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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼
炎暑

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【番外編】店長の鑑定

「はい、次の方どうぞ」


 サラが店に入ってからというもの、パウラの客層は変わった。以前までは幅広い年齢の冒険者が、元勇者の話を聞きにパウラの鑑定を受けに来たが、今では金のない新人冒険者と以前からのパウラの常連客がパウラの鑑定を利用していた。

 ただ、サラにはサラの強みがあるように、パウラにはパウラの強みがある。サラではなく、パウラに見てもらいたいという客も確実に一定数いることは間違いなかった。



 鑑定室に入ってきたのは、十代中頃位の少年だった。腰には真新しい剣を下げて、見るからに新人冒険者といった風貌だ。


「いらっしゃい。すまないね待たせてしまって。外は暑かっただろう」


 店長は鑑定室に備え付けてある、小さな冷凍庫から冷えたお茶をだし、少年に振る舞った。少年は余程暑かったのだろう。鑑定室の椅子に座ると一気にお茶を飲み干した。


 ちなみにだが、サラの鑑定室には冷凍庫などは付いていない。そんな物をつけたら、仕事のやる気がいまいちなサラは飲み物を詰め込んで、勝手に休憩しそうだとパウラは思ったからだ。


「はい、じゃあ手を出してごらん」


 少年がカウンターに出した手にパウラは自分の手を重ね、ステータスを見た。


 名前︰アルミン

 取得スキル︰【初級剣術】


「どうですか?」と少年は恐る恐る聞いた。


 この少年は冒険者ギルドの【鑑定】ではなく、わざわざお金を払って鑑定屋に来ているところから考えるに、何か悩みがあるのだろう。


 パウラの【鑑定】の強みは、パウラの経験からくる物だった。サラほど詳細な【鑑定】のスキルは無かったが、元勇者としての経験で顧客にアドバイスや武器の使い方を指導することができた。ちょっとした動きの特徴や癖から、その人の特徴を推理することができた。


「簡単な型は覚えているみたいだけど、戦闘で使いこなせなくて困っているのかな?」


 パウラは優しく少年に聞くと少年はうんうんと頷いた。


 サラが見たのは少年の腕だった。圧倒的に筋力が足りていない。この細腕では、スライムすら切ることは難しいだろう。


「やらなきゃいけないことは、大きく分けて二つ。まずは、失敗してもいいから依頼を受け続けることだ。一人で行っちゃ駄目だよ。必ず新人指導の冒険者と一緒に行くんだ」


 少年は不服そうな顔をした。


「それは、もうやってます! でもなかなか上手くいかないから相談に来たんです!」


 少年の訴えにパウラは豪快に笑った。


「いいかい坊主。冒険者っていう職業はそんなに一朝一夕でできるようになる仕事じゃないんだよ。

 お前さんは腕の筋力がまだまだ足りていない。だから、魔物も切れないんだ。

 腕立てとか重りを持ち上げるトレーニングじゃ駄目だよ。剣を使うのに使う筋肉は剣を使うことでしか鍛えられないんだ。

 次に二つ目だ。実はこれが一番大事なことだが、それはよく食べることだ。

 食べないと筋肉もできないし、身長も伸びない」


「でも……俺、なかなか稼げなくて」


「先輩たちに媚を売ってご馳走してもらいな。荷物持ちでも、雑用でも何でもやんなさい。プライドなんか犬に食わせちまいな。

 冒険者は助け合ってやる仕事だ。先輩たちもお前さん位の頃はそうやって食い扶持を繋いだんだ。恥を捨てて頼めば必ず助けてくれる人はいるはずさ。先輩たちに顔を覚えてもらえば、いざと言う時も助けてもらえる。冒険者はそういう仕事だよ」


「分かりました…… もう少し頑張ってみます」


「よし、じゃあサービスだ。お前さんの細腕でも使いやすいスキルをひとつ伝授してやろう。立ちなさい」


 パウラは冷凍庫の上に置いておいたフライパンを手に取った。



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