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15年前。
国王ダブラは、焦っていた。第一皇子エルは、明らかな強スキルを持っているが、戦闘向きではない。この国の王は代々、先代の王と一対一で戦い、打ち勝つまで、王位を継承できない。しかし、エルは自分に打ち勝てるような実力を身に着けるとは思えない。もうすぐ生まれる「二人目」が頼りだった。
「国王様!王妃様が…」
「ついにこの時か。」
「女か、まぁいい。そいつのスキルを確認しろ。」
王宮で唯一、情報開示スキルが上級のスキル鑑定士に赤子を見させる。
「なんだこれ…今までに見たことがないぞ…」
【固有スキル・???(最下級) 効果:レベル上限が1になる】
「この子、レベル上限が1と…」
レベル上限が1?
「ふざけるな!なんだと!」
それで私に打ち勝てるわけがないだろう!!!怒り狂ったダブラは赤子を抱え、三階の窓から投げた。
「あなた、何を…」
「あのようなゴミは我が王家には要らぬ!!!」
その光景を見ていたエルは、王宮から逃げ出した。
二人の子を一度に失った王妃は衰弱していき、ついには命を落とした。
ダブラは後悔した。しかしもう遅い。王家の血筋は途絶え、滅亡へのカウントダウンが始まった。
現在…
「Lv1?まさか…」
あの時捨てた赤子か?いや、Lv1なんて他にいるはずがない。
「その者達は今どこに?」
「中央街の方に向かっていきましたが…」
「分かった。すぐ中央街へ向かうぞ。」
「えっ、国王様が…?」
プツッ…
中央街から家に帰る途中、ルードは違和感に気が付いた。
(なんか、誰かにつけられてるな?)
隣のハピを見る。アイコンタクトをとってみる。彼女も気づいている様子だ。
(変なのに目をつけられたのか?まぁ、向こうから攻撃してきたら反撃するまでだが)
…
2時間歩いたところで、異変に気付いた。
「囲まれたか」
「バレてるから、出てきたらどう?」
「貴女を連れて来いと、国王様に言われているのです。」
「え、私?」
(国王?あの、ハピを捨てたって奴か?)
「おい、今更コイツに関る必要はないだろ、だいたい、そっちが悪いはずだろ。」
「やはり、本人か」
「国王様!」
「と言う訳でな。お前には私と闘って国を継いでもらいたい。」
「いや、赤子を捨てておいて、その赤子にそのお願い?通ると思っているの?」
「こんな奴ら放っておいて、帰ろうぜ。」
「無駄だ。この周囲に結界を張っておいた。」
「…用意周到だな」
「そう、やるしかないのね?」
ガン!
【急所に攻撃が入ったため、状態異常・失神が付与されます。】
「!?…ハピ、何を…」
ルードは意識を失った。
「一対一をお望みなんでしょう?望み通り、一人で戦ってあげる。」
「そうだ。だが、私に簡単に勝てると思うなよ?本気で戦うしきたりだからな。」
「では、こちらから行くぞ!」
【ダブラはTPを100消費し、ブリザードストームを放った!】
「その攻撃は無駄だよ。一番見慣れてるからね」
【0hit!】
【ハピにダメージを与えられなかった!】
「じゃあ、私も小手調べと行きますか。」
【ハピはTPを5消費し、炎剣生成を使った!】
「ちょっとTPの消費が痛いなぁ」
【ハピはTPを20消費し、炎竜斬を放った!】
【ダブラは咄嗟に防御態勢に入った!※ダメージが20%軽減されます】
【ダブラに8602ダメージ! 5398/14000】
「ぐっ…」
「どう?あと一撃で終わりだけど」
「…すまない、お前を一度殺しておいて、もう一度手にかけることなど私には出来なかった…しかし、お前がそこまで強いとも思わなかった。最期に、私の奥義を見てくれないか」
「いいでしょう、全力で来てよね」
(最後…最期?)
