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5話 資料室侵入作戦

実霞晴嵐学園第四寮入り口。

朝焼は予定通り、午後十時に校舎への侵入作戦を決行しようとしていた。

とはいっても、校舎には普通に入れるのだが。

朝焼の目的は資料室に入り、追っている組織の情報を得る事。

その前に、資料室の場所を知る必要がある。

朝焼は第二校舎に向かった。

そんな朝焼の姿を追う影が。


朝焼はまず第二校舎の一階を回った。

一階には、学食や職員室、会議室や保健室があった。


学食にはよく来るけど、やっぱり広いよなー。

でも、資料室は見当たらない。

二階はクラスの教室しかないから、次は三階だな。


朝焼は三階に向かった。


三階は始めて来たな。

図書室、美術室、技術室、医療講習室、医療室、理科室・・・。

んー、資料室はないなー。


他にも音楽室や書道室もあった。

これらの教室のスペースは狭い。

授業に音楽や美術などはないが、息抜きや趣味で訪れる生徒がいる。

技術室や理科室も授業では使用しないが、シグカチップやウイルス、細菌の研究に興味のある生徒、または工作や実験が好きな生徒が使用することがある。

医療講習室は治癒能力のある生徒が訪れ、医療室は保健室に収まらないほどの負傷者が出た時に使用される。

しかし、朝焼が探している資料室は見当たらなかった。


うーん。第二校舎にないとなると第一校舎にあんのか。

行ってみるか。


第一校舎は二年生の教室がある校舎。

今更だが、第二校舎には一年生の教室がある。

第一校舎も、基本的に第二校舎と似たような構造をしていた。

一階には学食や保健室、二階に教室、三階には特別教室。

しかし、三階には、第二校舎になかった資料室があった。


見つけたぞ。


朝焼は握り玉タイプのドアノブに触れるが。


んー。やっぱり開かねーか。

ふっ。じゃあ、やるか。


朝焼は、プリントを留めていたクリップを、伸ばして作った二本の針金を鍵穴に入れ、ピッキングを始めた。


えーっと、どうやってやるんだっけ。

やり方、分かんねーな。

まあ、なんとかなるだろっ。


朝焼が、鍵を開けようとピッキングしていると。


「おいっ、朝焼ー。何してんだっ?」

「うわぁーー」


真後ろから突然、空磨の声が聞こえてきた。

朝焼はピッキングに夢中で、人の気配に全く気が付かなかった。

声がした後方へ振り返ると、空磨とルリットの姿があった。


「なんで、お前らここにいんだよっ?」

「ルリットから聞いたんだよ。何か企んでんだろ。飯か?」

「飯なら自分の部屋で食ってろよ」


空磨の頭の中は食べることでいっぱいのようだ。

どうやら二人は、朝焼がルリットからクリップを貰ったことを機に、朝焼が何か企んでいると考えたらしい。

そして、ルリットが朝焼を少しの間、軽く見張っていたら、偶然空磨と出くわしたと。


「ここに入りたいのか?」

「ああ。でもっ、ぐっ。開かねーんだよな」

「鍵、取ってくれば?」

「鍵・・・。何言って・・・。それだっ」


ルリットの一言で気が付いた。

てか、なんで今まで気が付かなかったんだよ。

この時間なら職員室にも先生はいないだろっ。


「・・・って。職員室も閉まってるじゃねーか」


三人は、鍵がある一階の職員室に足を運んだが、鍵が閉まっていて開かなかった。


やっぱり、ピッキングするしかねーか。


再び三階の資料室前に戻り、侵入を試みる。


くっ。あ、開かねー。

どうやるんだ、これ。


「おい、朝焼。俺に任せろ」

「あっ? 空磨。できんのか?」

「やればできんだろ」

「・・・。じゃあ、頼んだ」


朝焼は空磨に針金を渡した。

空磨は、針金を鍵穴に入れ、朝焼と同じようにピッキングを始めた。


やればできるって、そんな甘くないぞー。

ほら、開く気配がないじゃねーか。


「うおおお。気合いだー」


ったく。気合いじゃ、どうしようもないって。

適当にやっても開かねーだろ。


朝焼は、開けられるわけがないと思いつつも、右目だけ開いて、視線を鍵穴に向けている。


「うおおお・・・おっ。開いたぞー」

「えぇーー。なんでぇーー。すげーーな。空磨ーー」

「はっはっは。俺にできないことはねーー」


すげー、マジで開けやがった。

気合い・・・なのか?

気合いが大事なのか。

兎に角、空磨のおかげで資料室に入れるな。


三人は資料室の中に入った。

資料室はそこまで広くはないが、資料が時期や地域、種類ごとに分類されて棚に並べられていた。


「おぉー。桜月の飯についてだ」

「こっちは桜月に生息する魚について書かれている」


空磨とルリットは、自分が興味のあるファイルを手に取って読んでいる。


二人に関しては、図書室でも見れるんじゃあ・・・。

まあ、いっか。

えーとっ、俺が探しているのは組織に関する資料だから。

んー。でも、組織っていうカテゴリーが無いんだよなー。

やっぱり、あの先か・・・。


朝焼は、資料室の中にある、入口とは違う扉に視線を向けた。

その扉のすぐ傍にはキーパットが設置されている。


パスワードが必要なのか。

でも、流石にわかんねーな。


「あー。美味そうな飯見てたら腹減ってきたなー・・・って朝焼。お前、探しもんは見つかったのか?」

「いいや、恐らくこの扉の先にある」


考えても分かんねーし、適当に打ってみるか。


「んっ?」


朝焼がパスワードの攻略法を考えていると、空磨がキーパットを押していた。


「朝焼ー。これ、ずっとボタン押せるぞ」


本当だ。

キーパットをよく見ると、エンターボタンがある。

ってことは、パスワードが何文字かも分かんねーな。


「あっ。これ押すのか」


空磨が、適当に打ち続けた数字の後に、エンターを押した。

しかし、というより、当然扉は開かなかった。


んー。数字かー。

誕生日とかか?

