第1話 魔獣屋のアイヘル
季節は秋になっていた。鑑定屋から出ることのなくなったサラだったが、客の服装やクリストフが差し入れで持ってくる焼き芋や焼栗で、秋の訪れを感じていた。
「次の方、どうぞ」
鑑定室に入って来たのは、小さな男の子だった。サラの腰位までしか身長がない気がする。
「僕、お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」
「子供扱いするな! これでも成人してるぞ! これだから、人族は嫌なんだ! ドワーフって知らないのか!?」
「は!? ドワーフ!? 本でなら読んだことあるけど、本物!? すっご!! 握手して」
ドワーフは鑑定室の椅子の上に立ち、サラと握手した。サラはドワーフと目が合ったので、ドワーフのステータスを見た。
名前︰アイヘル
種族︰ドワーフ
職業︰魔獣屋
称号︰世界を股にかけるテイマー
取得スキル︰【テイム】
潜在能力︰【トリミング】
長所︰完璧主義
短所︰短気
………
「魔獣屋ってどんなお仕事?」
サラはステータスを見て、一番気になったことを聞いてみた。
「魔獣屋はテイムした魔獣をお客様に売る仕事さ。今日はちょっと手伝ってほしいことがあって鑑定士を探してたんだ。この店のサラっていう鑑定士が何でも鑑定できるって聞いたんだが、お前で間違いないか?」
「そうだよ」
「サラは魔獣も鑑定できるのか?」
「できるよ。やってみたことないけど」
「じゃあ、今すぐ一緒に来てくれ! サラの一日を俺が買うぞ!」
「え?」
アイヘルはカウンターにドンと札束をひとつ置いたので、サラは目を見開いた。
こんな大金見たことない!
「て、店長!!」
「どうした!!」
店長はすぐに飛んできてくれた。
「店長見てください! お客様が私を一日買いたいって!」
サラは店長に札束を渡した。店長の動きは早かった。
直ぐに待合室にいってサラ待ちの客に声をかけた。
「今日のサラを一日延長料金で買ったお客様が出た! 今日のサラの営業は終了だよ!」
「えぇ!」
待っていた客たちは不満そうだ。
「文句がある奴は私を倒してから言いな……」
店長の殺気に客たちは蜘蛛の子を散らしたように帰っていった。
店長は客を追い返してからニ階にあがり、素早く駆け下りてきた。
「サラ、外はもう寒いから、これ羽織っていきな。昔、爺さんがくれた物だけど、良い物だからまだ綺麗に使えるよ。私にはもう派手だから、サラにやるよ」
「え! いいんですか?」
店長はサラに臙脂色のショールを肩にかけて、金のピンで前をとめてくれた。
「いいよ。お前さん夏物しか持ってないだろ」
「ありがとうございます……」
最近の店長はサラに優しい。サラは店長の変化に驚きながらも、ありがたくショールをもらうことにした。
「準備はいいかい? じゃあついて来てくれ」
サラはアイヘルについて店を出た。




