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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼


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第5話 魔王軍将軍ブルームト

 サラは今日も質素な朝食を食べていた。


「店長……時給は我慢するにしても、せめて朝食は何とかなりませんか?

 もっとおいしいご飯だったら、私もっと頑張れるのになぁ……」


 パウラは鼻で笑った。


「馬鹿だねぇ、これはあえてだよ。うちの人気鑑定士が太ってしまわないように私が管理してあげてるんだよ。ありがたく思いな!」


「でも、店長……パンと牛乳だけじゃ、成人女性に必要な栄養素が足りてませんよ…… お肌とか荒れちゃうよ……」


「でも、現に肌荒れしてないだろ? お前さんが仕事中に客に食わせてもらってること位、こっちはお見通しなんだよ。せいぜいたんまり貢がせることだね」


 クソババめ…… 見てろよ、1年で貯金して、絶対に独立してやる……









 今日は運のいいことに雨だった。雨が降ると少しだけ客足が遠のくので、サラは雨が好きだった。


 しかし今日も開店前から並んでいる客がいるようで、店長は開店時間を早めて営業を開始した。





「一人目の方、どうぞ」

 

 サラは気怠げに一人目の客を呼んだ。

 入ってきた男は昨日アルマの店で会った男だった。


 確か、ブルームトとかいう名前の人狼……


 サラは内心動転していたが、悟られないように平静を装った。


 ブルームトも鑑定室に入るなり、ビクッとして驚いているようだ。心なしか顔が少し赤い。


「何故あなたがここにいるんだ……」


 ブルームトの第一声にサラはかなり驚いたが、何とか堪えた。


「何のことを仰っているのか分かりません」


「昨日、定食屋で会っただろ」


 どうやら、ブルームトには昨日のサラと今日の鑑定士が同一人物だということがバレているらしい。


 今まで、店の外で客とすれ違ったことはあったが、一度もバレたことは無かったのでサラはどうしてバレてしまったのか分からない。


「ひとまず、座って。 どうして分かったの?」


 ブルームトは座りながら答えた。


「匂いが一緒だから」


「匂い? あぁ……【嗅ぎ分け】のスキルを使っているのね」


 サラがスキルを言い当てたので、ブルームトは腰の剣に手を当てた。


「あなたは、見ただけでスキルが分かるのか!? 俺のことを何処まで分かっている」


 サラは溜息をついた。この客は間違いなく面倒臭い客だ。


「お客様、落ち着いて。私はあなたがどんな種族かも分かるし、どんな職業なのかも分かっているけど、鑑定士は鑑定内容は他には漏らさない。店内の説明書きにも書かれていたはず。不満なら、もう帰って」


 サラは強気の姿勢を崩さずにブルームトを睨んだ。


 ブルームトは少し落ち着きを取り戻したのか、剣から手を離した。


「すまなかった…… 念押ししておくが、俺の素性は絶対誰にも言わないで欲しい。絶対にだ。話が漏れたことが分かったら、俺はあなたを殺さなければならない」


「分かった。肝に銘じておくわ」


「もう分かっているようだが、俺は人狼で魔王軍の将軍の一人だ。少し悩んでいることがあって相談に来たんだ」


 サラは頷きながら話を聞いた。


「俺は人狼が多く所属する軍を束ねているんだが、どうも向いていない気がするんだ……」


「あぁ……確かに向いてないみたいね。部下を指導しきれないんじゃない?」


 サラの鑑定にブルームトが驚いた。


「そうなんだよ! あんまり強く言うと悪いかなって思ってしまって…… 部下が完全に俺の事をなめてるんだ……」


 サラはもう一度ブルームトのステータスの一部を見返した。


 名前︰ブルームト

 種族︰人狼

 職業︰魔王軍将軍

 称号︰縁の下の力持ち

 取得スキル︰【氷魔法】【ソードマスター】【気配察知】【気配遮断】【聞き耳】【嗅ぎ分け】

 潜在能力︰【幻影】【魅了】

 長所︰誰にでも優しく好かれやすい性格

 短所︰下のものになめられる

 


「あなたは、魔王には気に入られてるんじゃない?」


「そんなことまで分かるのか?」


「これは感よ。でも、その様子じゃ当たってたみたいね。あなたは年上や目上からは可愛がられるけど、下のものを御せるタイプではないわ。戦闘系のステータスも高いし、腕は確かなのかもしれないけど、将軍はそれだけでは勤まらないんじゃない?」


 ブルームトは頭を抱えた。


「すごく当たってる……」


 サラはブルームトが少しだけ気の毒になった。


「こんな人間の街にまで来て相談するくらいなんだから、よっぽど辛かったのね……」


 ブルームトは、はっとした顔をしてサラを見た。そして、ぽろぽろと涙を流しだしたので、サラは慌てた。


「どうしたの?」


「すまない…… そっか……俺は辛かったんだなって思ったら、つい……」


 ブルームトは自分の手でグイっと涙を拭った。


「そんなに辛いなら、辞めなさい。あなたがそんなに無理してやらなくてもいいと私は思う。あなたには才能があるから、大丈夫。あなたにあった仕事をしなさい。

 あなたは真面目で優しいから、少し他の人の事を考え過ぎて疲れてしまうみたいだね。一人でできる仕事を探しなさい」


 ブルームトはまた泣いた。


「ありがとう………ずっと悩んでいたけど、決心がついたよ……」


 ブルームトはそう言うと鑑定室を出ていった。



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