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忘れがたき炎の物語  作者: 判虹彩
エルフのドラゴン編
10/21

第3話「沼地の魔物」

中世の荷物ってこんな感じみたいらしいですね。

遠くの方で動物の鳴き声が聞こえる。

今夜は満点の星空である。


平原の気候は、降雨量が少ない為、乾燥しており、昼夜の寒暖差も激しい。夜は焚き火を絶やさず、クローク(マントのような毛布)にくるまっていないと凍えてしまう。


パチッと焚き木がはねた音で、ドロレスはふと目が覚めた。

ガラが起きている。見張り番をしているのだ。


『ん?目が覚めたか?交代にはまだ早えぞ』

『ん…寒っ』


古代遺跡の壁がちょうど風を凌いでくれているが、やはり夜は冷える。


『さっき、そこの小川で水汲んできたんだ。スープ飲むか?』

『うん…』

ガラはビッグホーンの骨から出汁を取り、胡椒を少々振りかけたスープをドロレスに渡した。

『ほっ…あったかい。サンキュ』

ドロレスは起き上がってスープを飲んだ。味は薄いが、温かさが身体に染み渡った。


『これ、懐かしいな。あの時飲んだやつだね』

『あ?…ああ、ケルピー退治の時だっけか?』

ドロレスはクロークにくるまりながら、スープが入ったカップを片手にガラの隣に座った。

『アーヴァンクだよ。忘れたのか?』

『ああ、そうだった。お前と初めて会った時だったな。』

ガラは、ドロレスと初めて会った時のことを思い出した。


今から数年前、ガラが勇者隊を離れてまだ間もない頃、貿易都市パンテラのギルドに顔を出した。彼は、とにかく旅費を稼ごうと、何か手っ取り早い仕事はないかと探していたのだ。

目に留まったのは「魔物討伐依頼」どうやら、サーティ川上流域の集落に最近魔物が現れ、住民を苦しめているそうだ。

ガラが“元勇者隊“ということは、ギルド連中では既に噂になっており、若干冷ややかな目で見られていた。

ドロレスは、当時既にギルド1の稼ぎ頭として名を馳せており、その討伐隊の頭であった。統率の取れた良い隊だとガラは思った。それはドロレスの実力によるものであるとも。

討伐隊は、サーティ川上流の魔物発生現場に到着し、野営を張った。しかし、その夜、突如大雨が降り、川が増水した。翌日早朝、雨が小康状態になった頃、討伐隊の一人が魔物の出現を確認した。

川辺に生息する魔物「アーヴァンク」である。青黒い毛皮で覆われた、大きなビーバーの様なその魔物は、鋭い鉤爪を持ち、獰猛な性格で高い知性も持っていた。数匹が現れ、集落を襲おうとしていたところだった。ドロレスたちは、すぐに駆けつけた。

ドロレスたちにとって、この依頼は“中の下“程の比較的簡単な仕事であった。

しかし、ミスというものは何気ないところに起きるものである。ドロレスは川辺に飛び移ろうと石に足を乗せたところ、苔で足が滑り、川に転落してしまったのだ。増水した川は水かさが増しており流れも速かった。ガラは咄嗟に川へ飛び込み、ドロレスの方に向かった。みるみるうちに二人は流されていく。

途中の流木に捕まり、ガラはなんとかドロレスを引っ張り上げることが出来た。しかし、そこは運悪くアーヴァンクの棲家の近くであった。わらわらと棲家からアーヴァンクが出てくる。しかもドロレスは、滑った時に足を負傷してしまっていた。

