第4話 出陣
天気は快晴だった。街の外の平原にも雪が積もり、一面が真っ白になっていた。空気は冷たく、サラの吐く息は白くなった。
沢山の兵士や冒険者が街の外に集まっていた。彼らの出陣を見送るために、家族や恋人、友人たちも大勢集まっていた。
サラはパウラと一緒に平原まで来ていた。結局、パウラも討伐に参加することになり、パウラは胸当てに兜、背中には斧を背負っていた。
サラはパウラを抱きしめ、パウラはサラの背中を強く叩いた。
「大丈夫。心配いらない。魔王と戦った時も死なず帰ってきたんだ」
「絶対ですよ! 店長のこと待ってますからね!」
サラの頬を涙が流れた。
「さ! 涙を拭いて! 不安な顔をしたら、若い奴らが挫けてしまうかもしれないから。皆を信じて、笑顔で送り出すんだよ!
私以外の奴らにも声をかけてあげな! サラが励ましたら、皆喜ぶはずだから」
店長はサラを離して、またサラの背中を叩いた。
「……わかりました」
サラは涙を拭いて、店長に言われた通りに笑顔を作った。
サラは見知った常連客の冒険者や兵士たちに一人ずつ声をかけた。皆、サラに声をかけられると喜んだ。
「クリストフ! 元気でね! ちゃんと帰ってくるのよ!」
クリストフが恰幅のいい女性に抱きしめられて苦しそうだ。
「母さん! 恥ずかしいから止めてくれ!」
どうやらクリストフの母親が見送りに来ているようだ。ブルームトも一緒にいて、クリストフの次にクリストフの母親に抱きしめられていた。
「こんにちは、クリストフのお母さんですか?
初めまして、サラといいます。クリストフには、いつもお世話になっています」
サラはクリストフの母親に挨拶をした。
「あら、こんにちは! 綺麗なお嬢さんね! クリストフが無事に帰ってきたら、うちのお嫁に来てくれるのかしら?」
「母さん!! ほんとにやめて!! あっち行ってて!!」
クリストフに追い払われて、母親はニヤニヤしながらいなくなった。何か勘違いしているらしい。この母親にして、この子ありと言った感じか。
「面白いお母さんだね」
「ほんと恥ずかしいよ…… まぁ、わんわん泣かれるよりはマシかもだけど……
サラ、見送りに来てくれてありがとう。すごく嬉しいよ。抱きしめていい?」
「もちろん!」
サラはぎゅっとクリストフに抱きついた。クリストフもサラを抱きしめて、すぐにサラを引き剥がした。
「ごめん……予想以上だ…… ちょっと鎮めてくるから、あとはブルームトとやってくれ」
そう言うとクリストフは人混みの中に走って消えた。
サラはこんな時までひょうきんなクリストフを見て、心が少し和んだ。
ブルームトはさり気なく腕を広げてサラが来るのを待っていた。少しだけ不安そうな顔をしていた。
サラはブルームトの事も抱きしめた。ブルームトはほっと息を吐いて、サラを抱きしめた。
「サラ、頑張ってくるね」
「うん、待ってるからね。皆で元気に帰ってきてね……」
サラは涙が出そうになるのを、唇を噛んで堪えた。
前方からホルンの音がして、兵士や冒険者は移動を始めた。
サラはこれ以上ブルームトといると泣いてしまいそうで、ブルームトから離れた。
「バイバイ……」
サラはブルームトに手を振った。
ブルームトはサラに手を振ってから振りかえって歩き始めた。
サラはブルームトが前を向いたらすぐに泣いた。ブルームトにバレないように声を押し殺して泣いた。
ブルームトはちらっとサラを見てから、走って戻ってきてサラを抱きしめた。サラは涙で前が見えなかったので驚いた。
「サラ、好きだ……… 無事に討伐に成功して、S級に昇級したら結婚してほしい」
サラは驚いたが、嬉しかった。サラもブルームトの事が好きだったからだ。
サラはブルームトの腕の中で、小さく頷いた。
ブルームトはサラの額にキスをすると走って行ってしまった。
サラは皆が地平線の奥に消えて見えなくなるまで見送った。




