第17話【残り300日:ターゲット校長先生】
第17話【残り300日:ターゲット校長先生】
「おい!ついに最強のターゲットを見つけたぞ!」
「・・・え、それ、校長先生じゃない?」
「いいか!組織を乗っ取るなら、狙うはトップの首。これが戦術の基本だぁ!」
秘密基地。
ホワイトボードに、学校パンフレットの一部を貼る。
校長先生の顔写真に、赤ペンで大きく丸印をつけた。
「校長先生を乗っ取ってどうするんだよ」
「決まってるだろ!まずは、俺を人間と思うように校則を変える!!」
「う、うん」
「全校生徒が、俺を『人間だ』と思い込めば、パラダイムシフトで、俺は人間になる!!」
「・・・バカなの?」
言葉を失っていると、マサオはいつもの調子でヒレを振り上げた。
「行くぞ、子分ども!校長室へ突撃だぁ!」
ターゲット――校長先生 大河原(55歳)
校長室のドアの前。
僕は冷や汗をかきながら周囲を警戒する。
「・・・ねぇ、本当にやるの?」
「フッ、見てろよ。俺の渾身の媚びを!!」
マサオはドアの隙間から、ペタリと潜入した。
中では、校長先生が、難しそうな顔で書類を読んでいた。
ヒヨコたちがデスクの下でピヨピヨ鳴いてアピール。
校長先生がメガネを上げて、デスク下を見る。
その隙に、マサオはデスクの上に飛び乗る。
マサオいわく、一番可愛い角度。
首を30度傾けて待機。
「おや・・・こんなところに、ペンギンかね?」
潤んだ瞳で校長を見つめる。
目が合う。成立!
だが、瞬く間に戻ってきた。
「・・・うぐぐ、重いぃ!!あの不良の比じゃねぇ・・・!!」
「マサオ、大丈夫か!?」
「責任、重すぎるわあぁぁ!!耐えられるかあぁぁ!!」
校長室の床でゴロンゴロン転がっていた。
「こいつ、『全校生徒、約500人の名前と顔を覚える努力』さらに、『PTAや保護者からの懸念対応』が何重にも積み重なってるぞ!!しかも、奥さんがいるのに『お昼はコンビニ弁当の悲しみ』辛過ぎるだろぉ!!」
「校長先生、苦労されてるんだな・・・」
「・・・いけない、ボーッとしていた」
意識がはっきりした校長先生は、足元に転がっているマサオと僕を見て、優しく微笑んだ。
「おや、神奈月くん。そのペンギンは君の友達かな?」
「は、はい」
「大切にしなさい。命あるものは、いつか必ずお別れが来る。だから、今を全力で愛でるんだよ」
校長先生は机の引き出しから、古い犬と娘の写真を出した。
愛おしそうに眺めていた。
「・・・帰るぞ」
マサオは珍しく申し訳なさそうに、秘密の通路へ帰っていく。
そして。
秘密基地でくつろぐ。
「マサオ。校長先生、良い人だったね」
「・・・フンッ。無理しすぎなんだよ。あんなに責任、背負い込んで」
「乗っ取りなんて、やってらんねぇよ!」
また、日めくりカレンダーを見ていた。
――残り300日
(こいつ、なんであんな顔してるんだ)




