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16話 朝焼の力

露松にある、とある廃墟群。

そこにある大倉庫で、りのかが放った特大の斬と甫哭巳が放った特大の斬回が衝突し、衝撃が走っている。

少しすると、二つの斬は打ち消し合い、消滅した。


「ふぅー。少し危なかったなー」


甫哭巳の視界には、力尽き、その場に倒れるりのかの姿があった。

二つの斬は打ち消し合ったことで、斬によるダメージは無かったが、りのかは力を全て使い切った。

だが、甫哭巳は少し息を切らす程度に留まり、人質を増やそうとりのかに近づく。


「はあはあ・・・」

「・・・」


しかし、甫哭巳の前にヌナトが立ち塞がる。

ヌナトは顔目掛けて右ストレートを放つが、その前に甫哭巳が放った左ストレートがヌナトの顔正面に当たり、ふらつきながら後退する。

甫哭巳はヌナトを殴った後、歩みを止め、その場に立ち尽くした。


「あの小娘か」


琴音は自身のベズンズでりのかとヌナト、そして今甫哭巳の前に立ち上がった編紗とレアンの体力を回復させていた。

しかし、既にヴォーネをほとんど使い切った琴音の息は、激しく上がっている。


「もうヴォーネが底をついたか。じゃあ、無駄な抵抗もおしまいだねー」

「はあはあ。琴音ちゃん、りのかちゃんを連れて逃げて」


編紗は意識を失っているりのかをこの場から連れ出すよう、ヴォーネもスタミナも限界に達している琴音に声を掛けた。

琴音は迷いながらも、今ここに残っても、何もできないことと、りのかの容態を心配して、りのかをおぶって大倉庫から離れた。




一方、教会のような廃墟内。


・・・。

ここは?

ああ、いつものか。

いつも悠に会える場所。

夢か・・・。


意識を失い、倒れ込んだ朝焼は、いつも見る夢の中にいた。


・・・。

悠。


いつも通り、朝焼の視界には悠の姿が映る。

そして、いつも通り心配そうな視線で朝焼を見つめる悠。

だが、今回はいつもと違うことも起きた。


「朝焼・・・」

「っ!? 悠」


初めて悠が声を発したのだ。


「朝焼、もう影洛に関わるな」

「悠・・・」

「このままだと、お前まで命を落としてしまう・・・」

「俺は、悠と凛の命を奪った奴らを許せない」

「・・・。凛は俺のせいで命を失ったんだ。俺のせいで・・・。だから頼む朝焼。今なら奴らに命を奪われることはない。お前だけでも生きてくれ」

「悠のせいじゃない。凛が命を落としたのも、俺が今戦っているのも、全部凛と俺が自分で決めて歩んだ結果だ。自分を責めるな悠。それに、死ぬ気なんてない。俺は自分の心に従って自由に動き、生きて歩み続ける。それを教えてくれたのは凛と、そして悠、お前だろ」


そう。

悠と凛は出会った時から自由だった。

それはもうめちゃくちゃに。

俺も別に、何かに縛られていたわけではなかったけど、自由で、自分の心に従って、迷わず動く二人に憧れていた。


「あの時は、ただガキだっただけだ」

「それでも、俺はそんな二人が羨ましかった。だから、心のままに行動する。俺の親友を奪った奴らを倒す」

「・・・。ふっ」


悠は軽く微笑んだ。


(そうだったな、朝焼。お前は昔から、これと決めた時の信念は固く、頑固だったな。そして、めんどくせーほど仲間思い)


「なら、いつまでも寝てねーでさっさと起きろ」

「えっ」

「今、お前を守ろうと仲間が必死に戦っている、が、全員ボロボロだ」

「・・・。俺のせいで」

「ふっ。人には自分を責めるなとか言っておいて、自分では自分を責めるのか」

「え? いや、だって」

「まあいい。今、お前が動けば助かる。さあ、動け。お前を守っている仲間のために。今の仲間を助けるために」


悠がそう言うと、白い光が夢の中にいる朝焼の顔を覆った。



「雑魚がーー」


現実の廃墟内では、空磨が放つ途轍もない威圧感により、身動きを取れなくなっていた就塗巳だったが、時間の経過と共に、段々と身体を動かせるようになっていた。

空磨に対する怒りが強まった就塗巳は、うつ伏せに倒れ込む空磨にとどめを刺そうとするが、後方から横の斬が飛んできて、空磨を飛び越え後退する。


「あっ?」


怒りの形相で視線を上げると、空磨の前に朝焼が立っていた。


「っ!? なん・・・だと」


就塗巳は怒りの感情が溢れていたが、立ち上がった朝焼の姿を見て、驚きへと変わる。

朝焼の肌色は赤橙色へ変化し、腕にはまるで雲のような霧を、一筋の光が貫いているような模様が黒色で描かれている。


(なんだ? あんな模様がでるウイルスや細菌はデータにないぞ。となると、影洛に情報がない種か)


