第11話 月光
サラは人の気配を感じて目が覚め、起き上がった。体の痛みはまだあったが、起き上がれない程ではなかった。
辺りは暗くなり、月の光が窓から差し込んでいた。窓際にはブルームトが立っていた。キッチンにあったが、大きすぎて一度も使ったことのない大鍋にブルームトは花を生けていた。サラの周りに無造作に置かれていた花を片付けてくれたのだろう。いかにもブルームトらしいとサラは感じた。
「ブルームト……」
サラはブルームトに声をかけた。ブルームトは振り返ってサラを見ると悲しそうな顔をした。
「サラ……ごめんね…… 助けに行くのが遅くなってしまって怪我をさせてしまったね……」
どうやら、ブルームトはサラが怪我をしたことの責任を感じているらしい。
「ブルームトのせいじゃない…… 助けに来てくれて、ありがとう……
あと、私も謝らなきゃ…… 前に会いに来ないでって言ってごめんなさい…… 私の考えが足りなくて、ブルームトが怪我するのが嫌だったの……
本当はずっと……会いたかった」
ブルームトは部屋にあった椅子を動かしてサラの向いに座った。
「そっか……嫌われたのかと思ってたから良かったよ……」
サラはハッとした。自分がブルームトと会っていることが、また他の人にバレないか心配になった。
「そういえば、また私わがまま言っちゃった。私に会ってたら、また誰かに嫌がらせされたりしない?」
ブルームトは首を横に振った。
「アルマに言われて、誰にも見られないように窓から入ってきたよ。たぶん店長は気がついてるけど、黙認してくれてるのかな」
「よかった……」
しばらくの沈黙が流れた。サラは意を決してブルームトに提案した。
「私、もっとブルームトと会いたい……」
サラは恥ずかしさを噛み殺して、勇気を出して伝えた。サラは恥ずかしさで顔から火が出るかと思った。
「ごめん……」
ブルームトの答えにサラは時間が止まったかと思った。
「どうして……」
ブルームトはサラと目を合わせてくれなかった。
でも、よくよく考えると当たり前なのかもしれない。サラはそれだけブルームトに酷いことをしたのだ。サラはそう自分に言い聞かせて、事実を腹の中に飲み込んだ。
「そうか……そうだよね…… 今日は来てくれて、ありがとう……」
ブルームトはまだサラの顔を見ないように立ち上がった。
「じゃあ、お大事にね……」
ブルームトは窓から部屋を出ていった。




