第16話【残り303日:恋の架け橋(物理)】
第16話【残り303日:恋の架け橋(物理)】
7月7日
「おい、大変だ!!」
「何くわえてるの?」
マサオはクチバシで、桃色の手紙をくわえていた。
秘密基地内をペタペタと興奮した様子で走り回る。
「俺が朝一パトロールで発見した!」
「なにそれ」
「お前の下駄箱に入っていた“宣戦布告”だぁぁあ!!」
マサオは大真面目な顔で、手紙をテーブルの上に置いた。
どう見ても女子の字だ。
「・・・開けるの怖いな」
「次のターゲットが決まった!」
「そういえば差出人は」
「図書室の主だ」
ターゲット――白瀬みどりさん
大人しくて、よく図書室にいる綺麗な女の子だ。
「これは恋文という宣戦布告だぁ!」
「恋文!?・・・白瀬さんが、僕に?・・・ありえない」
マサオはヒレを僕の肩に、ポンと置いた。
「俺がこの女子を乗っ取った後もお前の隣にいてやるよ」
「・・・それは遠慮しとくよ」
「チャンスを掴めぇ!行くぞぉ!!」
―――
昼休みの中庭。
手紙の差出人である白瀬さんが、一人で本を読んでいた。
「(よし行け、子分1号!告白は勢いだ。相手に考える暇を与えるな。困惑してる間に畳みかけろ!)」
「(何言ってんだよ!)」
「(早くしろ、『好きだ!』と叫んで、バックハグだ!)」
「(それ完全に捕まるやつ!)」
僕が震えていると、マサオは痺れを切らした。
「(ったく、使えねぇ子分だ!・・・俺の背中を見ておけぇ!)」
マサオは地面を蹴って高く飛び上がる。
白瀬さんの目前に着地。
ヒヨコたちがどこで拾ってきたのか、花びらをまき散らす。
「ガァァァーーッ!!(好きだぁぁ!!)」
叫びながら白瀬さんに突進。体当たりをかます。
「え?ペンギン?・・・きゃあぁぁ!!」
白瀬さんはマサオの勢いに、ただ圧倒されていた。
そのまま白瀬さんの目をじっと見つめる。
なぜか乗っ取り成功。
(・・・すごいよ白瀬さん)
数秒、双方停止。
僕はマサオの体を持ち上げた。
「うわあぁぁあ!!」
腕の中で、マサオが身悶えた。
「こいつ、文章がポエムになる黒歴史を現在も爆走中。毎晩、寝る前に悶え苦しんでいるぞ!!」
「そうなんだ」
「しかもそれ恋文じゃないぞ。お前の読んでる本が好きというポエムだ。ぐぉぉ恥ずかし苦しぃぃ!!」
「・・・ハッ!私は何を・・・」
正気に戻った白瀬さんは、僕が持っている手紙を見て、顔を真っ赤にした。
「・・・神奈月くん。その手紙・・・もう読んだ?」
「え・・・まだ、だけど」
白瀬さんは胸元で手を握ったり開いたりした。
そして、逃げるように中庭から去っていった。
――
秘密基地。
僕は、白瀬さんの手紙を読んだ。
少し拙いながらも真っすぐな言葉。
僕が読んでる本の感想と、少しだけ僕が気になる。
という内容が書かれていた。
「マサオ。白瀬さん、ポエムじゃなかったよ。・・・普通に、嬉しかった」
「良かったじゃねぇか!」
マサオは、日めくりカレンダーをじっと見つめていた。
――残り303日




