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「東…つまり、イエロー神聖国から何者かが侵入した形跡があった。ムーンライト、調査をお願いできるか?」
「侵入者の数は?」
「全部で三人と思われる。」
「分かりました、じゃあ探しますね…」
「どうやって探しているんだ?」
「【探知】を使い、国中の生命反応を昨日の記憶と照合して、差異を見つけるんです。夜間は普通の人間は国境を渡ってこないですからね。」
「成程…離れ業だな、やっぱりムーンライトと契約しておいてよかったとつくづく思うよ。」
「それは有難いお言葉です、マスター。あ、見つかりましたよ。」
「どこだ?」
「一人は西の方、丁度ストライクギルド本部のあたり。もう一人は北の国境近くに居ます。最後の一人は…えっ」
「どうした?」
「すぐ傍です、王宮内、ハピさんの部屋のあたり…」
「本気か!?」
二人はすぐにハピの部屋に向かった。
「おい、この辺に…って、なんだこれは?」
「あー、おはようルード。」
「侵入者です。夜中に屋根裏から侵入しようとしてきましたが、俺とマリーさんで対処しました。」
「えーと、なんでこんな草の塊みたいになっているんだ?」
「さっき、ちょっと抵抗してきたから、【捕縛の蔓】を4重にかけておいたわ。流石にもう逃げられないはず。」
「なんというか、こいつも不幸だったな…。寝込みを襲う予定だったんだろうが、そもそもマリーがいるし、タロウまでいたら万に一つも勝ち目はなかっただろう…。」
「マスター、残り二人も捕まえましょう!」
「アレックスさん、居ますか?」
「ああ、タロウ君。何か用ですか?」
「ここにさっき、見慣れない人が来ませんでした?」
「ああ、その人ならそこに居るよ。うちの冒険者じゃないけど、彼は何者なんだい?」
「分かりません、でもイエローから不法に侵入して来たようです。」
「不法に?それって…」
【ベータはTPを960消費し、一閃を放った!】
【タロウは寸前で回避した!】
「速度で俺に敵うとでも?」
「ちっ、しくじったか…」
「ちょっと、手荒な方法になるけど…捕まえさせてもらう!」
【タロウはTPを2500消費し、マリオネットを唱えた!】
【対象を、効力解除までコントロールします】
「なっ、体が勝手に…」
「取り敢えず、俺はコイツを連れて王宮に戻りますね。アレックスさんも気を付けて」
「ゼータの奴、遅すぎる…もうそろそろ正午だぞ?」
「そのお仲間さんはこいつかい?」
「!!」
「まさかとは思ったが、グリーンにも刺客を送っていたとはな。何人送ったのかは知らんが、向こうのエルフと伝手があるのでな、あいつらに捜索するよう進言しておいた。何人いようが無駄じゃよ。」
「ゼータが負けたのか…?」
(それでは、万に一つも私の勝ち目はない…ここは…逃げるべきか)
「くっ…最終手段だ!」
【ガンマは転移石を使用した!】
【マーリンはTPを20消費し、クラッシュを放った!】
【転移石の効果をキャンセルしました】
「何!?」
「わしの前でアイテムを使うとは…わしが【破壊神】と呼ばれた所以を知らんのか。」
「あの【破壊神】!?くそ、そんな奴相手にできるわけがないだろ!」
「おっと、逃がさんぞ?」
【マーリンはTPを50消費し、マジカル・バインドを唱えた!】
「うわぁ!」
【マーリンはTPを30消費し、パラライズを唱えた!】
【ガンマは状態異常・麻痺を受けた!】
「くっ、動けな…」
「わしらの戦力を見誤っていたようじゃな。お主等に負ける程わしも耄碌してはおらんし、あいつらもそう簡単には倒せんよ。」
「くそ、なんでエルフがここに…」
「丁度、首相さんに危機を知らせに来たところでした。そう、貴方達のことですよ。」
「何で、作戦が筒抜けなんだ!?デルタとゼータは何をやっているんだ!」
「そのどちらかは知りませんが、一人は里の近くで女王様が捕獲済みですよ。」
「…くそ、プランBで行くぞ…」
【イプシロンはTPを898消費し、エクスプロージョンを放った!】
「建物ごと爆破する気ですか。まぁ、させませんけどね。」
【ルイスはTPを200消費し、イレースを唱えた!】
【イレースにより、エクスプロージョンの効果が消滅します】
「打ち消された…?」
