第9話 夜討ち
馬車に乗り、街の大通りまで着く頃には辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
きっと店長が「晩飯はまだかい!?」と言ってご立腹に違いない。
サラは送ってくれた御者のおじさんにお礼を言ってから、鑑定屋に向かって歩き出した。
大通りから鑑定屋のある細い路地に入ると、サラは急に後ろから誰かに抱きしめられて口を塞がれた。
サラは抵抗して、何とかその人物の顔を見ることができた。その人物は商店街の元締の息子のデュートリヒだった。
「ん!!」
サラは塞がれた口で助けを呼ぼうとしたが、うなり声にしかならず助けを呼ぶことはできなかった。そんなサラを見てデュートリヒは不気味に笑った。
「お前のせいで、俺は親父に勘当されちまったんだ! ずっと復讐できる機会を狙ってたんだよ!」
デュートリヒは無理やりサラを路地裏へと連れ込んだ。サラは足をバタつかせて激しく抵抗したが、デュートリヒに顔を強く平手打ちされた。
地面に叩きつけられたサラは恐怖で体が震えた。
顔を叩かれた痛みと恐怖で声が出せない。
デュートリヒはポケットから刃渡り15cm位のナイフを取り出し、サラに突きつけた。
「大人しくしてたら、命だけは助けてやる」
デュートリヒはサラの上に乗り、サラの両手を片手で押さえつけた。余ったほうの手でナイフを持ちサラの仕事着を切り裂いた。
「止めて! 誰か助けて!!」
サラの声は誰にも届かなかった。
サラは恐怖で涙が出た。そんなサラを見てデュートリヒは満足そうな笑顔を浮かべた。
デュートリヒは裂けた服の隙間からサラの肌を舐めた。サラは不快感で全身に鳥肌が立つのを感じた。足をバタつかせて抵抗すると、また顔を強く平手打ちされた。
サラは脳が揺れるような感覚に襲われ、ぐったりして体に力が入らなくなった。
デュートリヒはサラのドレスの裾から手を入れ、サラの下着を脱がせた。そして、自分のベルトに手をかけた。
その時、デュートリヒの顔の横に月明かりで光る剣が差し出された。それに気がついたデュートリヒは動きが止まった。
「何をしている…… 早くどけろ」
声の主はブルームトだった。剣と同じように薄藍色の瞳も月明かりに照らされて光っているように見えた。優しい声が印象的だったブルームトの声が怒っているのか冷たく聞こえた。
デュートリヒは両手を上げて立ち上がった。
「わ、悪かった…… もう、この女には近づかないから許してくれ……」
「いいだろう」
ブルームトは構えていた剣を素早く上へ振り上げた。
「ぎゃ!!!」
デュートリヒは自分の右耳のあった場所を両手で押さえた。
「これで手打ちにしてやる…… 次、サラの前に現れたら、今度は手首を落とすぞ。いいな」
デュートリヒは頷くと耳とズボンを押さえながら一目散に逃げていった。
サラは意識が朦朧として、何が起こったのか分からなかった。誰かがサラの破れた仕事着の上にジャケットをかけ、抱き上げてくれた所までは覚えているが、その後は気を失ってしまって何があったのかは分からなかった。