「覇王憑依!」
【ダブラは覇王憑依を使った!】
【全能力値が5分間10倍になります】
【5分間持続自傷ダメージを受けます】
「国王様!?」
「自傷ダメージ…まさか」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 4898/14000】
「私の負けはすでに決まっている…あとはお前に王の資質があるか見極めるのみ!」
【ダブラの煉獄火炎!】
【ハピはTPを2消費し、ファイアを放った!】
【二つの攻撃が相殺されます】
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 4398/14000】
「これを受け止めるか!ならば次はどうだ!」
【ダブラの明鏡流水!】
「水属性は火属性じゃ打ち消せない…!」
【ハピはTPを7消費し、サンダーを放った!】
【サンダーにより、明鏡流水の効果が消滅します】
【ダブラに1203ダメージ! 3195/14000】
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 2695/14000】
「国王様がここで死んだらこの国は滅亡ですぞ!?」
「どうせ私の寿命が尽きたら滅びる国だ、最後の希望に託すのだ!」
「勝手に最後の希望にしないで!」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 2195/14000】
「次が最後だ!行くぞ!」
【ダブラは王の威光を放った!】
【ハピは咄嗟に防御態勢に入った!※ダメージが20%軽減されます】
【13hit!】
【ハピに13ダメージ! 67/80】
【王の威光を耐えきった事により、スキル・王の資質 が発現します】
「え?」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 1695/14000】
「そのスキルは我が王家に代々受け継がれてきた力だ…」
【スキル・王の資質(最下級) 効果:任意で、王のオーラを発生させ、強く受けた者は圧倒されます】
「まぁなかなかいいスキルなんじゃない、これは。」
「これで私の役目は終わった。あとは、お前次第だ。国を亡ぼすも、再興させるも、全てはお前の自由だ。」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 1195/14000】
「私も王の責務からやっと解放されると言う訳だ、ハハハ…」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 695/14000】
「ああ、最期に一つだけ心残りがあってな。聞いてくれるか?」
「まぁもうあんたを助ける道は残ってないからね、聞いてあげるよ」
「お前の兄、エルを見つけて、私からの謝罪を伝言してくれないか?」
「兄?私には兄がいたのね」
「エルはお前が死んだと思い、王宮から逃げ出して消息を絶った…全て私の責任だ。本当は自分で見つけ出して謝りたかったが、」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた! 195/14000】
「どこを探してもあいつは居なかった…。」
「そう、覚えておくよ。」
【ダブラは500の自傷ダメージを受けた!0/14000】
「見てたぞ」
【スキル・状態異常耐性(中級)】により、すぐに意識を取り戻していたルードは、ハピに話しかけた。
「これから、お前はどうするんだ?」
「王、やってみてもいいかなって」
「本気か?お前は親から酷い仕打ちを…」
「あんな親のことは正直どうでもよくて、でも、この国の民を見捨てるわけにはいかないから…」
「そうか、僕にはもう届かない境地に行ってしまうのか、ハピは。」
「何を言ってるの?私に届く実力の奴なんてルードくらいしかまだ見たことないよ」
「一撃で気絶させといてよく言うよ…」
「私がどんな立場になっても、あんたは私から離れさす気はないから。」
「あー、それは嬉しいけど言い方が怖いよ」
数日後、死んだダブラに代わってハピは王座に就いた。側近にはルードを置き、そして参謀には…
「全く、わしを参謀に置くとは一体どうなってるんじゃ、お前の頭は。」
「大賢者様は人の数倍人生経験があるでしょ」
「可愛い弟子の頼みじゃ、断れなかったが、本来わしは攻撃隊長あたりの仕事が向いているんじゃ、参謀とは…」
「大賢者様、意外と脳筋だからなぁ」
「でも私たちもいざとなったら前線で戦うつもりだし、大賢者様も前線に出たっていいんだよ」
「久々に最大出力で魔法を放つ時が来るかもしれないんじゃな、ハハハ」
「大賢者様が最大出力で魔法撃ったら町一つや二つくらい簡単に崩壊しちゃいそうだから極力控えてください…。」




