない。
(虫、ダメなんじゃなかったのかよ)
ヒヨコがマサオに寄る。
くっつく。
マサオは、バケツに蓋をした。
蓋に汚い字で紙が貼られていた。
封印。
「・・・マサオ」
(めっちゃ頑張ってるじゃん)
「お前、何見てんだよ!!」
「見せもんじゃねぇぞ!!」
理不尽だった。
でも。
この空間は、少しだけ温かかった。
ほんの少し。
胸の奥の、冷たい何かが――
溶けた気がした。




