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18話 洋那VS繪柢巳

露松にある梅露広場から、北西に数キロ離れたところにある廃墟群。

その教会のような廃墟内で繪柢巳が空磨に打撃を当てていた。


「君ー。しつこいね」


数回打撃を当てても、倒れず立ち続ける空磨に苛立ち始めていた。

繪柢巳はさらに打撃を当てるが、それでも倒れずに全ての打撃を受ける空磨。


「もういいよ。もしかしたら、死んじゃうかもしれないけど、君がいけないんだよ」


繪柢巳は痺れを切らし、至近距離から右手の手刀で、威力エネルギーをかなり多く含んだ斬を放とうとした。


「・・・」


しかし、何かが視界に入り、それを止めた。

意識を失いながらも立ち続けていた空磨が右方向へ倒れかかったところに、空磨を支える洋那の姿があった。

洋那は廃墟群に到着しており、太啼棋が吹いた角笛の音を聞き、この場にやって来た。

洋那は空磨をそっと下ろした。


「お前、名前は?」

「影洛。やっとだ。やっと」


繪柢巳の問いは洋那の耳には届いていない。

洋那は両拳を思いっきり握り、全身に力を入れた。


「三人とも、まだ動けるか?」

「う、うん」

「二人を連れて、ここから離れろ」

「えっ。でも・・・」


(奴らの狙いは飛藤君だ。あいつが、目の前にいる生徒が飛藤君だと気付いているか分からないけど、飛藤君は自分が狙われているって知っているのかな。でも、僕たちがここに残っても、今は何もできないし、むしろ飛藤君の足を引っ張るかもしれない。どうするか・・・)


洋那の言葉を聞いた、唯一意識がはっきりとしている錬は、考えを巡らせ、戸惑ったがこの場から離れることに決めた。

錬は朝焼を、まだ意識が少し朦朧としているルリットは空磨を担ぎ、ウイルスの影響で意識が朦朧としている太啼棋と共に、この場を離れた。

繪柢巳はそんな錬たちには目もくれず、洋那をじっと見つめている。


「ねぇー。君ー。聞いてる?」

「・・・」

「まあ、いいや」


繪柢巳は問うことを諦め、黒いマントを脱ぎ捨て、今まで、錬たちに向けていた視線とは打って変わり、目を大きく開け、辺りの空間を揺らすような威圧感を放っている。

そんな繪柢巳と視線を交わす洋那も、それに劣らないどころか、それ以上の威圧感を放つ。


「ふー。雷斬鬼閻(らいざんきえん)


洋那の全身に、いくつかの細い稲妻が纏う。


(・・・。このガキ、ベズンズか。それも強力な)


