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14話 VS就塗巳

露松にある梅露広場北西の先に位置する廃墟群。

そこにある、教会のような廃墟に、気を失い倒れ込む朝焼と、朝焼に近づく就塗巳の姿があった。


(さて、このガキをどうするか。人質は、もう必要ない。とどめを刺すか)


そんなことを考えている就塗巳に向かって、横の斬が飛んでいく。


「お前は・・・。違うか」


就塗巳はその斬を軽く飛んで避け、斬を放った人間に視線を向けた。

そこには、すでにウイルスの力を使っている錬の姿があった。


「はあはあ、朝焼」


錬は朝焼の側に行き、声を掛けるが返事がない。


「すでに手負いか」

「くっ・・・」


錬は前へ走りながら両手それぞれの手刀で斬を放ち続けるが、錬の放った斬は就塗巳が右手のデコピンで放った、たった一発の横の斬で消滅し、就塗巳の放った斬が錬の腹部に命中、錬は後方へ吹っ飛んだ。


「ぐはっ」

「ほう。意識はあるか」


意識はある錬だったが、その場に右膝を突け、片膝立ちになり、息も大きく上がっている。

就塗巳は錬に追い討ちの斬を放とうとするが、左斜め前方から斬が飛んできて、そっちに斬を放った。

就塗巳が放った斬は、飛んできた斬を貫通し、一人の男に向かって飛んだが、男はその斬を避けた。


「はあはあはあ。る、ルリット・・・」


錬が斬を飛ばした男に視線を向けると、そこにはすでに息の上がっているルリットの姿があった。


「お前も、違うな。しかも、また手負いか」

「はあはあ。ルチク」


ルリットの周りに薄い金色のオーラが現れ、一つの金色の球体が不規則に回り出す。

ルリットは猛スピードで右大回りのルートを走り、就塗巳に接近することを試みる。

就塗巳は斬を数発放つが、ルリットには命中せず、接近を許し、ルリットの放った右ストレートを顔に食らい、後方へ下がった。


(速いな。だが)


ルリットは勢いそのまま左ストレートを放ち、就塗巳の右頬に命中したが、就塗巳はその場に立ち留まった。


「お前、そのスピードに慣れていないだろ? 打撃を放つタイミングが合っていないぞ」


就塗巳は右ストレートをルリットの腹部に当て、さらにルリットが後退したところに、左ハイキックを右頬に当てた。

ルリットは錬の横まで吹っ飛び、仰向けで倒れ込んだ。


「ぐはっ・・・」

「まとめてとどめを刺してやる」


就塗巳は三人に向かって、横の斬を一発、右手のデコピンで放った。

しかし、斬は三人に当たる直前で波紋と衝突し、崩壊した。


「お前はー・・・、違うか。しかも、また手負い」

「ああ。お前が探している奴じゃない」

「なら用は無いが・・・」


倒れ込む三人の前に、太啼棋が右手で角笛を持ちながら現れた。

就塗巳は、今までとは異なり、少し真剣な眼差しになった。

就塗巳は左上がりの斬を太啼棋の上半身と下半身に一発ずつ放つが、太啼棋は角笛を瞬時に二回吹き、ピンポイントに強度の高い波紋を合わせ、二つの斬を消し去る。

その隙に接近した就塗巳は右ストレートを放つが、太啼棋は音色を変えて角笛を吹き、広範囲に波紋を出し、就塗巳を弾き飛ばした。

思わず体勢を崩し、左膝を地面に突けた就塗巳の顔目掛けて太啼棋は左ミドルキックを放つ。

ミドルキックは命中し、就塗巳が少し後退すると、太啼棋は続けて右手の手刀で右上がりの斬を放った。

就塗巳は体勢を立て直し、右手の手刀を下から上に振り、縦の斬を放ち、二つの斬は衝突して消滅した。


「ふっ。中々やるな。ガキとはいえ、さすがは実霞晴嵐の生徒といったところか。TR6、オン」


就塗巳がウイルスの力を使うと、肌色がローズレッドに変わり、身体中の所々にベージュ色の流水紋が描かれる。


ヴィーリア。

さっきまでは、少しも力を使っていなかったということか。


就塗巳は一気に十発以上の斬を放った。

太啼棋は全ての斬に反応して十回以上角笛を吹き、全ての斬にピンポイントで波紋を当てて、全ての斬を消滅させたが、就塗巳の姿を見失った。

辺りを見渡すが、どこにもいない。

すると、就塗巳は太啼棋の後方床から現れ、連続で打撃を繰り出す。

太啼棋は右手で角笛を持っており、さらに、ウイルスの力で強化されていることも相まって、近接戦では圧倒的に不利な状況になる。

当然、角笛を吹く余裕もない。

太啼棋は角笛を消し、なんとか立て直そうとするが、それでも、打撃戦では劣勢に立たされ、防戦一方になる。

しばらくの間、上手く防御して打撃を防いでいた太啼棋だったが、就塗巳の右ストレートが腹部に、左フックが右頬に命中し、ふらつきながら後退すると、それを見た就塗巳は右のデコピンで横の斬を放った。


「ぐはっ」


斬は太啼棋の腹部に命中し、太啼棋はその場に膝を突き、息を切らす。


「はあはあ」

「もう限界だろ? 諦めろ。お前に勝ち目はない」

「あっ?」


太啼棋はゆっくりと立ち上がり就塗巳を睨む。

しかし、太啼棋が見ている就塗巳の姿が段々とぼやけてくる。


う・・・。

なんだ?

視界が。

いいや、意識がはっきりとしない。


太啼棋は覚束ない足取りで立っていることが精一杯な状況になっていた。


これは、恐らくダメージによるものではない。

まさか・・・。


「ウイルスの力か」

「ふっ。察しがいいな。だが、もう手遅れだ。お前は俺の攻撃を受けすぎた。避けきれずとも上手くガードをしていたが、俺に触れた時点で俺のウイルスがお前の体内に入り、意識を朦朧とさせている」


くっ・・・。

なるほど。

これが、ヴィーリアが持つベガズとベズンズの中間的な能力か。


太啼棋は打撃戦で就塗巳の打撃を避けきれず、ガードを行い致命傷を防いでいたが、就塗巳は打撃にウイルスを付与しており、それに触れたことでTR6型ウイルスが持つ意識を朦朧とさせる力が働き、今の状況になった。

太啼棋はそんな状況でも、なんとか右手の手刀で斬を放つが、就塗巳はほとんど動かずに軽く避ける。

就塗巳は斬を避けながら右手を開き、掌を太啼棋に向け、そこから風を放った。


「う・・・。ぐはっー」


その風を受け、後方へ思いっきり吹っ飛び、太啼棋は背中から壁に突っ込んだ。

就塗巳はさらに右手の手刀で斬を放ち、追い討ちをかけた。

その斬をもろに食らい、太啼棋はその場に倒れた。


「さてと、どうするか」


就塗巳はその場に倒れている朝焼、錬、ルリット、太啼棋を見て呟いた。


(この調子ならいずれ現れるだろう。その前に、とどめを刺すか。暇だし一人ずつ。まずはこいつからだな)


就塗巳は朝焼にゆっくりと近づき、斬を放とうとするが。


「うおおおおおおお、おらーー」


馬鹿でかい声と共に空磨が全力疾走で就塗巳に接近し、そのまま右ストレートを放った。


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