「まあいい」


就塗巳は、右手の手刀で斬を放とうとするが。


「はっ・・・」


朝焼は一瞬で距離を詰め、右ストレートを顔正面に放つ。

就塗巳は両腕を交差させ、防御したが勢いよく両足を床に引きずりながら後方へ下げられた。


(くっ・・・。こいつ、なんだこの力は)


「・・・。朝焼?」


錬とルリット、太啼棋は、立ち上がることはできていないが、意識ははっきりと戻り、朝焼の姿を見て驚いている。


(どういうこと? 朝焼はネヴォントじゃ・・・? でも、あの姿は紛れもなくヴィーリア)


錬は朝焼の姿を見て疑問を抱く。


「この野郎」


就塗巳は斜めの斬を連続で数発放った。

朝焼は右手の手刀で横一文字の斬を放つと、就塗巳の放った斬を全て消し飛ばし貫通、そのまま就塗巳の腹部に命中した。


「ぐはっー」


今度は後方へ思いっきり吹っ飛び、背中から壁に衝突し、そのままめり込んだ。


「はあはあ・・・。こいつ」


就塗巳はゆっくりと立ち上がり、そして、猛スピードで朝焼との距離を詰め、打撃戦に入った。

しかし、就塗巳の拳や蹴り、その他全ての打撃を簡単に避ける朝焼。

朝焼は、隙をついて腹部に右拳を一発。

それを食らって少し後退した就塗巳の右頬目掛けて左ハイキックを繰り出し、さらに追い討ちをかけた。

就塗巳はそれも食らい、空中で横に一回転した後、なんとか受身を取った。


「ぐ・・・」


歯を食いしばりながら睨む就塗巳に、朝焼は右手の掌を向け、そこから炎を途切れることなく放出した。

就塗巳はすかさず右手で風を放ち、吹き飛ばそうとするが、炎は吹き飛ぶことなく就塗巳に向かい、そのまま命中する。


「何? うわああああ」


就塗巳は後退し、斬を放とうとするが、地面から炎の柱のようなものが渦を巻いて放たれる。


「くっ」


就塗巳はそれをなんとか避けたが、避けた先の地面からも炎の柱が、またそれを避けてもその先の地面から、そのやり取りを数回繰り返し、五本目の柱を避けきれず、命中した。


「ぐわあああああ」


就塗巳は空宙で数回、後ろに回転し、やがて落下した。


(はあはあはあ。こいつ、まさかベズンズを持っているのか。この炎の威力。いくらヴィーリアの力で強化されているとはいえ、あまりにも強力で広範囲。ベガズだとは思えない。・・・。っ!? 一つだけあった。この見たことのない模様を映し出す可能性のあるウイルスを。いや、だがあり得ない。そのウイルスを使用した者は、二人を除いて誰も適応できなかったはず。適応した、当時十にも満たない二人の子供は、影洛が始末したはず。まさか・・・生きて。こいつは実霞晴嵐学園の一年。つまり、十五になる年。適応した子供も、もし生きていれば十五になる年のはず。いいや、あり得ない。あの二人は確実に死んでいるはずだ。でも、この力)


「間違いない。TR5型・・・」


(二人しか適応できなかったウイルス。今は生産されていない。強力すぎる力を持つウイルス)


「くっ。うおおおおおお」


就塗巳は朝焼に向かって、強力な竜巻を放つ準備をする。

就塗巳の前に出来上がった高さ二十メートル、直径十メートルの竜巻は、既に半壊していた廃墟の屋根を全て吹き飛ばし、おまけに壁も崩壊させている。

廃墟の跡は完全に消え去った。


「死ねーー」


就塗巳は竜巻を朝焼に放った。

朝焼は就塗巳が竜巻を放つ前に上空へ飛び、右手を肩の高さから掌が就塗巳に向くよう振り下ろした。

すると、就塗巳の上空から一発の巨大な雷が落ち、放たれたばかりの竜巻を破壊し、就塗巳に命中した。


「ぐああああああ」


就塗巳は意識を失い、その場に倒れた。


(凄い・・・。しかも、炎だけじゃなくて、雷も。ていうことは、ベズンズも持っている・・・。非常に稀なウイルスか細菌・・・)


二人の戦いを見ていた錬は、朝焼の力を疑問に思った。

太啼棋は言葉を詰まらせ、唖然としている。

ルリットは、何も考えていないように、ぼーっとしている。

就塗巳を倒した朝焼は、力を使い果たし、その場に倒れ、意識を失った。


「あ、朝焼ーー」


錬と太啼棋、ルリットは、倒れた朝焼の元に駆け寄った。


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