二人は同時に接近し、右ストレートを放つ。

互いの右拳が衝突すると、片方から血が噴き出る。


「・・・。切れた?」


洋那の纏っている稲妻が繪柢巳の右拳に触れた瞬間、稲妻が右拳を斬り、切り傷をつけた。

再び接近し、打撃戦に入ると、次々に洋那が纏っている稲妻が繪柢巳の身体に切り傷をつけていく。


「くっ。厄介だな」


繪柢巳は近接戦を諦め、距離を取り、右手の手刀で横の斬を放つ。

洋那もそれを見て、右手の手刀で左上がりの斬を放つ。

二人の放った斬が衝突する前に、洋那の放った斬に纏われた稲妻が繪柢巳の放った斬を破壊し、洋那の放った斬はそのまま繪柢巳に向かって飛んでいく。


「何っ。ぐはっー」


斬が繪柢巳の上半身に命中すると、斬の打撃的なダメージを受けつつ、加えて稲妻による切断的なダメージも受け、血が噴き出る。

繪柢巳はウイルスの力で強化されているため、致命傷にはならなかったが、それでも、そこそこのダメージになった。


「このガキャー。TR6、リミット・マルティブ」


繪柢巳は自分の身体から飛び散る血を見て激昂し、ウイルスの力を限界以上に使用し始めた。

体内に保持できる限界以上のウイルスを生成したことで、筋肉はより増強され、身体能力もさらに向上した繪柢巳。

体内から禍々しいローズレッド色の煙が溢れ出す。

繪柢巳は今までとは比較にならないスピードで動き、洋那に近接戦を仕掛けた。

近接戦を行うことで、洋那の纏った稲妻が繪柢巳に傷をつけるが、受ける傷は先より浅くなっている。


「どうしたー? おいおいおいおい。お前の攻撃なんて痛くも痒くもねーんだよ」


繪柢巳は勢いそのまま、前に出て猛ラッシュをかける。

徐々に後退し、防戦一方になる洋那だったが、隙を見て上半身を僅かに屈め、左足を一歩前に出して、右手の手刀を繪柢巳の腹部に当てた。

すると、今までの稲妻よりも威力の高い稲妻が放たれ、繪柢巳の腹部から血が噴き出る。


「ぐはっ・・・。き、貴様ーーーーーー」


洋那の稲妻に幾度も切り傷を付けられ、さらに、ウイルスを限界以上に生成した代償でスタミナも大幅に消費し、普段通りに脳が機能しておらず、平常心を失いかけていた繪柢巳だったが、今食らった一撃で、完全に冷静さを失い、力任せに全力の斬を放とうと右手の手刀を構える。

その様子を見た洋那も右手の手刀を構える。


「木っ端微塵にしてやるよ。クソガキがー。限界強化、斬回・移送(いそう)

雷刀(らいとう)鬼斬(きざん)


繪柢巳は、ウイルスで最大まで強化したヴォーネを斬エネルギーに変換し、最大威力の回転する斬を放った。


繪柢巳の放った斬技・移送は斬同士などが衝突した際の押し合いに特化した技で、斬を放った後も、その斬にヴォーネを送り続けることで威力を増し、推進力を維持することができる。