「私の手にかかれば貴方の行動全てを打ち消すことなど容易いですが、どうですか?まだやりますか?」
「…くそ。ここまでか…。」
「潔いですね。まぁ、それが賢明です。」
【ルイスはTPを30000消費し、エターナル・ロックを唱えた!】
【イプシロンは状態異常・行動不能を受けた! 効果時間:1日】
「で、結局6人の侵入者がブルーとグリーンに潜伏していたと。」
「こいつら、どう料理してあげる?」
「とりあえず牢獄に入れておくか…。生半可な警備だと脱出されそうな気もするが。」
「私の【捕縛の蔓】と【封魔草】で封印しておけば、脱出は出来ないと思うわ。」
「本当か?」
「ルードさんも今朝のアレを見たでしょう…あの状態にされたら俺でも逃げられないと思いますよ?」
「確かに…じゃあ、それで行こう。」
「で?イエローに乗り込む気でしょう?」
「そうだな…本当は今すぐにでも問いただしに行きたいところだが…」
「何か問題でも?」
「ああほら、そこに怪我人がいるだろう?勿論、その怪我人は手負いでもそう簡単には倒れないのは重々承知しているが…敵の戦力が計り知れないからな…」
「まぁ、私も分かってはいるよ。この状態で前衛は務められないことは。」
「?やけに素直だな、今回は。」
「私も何か出来ないかなと思ってね、色々考えたんだ。で、一つ出来そうなことが見つかったの。」
【スキル・感覚共有(最上級) 効果:任意の相手に視覚・聴覚・触覚を共有できる。また、任意の相手の視覚・聴覚・触覚を体験できる】
「実は、マリーと契約した時に副次的効果で【感覚共有】が最上級まで引きあがって…。これを活かせばかなりの戦力になると思ったの。」
「そう、司令塔ね。このスキルは一度会った相手なら誰にでも使えるから、皆の視界を借りて、指示を出したり出来るというわけ。聴覚を共有すれば、私達からの指示も聞こえるでしょう?」
「成程、考えたな。ということは、ハピはここに残るのか。」
「そういうことになるでしょうね。本当は一日でも早く先陣を切って突っ込みたいところではあるんだけれど、流石に片腕の今じゃあ、ねぇ。」
「普段でもあまり先陣を切っては欲しくないけどな…。」
「まぁこの場合の問題は、駒の数だと思う。一人の視界からの情報じゃ、指示を出そうにも意味がないからね。」
「かといって多数で行っても警戒され、動きが鈍くなるだけだろう。」
「とりあえず、ルードさんとムーンライト君は行ってくれるでしょう?もう一人二人くらい欲しいけど…」
「俺も行っていいですか?レッドからの代表として…」
「タロウ君、いいの?それだと今の依頼を放棄したとみなされて報酬が受け取れなくなっちゃうかもしれないけど…」
「はい、そもそも俺は報酬の為にここへ来たわけじゃないですからね!」
「まぁ報酬の件は私からアレックスさんに言っておくから心配しなくてもいいよ。」
「それで、あともう一人くらい欲しいところだが…大賢者様は一応、防衛に当たって欲しいし…」
「グリーンの代表として私が行くのがいいでしょうか?」
「いや、それなら私が行ってもいいかしら?」
「女王様?何故、また…」
「グリーンの代表としては適任でしょう?里に攻撃を仕掛けられたからという口実もあるわ。それに、何か嫌な予感がするの。今まで他の国に関心を示さなかったイエローが急に攻撃を仕掛けてくるなんて、おかしい。」
「それは確かにそうですね…」
「だから、里に危機が及ぶ前に調べておきたいと思ったの。直々にね。」
「ローズさんが行ってくれるなら千人力ですけど…本当にいいんですか?」
「勿論。ここは協力する場面でしょう?」
「なら、決まりだな。それで、どう動くかだが…」
「今日はもう遅いです。また明日、考えましょう。」
「そうね、今日は解散!」
「あ、ルイスさんとローズさん、部屋は余っているので貸しますよ?この時間から帰るって言うなら転移魔法で送り届けますが…」
「明日また来る方が大変ですね。泊まらせて頂きます。女王様は?」
「マリーと話がしたいわ。私もここに留まる。」
「あら、そう?タロウ君ともうちょっとお話しようかと思っていたんだけど…また今度の機会にしておくわ。」
「俺の護衛はじゃあ、不要ですかね。今日は完全に睡眠不足だったので、今から少し寝させて貰います…。」




