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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼
雪残る

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第3話 銀灰色の犬

 サラは犬を自分の部屋のバスルームに入れた。

 サラ付きのメイドが「サラ様! そのような事は私がやります!」と申し出てくれたが断った。だって楽しそうだからね。


 サラは着ていた服が汚れてはいけないと思い、服を脱いだ。

 灰色の犬は何故か伏せをして、前足で目を隠していた。


「あははは! さてはシャンプーが怖いんだね! 大丈夫だよ。目に入らないようにするからね」


 サラは久しぶりに楽しさを感じていた。ベランジェ領に越してきて、緊張の連続だったが、この時間は肩の力を抜いて過ごすことができた。


 サラはついでに湯船にも浸かろうと思い、バスタブの蛇口をひねった。温かいお湯がゆっくりと湯船に溜まっていく。

 石鹸を泡立てて、洗面器に沢山の泡を作った。シャワーでお湯を犬にかけたら、意外にも嫌がることなくじっとしている。

 泡をかけて、丁寧に洗ってから、シャワーをかけてやると灰色だった毛は美しい銀灰色になった。


「綺麗な毛だね。光ってるみたい」


 石鹸をきれいに流すと犬は立ち上がりブルブルと体を震わせて水分を飛ばした。


 サラは湯船に入ってから犬を呼んだ。


「おいで、一緒に入ろう」


 犬はしばらく、くるくる回っていたが、諦めたのかバスタブに飛び込んできた。サラとは反対方向を見て、目を合わせてくれない。

 サラは気にせずゆっくり伸びをした。





 風呂から上がったサラは服を着てから、犬の毛もタオルで拭いてやった。湯船に浸かってリラックスできたのか、犬は眠そうに船をこいでいる。

 タオルで拭きながらドライヤーで毛を乾かして、櫛で梳かしてやると、銀灰色の毛は更に美しくなった。


「ほんとに綺麗……

 そうだ、名前を決めておかないと、呼ぶ時に不便だね。何がいいかな……」


 銀灰色の毛を見ているとブルームトを思い出してサラは悲しくなった。サラはぎゅっと犬を抱きしめたが、犬は抵抗せずに大人しくしていた。


「決めた……アルジャンにしよう。いいかな?」


 犬に聞くと犬は頷いたように見えた。






* * *






 サラはアルジャンを連れて、リオネルの執務室に突撃した。

 部屋の扉をノックすると「どうぞ」というリオネルの声が返ってきた。


「あぁ! さっきオベール卿から聞いたよ。サラが犬を飼いたいって言ってるって」


 執務室に入ってきたサラとアルジャンを見たリオネルは言った。

 横にいたオベール卿はアルジャンを見て驚いた顔をしている。


「さっきの汚い犬がそれですか!? 洗うと違う犬みたいですね!」


 サラはアルジャンを褒められると自分のことのように嬉しかった。


「洗ったら、綺麗になりました。

 リオネル様、お願いです。飼ってもいいですか?」


「もちろん、構わない。

 サラは何か欲しいものを聞いても断るから、犬を飼うくらいどうってことないよ」


 サラは嬉しくてアルジャンを抱きしめた。その様子をリオネルは微笑ましく見ていた。


「ありがとうございます! 行こう、アルジャン!」


 サラはアルジャンを連れて執務室を出ていった。







 執務室に残ったオベール卿は目頭を押さえていた。


「お可哀想なサラ様……寂しかったのでしょうかね……

 実家では邪険に扱われ、逃げ出した先では世話になった人と友人を亡くしたと聞きました。本当に不憫な方です」


「そうだな……

 一緒にいても、たまに悲しそうにする時があるんだ。少しでも、心の傷を癒やしてくれるといいんだが……」


 リオネルはサラの笑顔を初めて見た気がしていた。サラの笑顔はいつにも増して美しく見えた。





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