ただ、斬同士などの押し合いによる威力増強や推進力を維持することは可能にするが、相手に命中した時の威力は斬を放った時と変わらず、速度と距離も変化しない。

あくまで、斬同士などの押し合い時に効果を発揮する斬技。

加えて、ヴォーネを送り続けている間は、ほとんど身体を動かすことができない。

そのため、今回のように、勝負を決める、決め手として使われる場合が多い。


洋那は左から右へ右手の手刀を振り、斬技・斬とは異なる、雷の斬撃波を横一文字に放った。

洋那の放った斬撃波は、強力な光を放った後、爆音が鳴ると同時に猛スピードで繪柢巳に向かっていく。

繪柢巳が放った斬回は地面を削ると同時に強烈な風を巻き起こし、洋那が放った雷の斬撃波は、辺りに稲妻を走らせながら、二つはすぐに衝突した。

凄まじい衝撃が走り、衝突した余波で、付近にある廃墟は崩壊し、辺り一帯が更地へと変貌していく。

衝撃波は、既に離れた位置にいる錬たちにも届くほど強烈だった。

繪柢巳は雄叫びを上げながら、反対に洋那は静かに見つめながら斬撃波に力を送る。

そんな廃墟群の半分の土地を揺らすような大技の衝突だったが、長くは続かず、すぐに決着がついた。

衝突して間もなく、洋那の放った雷が、繪柢巳が放った斬回を切り刻み消滅させた。

そのまま雷の斬撃波は繪柢巳に直撃し、繪柢巳の周りを稲妻と白煙が覆う。

白煙が上空へ上がると同時に、前方へ倒れた繪柢巳。

大量の血が上半身から溢れ出ている。


「影洛の拠点はどこにある?」


洋那は繪柢巳に近づき、尋ねる。


「・・・。さ、さあ」

「じゃあ、佐門凛(さかとりん)を知っているか?」

「・・・。さ、さあ。誰だ・・・」


洋那の質問に小さい声量で、息を荒げながら、途切れ途切れに答える繪柢巳。


「ま、まさか・・・。お前、俺にそのことを尋ねるために手加減を・・・。ぐー。舐めやがってー。道連れにしてやる」


繪柢巳は洋那の左足首を右手で掴み、甫哭巳と同じように自爆した。

再び煙が広がり、爆音も響き渡る。


「・・・。自爆した?」


繪柢巳の思いは叶わず、煙が上空へ上がると、全身に稲妻を纏った洋那の姿があった。


「凛・・・」


洋那は煙によって二つに分けられた夕空を見上げながら呟いた。

しかし、洋那の視線はすぐに別の場所へ向けられる。


「ひっひっひ。お前が飛藤かー?」

「多分こいつだよー」


洋那の前方から三十人ほどの、影洛配下の組織組員が姿を現した。


「あれー、別部隊の姿が見えないけどー」

「なーに、こんなガキ一人、俺一人でも十分だーぜっ」


・・・。

はあ、めんどくせーな。

ベズンズを使った影響で、ヴォーネの残量も多くない。

まあ、こいつらくらいは、なんとかなるかな。


洋那はため息を零し、向かってくる組員を静かに見つめた。

まず、一人の組員が洋那へ殴りかかる。

洋那は斬を放ち、一瞬で吹っ飛ばすがそれと同時に、その場にいる組員全員が洋那に襲い掛かる。

接近してきた組員を洋那は自分の周りに放った稲妻で一斉に倒すが、遠距離から斬や火の玉、サッカーボールくらいの氷の塊が一斉に飛んでくる。

洋那は思いっきり上空へ飛び、全てを避けることに成功したが、それを見た他の組員数人が再び遠距離攻撃を仕掛ける。


「くっ」


洋那は強張った表情をしながら自身の周りに無数の稲妻を走らせ、遠距離攻撃を防ぐが、稲妻が消えると瞬く間に遠距離攻撃が飛んでくる。


(全ては避けきれないか)


洋那は被弾覚悟で自身の前方下から飛んできた攻撃を斬で防ぐが、後方下から飛んできた攻撃には防ぐ手立てがなかった。

しかし、その攻撃は洋那に命中する前に消え去った。


「・・・? あれは確か、朝焼の担任」


洋那は地面に着地すると同時に、救援に来た藍人の姿を見て呟いた。


「すまない。遅くなった。あとは私がやる」

「・・・。半分くらいは俺がやりますよ」


(飛藤洋那。まだヴォーネが残っているのか。既に奴らとの戦闘でかなりヴォーネを消費している。恐らく、まだ慣れないベズンズを幾度も使用したのだろう。それに、飛藤君のベズンズは雷斬鬼閻。あのしえんの力。慣れてもいないのに、その強力なベズンズを使ってヴォーネが残っている方がおかしな話だ。そのおかしな話が、今起こっているのだが。流石は十年前に並んで最強の世代と期待されている新入生のトップ。ヴォーネがあまり残っていない今の状態でも、こいつら十数人相手なら心配は不要か。まあ、引けと言ったところで聞かないだろうしな)


藍人は洋那の体内に残っているヴォーネ量を確認して、そんなことを思った。


藍人はマシーグであり、ほとんどのマシーグはある程度鍛えると、宿り人の体内にあるヴォーネの量や質を見ることができる。


「分かった。半分は任せよう」


背中を合わせ、敵に視線を配りながら話した二人は、戦闘態勢に入る。

藍人は両手の甲から矢羽根型の形をした鉄のような物が、尖っている方を指先に、そこから一メートル程、いくつかの矢羽根型の尖っている方とへこんでいる方をピッタリとはめて連結させた、鎖のような物を発現させた。

藍人が右手を左から右へ振ると、ピッタリと連結した矢羽根型の尖った部分が一斉に右を向き、さらに鎖の長さが伸びた。

向きも変化し、長さも伸びたことで、一つ一つの間に隙間が生まれたが、矢羽根型の形をした鉄のような物は繋がったまま、変わらず鎖のようになっている。

矢羽根型の尖った部分が、数人の組員が放った斬を打ち消しながら接近し、数人の組員に命中した。

さらに、左手を斜め上に伸ばし、一気に下げると、連結された矢羽根が一気に飛び散り、組員数人に命中した。

藍人の攻撃を受けた組員はその場に倒れた。

一方洋那は、残ったほとんどのヴォーネを使ってベズンズを発動し、戦っていた。

さっきまでの攻防とは異なり、相手が半数以下になったことで、相手を圧倒している。

相手が数人まとめて近づいてくるタイミングを見計らって、稲妻を自身の周辺に放ち一気に撃破すると、残った組員数人に稲妻を纏った斬を放ち、あっという間に勝負をつけた。


こうして、オリエンテーション合宿での影洛及びその配下の組織との戦闘は、幕を閉じた。


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