第10話 手紙
クリストフはサラを抱えて立たせ、一緒に歩いた。
途中でクリストフの母親にも会ったが、サラの様子を見て母親はクリストフの肩を叩いてから帰っていった。
クリストフは鑑定屋の二階のダイニングの椅子にサラ座らせた。サラはまだ泣いていた。現実を受け入れられないようだ。
クリストフはサラの向かい側にあった椅子を持って動かし、サラに隣に座った。サラの背中を赤子をあやすように優しく叩いた。
しばらくすると涙が枯れてしまったのか、サラは泣かなくなったが、心ここにあらずといった様子だ。クリストフは自分も辛かったが、どうにかしてサラを励ましたかった。
クリストフはポケットから三通の手紙を出した。一つはブルームトがサラに宛てた手紙。もう一つはパウラがサラに宛てた手紙。最後の一通はブルームトからクリストフに宛てた手紙だった。ブルームトはサラだけでなく、こっそりクリストフにも手紙を書いていたらしい。
「サラ……これ、二人から手紙……」
クリストフはサラ宛の手紙を二通、サラに渡した。サラはゆっくり二人からの手紙を読んでいた。涙は枯れてしまって出なかったが、苦悶の表情を浮かべていた。
クリストフはブルームトが自分に宛てた手紙を読んだ。
クリストフへ
この手紙を読んでいると言うことは、俺は死んでしまったということか。
クリストフにはとても感謝しているんだ。今まで辛いことばかりだったけど、クリストフが俺の事を友達だと言ってくれて、仲良くしてくれて、全て報われたように感じている。ありがとう。
クリストフと過ごせた時間はとても少なかったけど、とても楽しく充実した毎日だった。
俺が死んだら、もしかしたらサラは必要以上に悲しむかもしれないから、励ましてあげてほしい。
それだけ、よろしく頼んだ。
ブルームトより
クリストフは涙が出た。
何が、「よろしく頼んだ」だ……
軽すぎるだろ……
ブルームトは相変わらず、自己評価の低い男だった。まるで、自分が死んでも何も変わらないといったような軽い手紙に、クリストフは怒りさえ湧いた。
どう見たって、サラがブルームトを好きだったことは一目瞭然だったのに、この男はそれに気づいていないらしい。
許さない…… このまま死ぬことは絶対に許せない……
「サラ、俺、この馬鹿男をもう一回探してくるわ……
こんな勝手な手紙を残して死ぬなんて、絶対に許せない! 顔を見て文句の一つでも言わないと気がすまない!」
そう言うとクリストフは鑑定屋を飛び出していった。




