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19話 静かな廃墟群

廃墟群付近のとある森の中。

真っ赤に染まっていた木々が、暗闇を作り出した頃。

そこに、迷い迷いの足取りで歩く真兎颯の姿があった。


「・・・。ここー、どこ?」


颯は甫哭巳を倒した後、仲間との合流地点に向かっていたのだが、森中で迷子になっていた。

ヴォレフォンがあれば、通話して確認することができるのだが、颯は持ち合わせていなかった。


・・・。

こっちだろ。


なんの確信もなく、適当に進む颯だったが、少し歩くと、誰かの声が颯の耳に入ってきた。


「あれー。相変わらず一人ぼっちの颯君じゃないですかー」

「・・・。あっ? てめぇもぼっちじゃん」


颯に話しかけてきたのは、颯と同じくらいの体格で、赤髪の少年、波持眠真紅はもねしんくだった。


「俺は友達のいない颯君と違って、一人が好きで自分から一人になってんのー。自分の意思でー」

「無理しなくていいんだよ。真紅君。事実を向け止める勇気も大切だよっ。そんなに寂しいなら手でも繋いであげよっかー?」

「あんだとー。あっ、そっかー。颯君は怖がりだもんねー。暗い森の中、ちびり散らかしながら一歩、また一歩ってノロノロと歩いていたんだー。仕方ないなぁ、おんぶでもしてあげましょーか?」

「あっ? ・・・。あーー、そこに猫がいるよっ」

「きゃあーーー。ど、どこに・・・」

「ぷぷぷ。ビビってんのは真紅君じゃないですかー。そこー、濡れているけど大丈夫? もしかしてー、漏らしちゃったぁ?」

「はあーー? 漏らしてねーわ。おめぇーこそ、ビビりすぎて幻覚が見えてんじゃねーのか?」

「・・・。ったく。口の減らねーぼっちだなっ。てめぇの声が耳に入る度に、蚊が俺の耳の近くで小便しているんじゃねーかと不安になるんだよ。ふらぺら病が飛び散るんじゃねーかと。クレイジーモスキート・ふらぺら泥酔病原体野郎が」

「ふらふらしてて、ぺらぺらうるせーぼっちはおめぇーだろっ。俺はおめぇーの喋っている顔を見ていると、凍りついたゾンビが裸で変顔しているのを見ている気分になるんだよ。女神様の壮絶な問題作かつ、凍える汚染物質がよー」


徐々に口調が荒くなり、やがて凄まじいオーラを放つ二人。

目を大きく開き、途轍もない威圧感を放ちながら、至近距離で視線を交える。

一触即発の状況だが。


「あー、いたっ。って、また喧嘩してんのか?」


颯と真紅を探していた仲間の敷谷痲古戸が声を掛け、昏渓喬呀、柄御詞唱巻を含む三人がその場にやって来て喧嘩を制止した。

痲古戸と喬呀、唱巻の三人は颯と真紅を引き離し、距離を取りながら歩いて、五人はその場を後にした。




暗闇に包まれ、静まり返った廃墟群。

人影は一つも残っていない。

廃墟群にいた全ての生徒と藍人は梅露広場に戻っていた。

さらに、数時間前に、梅露広場周辺の森中や廃墟群にやって来た露松政府の実力組織隊員により拘束された影洛配下の組織組員。

梅露広場にある宿舎周辺には、今も露松政府実力組織隊員が見張りを行なっている。

宿舎内では傷やダメージを負った生徒、体力やスタミナが尽きている生徒が倒れ込んでおり、そんな生徒の側には治療を施す露松政府実力組織の医療部隊員や治癒能力を持つ生徒たちの姿がある。

その努力もあり、ほぼ全ての生徒は意識がはっきりとしているが、未だに意識を失っている生徒が一人。


「朝焼・・・」


治療を受け終えた錬が、敷き布団の上で意識を失っている朝焼の元へやってきた。

錬はウイルスの力を多用したことで、普段よりだいぶ痩せ細った姿になっている。

朝焼には、午後のレクで同じ班だった鎮歌が治療を行ったが、意識が戻っていない。

鎮歌は優れた治癒能力を有しており、既に朝焼の体力を回復させていた。

しかし、普通なら意識が戻っていいほど回復している朝焼だったが、なぜか未だに意識が戻らない。


少し時間が経過すると、ほとんどの生徒は夜食を取り、風呂に入り、昨夜と同じ部屋で寝る準備をしている。

一方で誘拐された生徒や朝焼たちなど、廃墟群に行った洋那以外の生徒は、昨夜とは異なり、特別に設けられた治療部屋で寝ることになった。

そんな中、朝焼、錬、ルリット、空磨は同じ部屋になり、全員が横になっている。

というより、朝焼は気を失っていて、三人は眠りについている。

電気を点けたまま。


・・・。

ここは。

いつもの夢か。


現実世界では意識が戻っていない朝焼だが、気が付けばいつも見る夢の中にいた。


「やっと、気が付いたか」

「・・・。悠」


そして、いつも通り悠が目の前に現れる。


「まっ、いきなりあんな力を使ったら、そりゃー、ぐっすりになるか」

「力? なんのことだ?」

「覚えてねーのか」

「ああ、全然。悠と話した後の記憶が・・・。っ!? それより、錬たちを助けに行かねーと」

「もう必要ねーよ。あいつは朝焼が倒した。その後も色々あったが、全員無事だ。今、朝焼は宿舎で気を失ってぐっすり、戦いは終わったってことだ」

「・・・。よく分かんねーけど、全員無事なんだな?」

「ああ」

「はぁー、よかった」


朝焼は安心したような、ため息を漏らした。


「まあ、よかったが・・・」

「んっ? なんだよ? ・・・。ちょっと待て。悠はなんで今日起きたことを把握しているんだよ? それに、今まで話してくれなかったのに、今日はいきなり話し始めたし」


いつも悠と会う夢は見るけど、もしかして夢じゃなかったのか?

だとしたら何だ?


「朝焼、話しておくことがある・・・」


悠はそう言うと朝焼の疑問に答えるように話し始めた。


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