第3話 国難
「ねぇ、知ってる? イーツの北部にSランクモンスターが出たんですって」
「え……大丈夫なの?」
「今、国軍が北部の人たちを避難させてるんだって。王都も難民でいっぱいになるって話らしいよ……しかも、そのモンスター、人を好んで食べるんだって……」
「怖いわね……」
街でも鑑定屋でも、話題はSランクモンスターの話で持ちきりだった。広場には難民用のテントが張られ、冬の寒さを凌ぐため、常に焚き火が焚かれた。どんよりした空気が街中を包んでいるように感じた。
街の雰囲気にサラはいても立ってもいられなくなってしまった。その日の鑑定屋の営業が終了するとすぐにサラは店長に切り出した。
「店長……お願いがあります……
しばらく、仕事をお休みしてもいいですか? 逃げてきた人たちの為の炊き出しのボランティアがあるって聞いて、参加したいんです……」
店長は優しくサラに微笑んだ。
「そうだね、行っておいで。私も冒険者ギルドから、大規模討伐の前にスキル指導に来てほしいって頼まれてたところだから、店を閉めよう。この国難を皆で乗り切ろうじゃないか」
サラはパウラが心配になった。パウラは金にはがめついが、心根の部分は優しい人なのだとサラは理解するようになっていた。パウラが冒険者と一緒に大規模討伐に参加するのではないかという気がしてならなかった。
「……スキルの指導だけですよね? 店長が討伐に参加することはないですよね?」
「………」
「…………嫌です! 店長にもしものことがあったら……」
サラの目は潤んでいた。
パウラはサラの顔を見なかった。
「私は、ばばあになっても元勇者だ。この長い人生、沢山の人に支えられて生きてきた。その恩返しをしないといけない。求められれば、戦うよ」
そう言うとパウラは自室に籠もってしまった。
サラは何もできない無力な自分がただただ歯がゆくて仕方がなかった。




