第5話 出張鑑定始めました!
魔獣屋での出張鑑定による収益に味を占めた店長は、サラの出張鑑定を正式に始めた。事前予約制で、予約の入った日はサラは一日出張の日となった。
鑑定屋から出なくなっていたサラにとって、出張鑑定はいい気晴らしになった。街の街路樹のイチョウは黄色く色づき美しかったし、吹く風は湿った落ち葉の匂いがして気持ちがよかった。
今日は魔獣屋の時に営業した、魔獣隊隊長のラインハルトの依頼での出張鑑定だ。朝からラインハルトの家から馬車で迎えが来て、サラは馬車が止まれる大通りから馬車に飛び乗る。馬車の窓から眺める街の景色はいつもと違って見えて新鮮だった。
馬車はサラが行ったことのない所まで走った――貴族街だ。大きな庭や大きな建物が並び、サラはわくわくが止まらなかった。
馬車は大きな門をくぐり、広大な庭を進み、大きな屋敷の前で止まった。
「サラ様、こちらでございます」
御者の人が、馬車の戸を開けてサラを屋敷へと案内してくれた。
ラインハルトの家は庭も広大だったが屋敷もかなり大きかった。サラは元貴族ではあったが、サラの実家のタウンハウスはこんなに大きくなかったことを思い出した。
御者が屋敷の扉を叩くと、中からメイドと思われる女性が出てきて御者と案内を交代した。
「サラ様、いらっしゃいませ。私、本日の案内を務めさせていただきますゲルタと申します。よろしくお願い致します。
本日ラインハルトですが、仕事に出ておりますので、夕方頃には戻るかと思います。それまでに鑑定してほしい物がいくつかございますので、ご案内いたします。どうぞこちらへ」
サラはゲルタの案内で屋敷の中へと足を踏み入れた。屋敷の中も豪華な造りでサラはそのまぶしさに目を細めた。
「申し訳ございません、ラインハルト隊長はどういった身分の方かお伺いしても構いませんか? 私、出身が他国なもので、イーツの貴族に詳しくなくて……」
サラは案内されている道中にゲルタに聞いた。
「ラインハルトは現国王のフェリクス陛下の弟で、現在は公爵の爵位を賜り、領地経営と魔獣隊隊長を務めております」
「……そ、そうだったんですね」
サラはゲルタの話を聞いて急に不安になった。
先日の接客に失礼はなかっただろうか……
とんでもない人物と知り合いになってしまった……
「サラ様、こちらでございます」
サラは部屋を見回して息を呑んだ。
サラが通された部屋は棚が沢山ある部屋だった。棚の中には壺やら絵画やら高そうな物が納められていた。
「こちら、宝物庫となります。本屋敷の貴重品がこちらに納められています。サラ様には、この部屋にある物を全て鑑定していただきたいのです」
サラはこんな事もあろうかと、準備していた手袋を両手にはめた。
「分かりました。鑑定書も作っていけばよろしいですか?」
「ありがとうございます。ぜひお願い致します」
ゲルタに見守られながら、サラは仕事を開始した。




