第13話 クリストフの思い
サラは店長に言われた事を自分なりに考えた。
確かに私に会うためだと言って来店してくる男性客は多い。私が誰かとデートしているのを見たら、客が減ってしまうのかもしれない。店長が言いたかったのはそういう事なのかな……
サラはベッドの上で考えを巡らせながら眠りについた。
* * *
次の日も、店は客でいっぱいだった。サラは客が減ってしまうかもしれないと心配していたが、杞憂だったようだ。いつもと変わらない日常が流れた。
昼頃になり、クリストフが鑑定室に入ってきた。
いつも明るい笑顔が印象的なクリストフはいつになく表情が暗かった。
「いらっしゃい」
サラはクリストフに手短に挨拶をした。
「サラ…… 昨日、一緒にいた男はここの客なの?」
クリストフは今日は鑑定をする気は無いらしい。
「そうだけど、どうして? 何かあった?」
クリストフはサラの目をじっと見つめた。
「俺はサラが心配なんだ…… サラは自分がどれだけ人気があるか分かってるか?」
「分かってるつもりだよ。だって、お店もいつもお客さんでいっぱいだし……」
クリストフは首を横に振った。
「そういう事じゃないんだ…… サラと特別になりたい男がどれ程多いかって話をしてるんだ。サラはこの街のアイドルみたいなもんなんだよ。皆に愛されてる。さばさばしてるけど、心は優しくて、いつも客を気遣ってるだろ?」
「そんなに深く考えてやってはいないけど……」
「じゃあ、これを期にしっかり考えた方がいい。
ここに通ってる男は皆我慢してるんだ。サラと出かけるなんて、皆したいけど暗黙の了解で皆しないんだよ。サラが普段アルマ亭に通ってることも皆知ってるけど、サラに悪いから誰も行ったりしない。それでサラの客が減ったらサラが可哀想だから。サラが変な客に絡まれるのが嫌だからだ。皆、少なからずサラに助けられて感謝してるからだ。分かるか?」
サラはメイクを落としてから店を出ていたから、誰にもバレていないと思っていたが、それは思い違いだったらしい。分かる人には分かるのに、気が付かないふりをしてくれていたのだ。
クリストフは悲しそうな、苦しそうな顔をしながらサラの目を見て話した。
サラはクリストフが自分のことをすごく心配して考えてくれていることが伝わってきた。
「……クリストフが私のことすごく心配してくれてるのは分かったよ……… 心配させて、ごめんなさい」
「ごめん……俺も、ほんとはこんな事言いたくないんだ…… サラの事が好きだから、ほんとは俺だってサラを誘いたいんだ……
でも、サラはここを辞めて独立したいんだろ?」
サラは頷いた。
「サラの目標を応援したいから、店の外で会うのは諦めるよ。沢山稼いで、沢山店に通う。俺は、それでいい……
今日はそれだけ言いたかったんだ。これ、差し入れ」
クリストフはカウンターに温かいお弁当を置いて鑑定室を出ていった。