この学園、いつできたんだ?


朝焼がそんなことを考えていると、今度はルリットがキーパットを押していた。

当然、扉は開かない。


まあ、考えたって分かんねーし、今日の日付でも打ってみるか。


朝焼は、今日の日付を打ち、エンターを押した。


「ウーウーウー・・・」


ん? なんだ。開いたのか。


「おー。開いたんじゃないか」


空磨が喜びながら扉を開けようとしたが、開かなかった。


「なんだ。開いてねーじゃん」

「・・・。この音って・・・、サイレンじゃねーーー?」

「・・・。逃げろーーー」


扉をいじる空磨を横目に、朝焼がサイレンだと気が付く。

三人は同時に大声を上げ、資料室を出ようとするが。


「んっ? なんで、扉が開かねんだよーー」


朝焼が、資料室の扉を引くが、まるで壁の様にびくともしなかった。


「おい、朝焼。何やってんだ。早く開けろよ」

「開かねんだよ」

「押すんじゃないの?」

「入る時、押したんだから引くだろ。てか、押しても開かねー」


空磨とルリットの声に、順に答える朝焼。

資料室の扉は、その中にある扉を開けるためのパスワードを三回間違えると、資料室の扉も閉まるからくりになっている。

そして、鳴り響くサイレン音を聞きつけ、実霞晴嵐警備部隊員がやって来る仕組みだ。

三人があたふたしている間に、警備部隊員三名がすぐに駆けつけて来た。


「・・・。えーっと。君たちはここの生徒かな?」

「はい・・・」

「んんー。まあ、一度話を聞かせてもらおうかな」


三人は、そのまま隊員に連れられ、第一校舎の会議室まで足を運んだ。

少し時間が経つと、校長の杢静がやって来た。


「では、話を聞かせてもらおうか。単刀直入に、なぜこんな夜遅くに資料室にいた?」

「それは、知りたいことがあって」

「調べ物か? だが、その調べ物は、重要資料庫にあるような内容なのかな?」


重要資料庫? 

あの扉の先にある部屋のことか。


「資料室を見渡しても無かったので」

「どんな事を調べようとしてたんだ?」

「・・・」


朝焼の口の動きが止まる。


どうする?

正直に話すか。

いいや、話したら余計にややこしくなるかもしれない。

自由がモットーの実霞晴嵐でも、警備部の人たちはなんか堅そうだし。

でも、どうやって乗り切る・・・。


「はーはっはっはっはっは」

「・・・。西浜さん、なんですか?」

「いやいや、実に行動力があって良いことじゃ」

「はい?」

「なーに、この子らは先日、不思議な生き物と戦ってのう。その生物の正体を調べようとしてたんじゃよ。のぅ?」

「えっ。は、はい。そうです」


朝焼は、杢静の言葉に一瞬戸惑ったが、杢静が朝焼に軽くウィンクをしてきたことで、その助け船に乗った。

その後、少し煙人間の事を話し、杢静の助力もあって、軽く注意されるに留まった三人。

そのまま、第四寮へ向かって歩き始めた。


「ふうー。じいちゃんのおかげでなんとか助かったな」

「おう。でも、朝焼は何を調べたかったんだ?」

「うっ・・・。それは・・・」

「美味い飯の事なら、資料室にあったぞ」

「飯の事ではないですぅ」


空磨は飯の事しか頭にないな・・・。

それにしても、やっぱり資料室には無かったか。

あるとしたら、パスワードの先か。

パスワード・・・。

んー、考えても分かんねーよなー。

ん? あれ?

第三訓練所、電気が点いてるな。

もう十一時だぞ。

消し忘れか?


朝焼は、偶々通りかかった室内第三訓練所の明かりが点いていることに気が付いた。

そのまま、電気を消そうと、中に入る。


えーっと。電気のスイッチはどこにあるんだぁ?

あれ、誰かいるな。

・・・。洋那。


訓練所の明かりは、消し忘れではなく、洋那が鍛錬を行っていた。

洋那は左膝を床につけ、片膝立ちになり、両手を床に突けている。

汗だくで息も激しく上がっている。


「はあはあはあ、くっ・・・」


洋那は歯を食いしばり、床に突いている手を強く握り締めた。


洋那・・・。

凛の事・・・。

今でも自分のせいだと・・・。


朝焼は、洋那の姿を見て、その場を離れた。


その後、生徒たちは二日間の休日を過ごした。

朝焼は入学式の日に見つけた森に行き、二日間丸々修行を行った。

そして、休日二日目の夜。


「はあー。疲れたー。ん?」


朝焼が自分の部屋のベットの上で横になっているとドアをノックする音が聞こえてきた。

立ち上がり、ドアを開けると錬の姿があった。


「朝焼、準備した?」

「ん? 準備? なんの?」

「オリエンテーション合宿だよ」

「えっ・・・? オリテン・・・」

「そうだよ。二泊三日の」

「やべぇー。忘れてたーー」


完全に忘れてた。

なんも準備してねーや。

えーっと、なんだっけ?

あの仏頂面堅物教師が言ってたよなー?

服だけ持ってけばいいんだっけ。

まあ、すぐに終わんだろ。


朝焼は急いで準備を始めた。


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