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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼
雪残る

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第1話 雪残る春

「ふぅ! 今日も空気がおいしいね!」


 サラはベランジェ城下の澄み切った青空を眺めながら、大きく伸びをした。ふと自分の腕を見ると、いつの間にか契約魔法の印が消えていることに気がついた。一体いつから消えていたのかサラには分からなかった。






 サラがベランジェ領に越してきて二ヶ月はたつが、リオネルとサラはまだ結婚していなかった。というのも、実はリオネルの母が現国王の妹であったらしく、婚姻には現国王の許可がいるらしい。リオネルの母はリオネルを出産した際に亡くなっていて、リオネルは国王にとって大事な忘れ形見なのだ。

 そんな大事な甥っ子に、サラみたいな逃亡したくせに、金だけはしっかり受け取っていた家の娘が嫁ぐことなどすんなり受け入れられる筈がないのだ。


 リオネルは「必ず国王を説得してみせる」と意気込んでいたが、サラから言わせればやや暴走気味に思えた。

 かと言って、お金も貰っているし、自分より身分の高い人からの求婚を断ることはサラにはできないのだ。


 婚姻もしていないので、部屋はもちろん別だったし、リオネルは忙しくて殆ど居城にいなかったため、会うことすら殆どなかった。


 サラはリオネルを婚約者と言うよりかは新しい上司として見ていた。


 サラは現在、リオネルの婚約者としてベランジェ領の内政を手伝っていた。国防で殆ど居城にいないリオネルに代わって、サラがサクサク仕事をしていくものだから、家臣からの受けは上々だった。






 ベランジェ領は夏の避暑地としてリゾート開発の真っ只中だ。

 今日はサラとリオネルの腹心のオベール卿で新作の氷菓子を試食しに街まで来ていた。朝までリオネルが一緒に行きたいとかなりごねていたが、今日は国境の兵士たちを訓練に行く予定が前々から入っていたので、オベール卿に追い出されるようにリオネルは出かけていった。






「こちら、新作のかき氷になります」


 店についたサラとオベール卿の前に大きなかき氷が二つ並んだ。季節は春だが、春でも雪の残るベランジェでは苦行以外の何ものでもない。

 オベール卿も考えることは一緒らしく、ブルブル身震いをしていた。

 しかし食べないわけには試食にならないので、サラとオベール卿は意を決してかき氷を食べた。


「おいしい!」


 サラは驚いた。てっきり頭がきーんとなって痛むものだと思っていたが、柔らかな氷は雪のようで、口どけは滑らかだった。


「絶対頭が痛くなると思ってました! 全然大丈夫ですね! いくらでも食べられそうです!」


 オベール卿も満足げに食べていた。口ひげにかき氷をつけながら食べるおじさんのオベール卿は見ていて面白かった。


「ベランジェの天然氷を使っているから、頭が痛くならないんですよ」と店員さんは教えてくれた。


「そうなんですね! 初めて知りました! 是非それも観光客のお客様に伝えていきましょう! 絶対に食べたくなりますよ!

 でも、そうですね……もう一捻りしてみましょうか……」


 サラは【鑑定】を使い、店員のステータスを見た。



 名前︰アネット

 種族︰人族

 職業︰甘味屋

 称号:領主に認められし甘味屋

 取得スキル︰【飴細工】【シロップ作り】【かき氷づくり】

 ………


「アネットさん、飴細工もできるんですね!」


 サラの鑑定にアネットは驚いた顔をした。


「そうです! よくわかりましたね!

 リオネル様に言われてかき氷を作るまでは飴細工を作っていたんです」


「では、それも飾りでつけてみてはどうでしょうか? 美しくなるとは思いませんか?」


「確かに、細くすれば食感のアクセントにもなって面白いかもしれません。ありがとうございます! さっそく作ってみるのでお待ちください!」


 アネットは店の奥へと駆けていった。


 オベール卿がじっとサラを見つめる。


「な、なんですか? 顔にシロップでも付いていましたか?」


「サラ様、もしリオネル様との婚姻が認められなくて破談になったら、ベランジェ領の家臣として残ってくださいよ……」


「えぇーーやだよ、絶対オベール卿、沢山仕事まわしてくるんでしょーー」


「ホッホッホ、冗談ですよ、冗談」


 オベール卿は笑っていたが、サラには冗談には聞こえなかった。パウラに代わる新しい上司の出現にサラは身震いした。




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