ガラはドロレスを庇いながらも、必死にアーヴァンクを撃退していった。

その様子を見ていた討伐隊の皆は、ガラに対する評価を一変させた。一躍英雄視されたのである。

ドロレスも、ガラによって命を救われたのであった。


『あの日、冷えた身体にあんたが作ってくれたスープが美味くてさ。これ飲んだら思い出したよ。』

ガラは少し照れくさそうにした。

『あの時は色々考える前に、気付いたら川に飛び込んでたな。今思えば無茶だった』

『だけど、あそこであたしを助けてくれなきゃ、あたしは多分ここにいなかった』

ドロレスはガラの肩を軽く叩いた。

『あれからずっと顔を出さないから心配してたんだ。王国から離れていったからね。あたしは何かに巻き込まれたんではないかと思ってたよ。』

ガラはふっと笑った。

『まぁ、実際に巻き込まれてるけどな』

『あはは、遅かれ早かれか…』



ドロレスはふと夜空を見上げた。

『なぁ…ガラ』

『…ん?なんだ?』


『あたしはね、あんたが好きだ。』


ガラはドロレスの方をふいと向いた。ドロレスは夜空を見たままだ。


『あ…』

『でもさ、あたしはセレナも大好きなんだ』

ガラはセレナの方を見た。ドロレスはゆっくりとセレナの方を優しい目で見つめた。

『…だからさ、二人が一緒にいて欲しいって思ってるんだ。これは嘘じゃなくてね。』

ガラは、ドロレスの方を無言で見つめた。

『たしかに、この子は今後どうするのか分からないよ。エルフのドラゴンを助けた後、またコンパルサに戻っちまうのか…多分本人もまだ分からないんだよ。』

『ああ、そうかもな…』


セレナはコンパルサの奥から、ガラに付いて行き、人間の世界へと飛び出した。刺激的な楽しみや愉快な仲間たちにも会えた。しかし、様々な問題にもぶつかった。それは偶然なのか、必然であったのか誰にも分からない。

セレナはドラゴンとして、またオーブを守る為に森に帰るのか。もしくは人間として、ガラと共に生きるのか。まだ彼女には答えは出ていないのかもしれない。


ドロレスは、素直な気持ちをガラに打ち明けたのだ。

『でもさ、セレナがあんたと一緒にいたいって言うなら、私はそうして欲しい。…ガラ、一人でいたって、人生つまんないよ。』

ガラは黙って、焚き火の揺らいだ火を見つめている。

『ご馳走様!じゃあ後は、あたしが見張りやるから、あんたは休みなよ!』

ドロレスはそう言って、ガラの背中をバンと叩いた。

ガラは静かに横になった。


夜空は時折り流れ星も瞬いている。静かで寒い夜であった。


ーーー夜が明けた。

朝日が丘の上から顔を出し、小川の方から鳥の鳴き声がする。


見張の番であったマコトは、刀に手を掛けながら頭をこっくりこっくり動かしている。

『ほら、まこちょん。朝だぞ』

セレナはマコトの頭をこんこんと小さく叩いた。

『んあっ!お、起きてますぞ!』

ぷっとセレナは笑った。

ガラたちは小川で水を汲み、馬にまたがり、さらに北西へと進んだ。


気温がぐんぐんと上がっていく。夜の寒さはどこへ行ったのか。燦々と降り注ぐ陽射しは、ガラたちの体力をじわじわと奪っていく。

『さすがに馬は速いな』

『だけど、馬も疲れてるよ。そろそろ休憩しよう!』

ドロレスは、小高い丘と丘の間の道を指差した。

マコトは地図を確認する。

『この道を抜ければ、沼地に出ますぞ。』


サーティ平原には、広大な湿地帯もある。そこを抜ければポカロ山脈まで後すぐである。しかし、その湿地帯こそが、サーティ平原で最も困難な道のりであるのだった。


馬の足取りが段々と悪くなっていく。

『馬を降りよう!』

ガラは皆に指示をした。足場が悪く、このままでは馬の体力の消耗が激しくなる。ガラたちはやむなく馬を置いていくことにした。


また、時折り、水たまりからウォーターリーパーが飛び出してくる。

『ちっ!このやろう!』

ドロレスはメガデスで払う。

ウォーターリーパーとは、沼地に生息する魔物である。小さいが、手足はなく、羽の様なヒレが付いている。魚のようだが、鋭い牙が生えており、水辺から飛び掛かってくるのだ。


『ガラ!ここはヤバいぞ!この沼地は避けた方がいいんじゃないか?』

ドロレスが提案するが、マコトは地図を見ながら言った。

『いや、ドロレス殿。この湿地帯を回り込むとすると、かなりの時間を無駄にしてしまいまする。』

『ああ、一気に抜けた方がいいだろう!』

『ガラ!なんだか先が見えなくなってきてる!』

セレナが指差した先は、霧がどんどん濃くなっていた。

『みんな視界が悪くなってくるぞ!あまり離れるな!』

『あ〜最悪だ!膝までぐっちょぐちょだよ』

『深みにハマるな!出れなくなるぞ!』


視界は既に5メートル程しか見えない状態である。

その時であった。

『うっ!』


ドロレスの叫び声がしたかと思うと、しーんと静まり返ってしまった。

『ん?ドロレス?どうした?』

ガラが振り返る。しかし返事は無い。

『ドロレース!そこにいるの?』

セレナも叫んだ。

『ドロレス殿!返事をされよ!』

マコトも声をかけるが反応は無かった。その時、ガラは叫んだ。

『みんな!ちょっと伏せてろ!』

ガラは後方のドロレスがいた付近の少し上あたりに手をかかげた。


『ファズ!』


ガラの手から光球が放たれ、閃光と共に爆発した。

その時である。爆発音と共に、沼から巨大なワームが姿を現した。10メートルはあるだろうか。ワームとは、沼地に生息する魔物で、真っ黒な体の巨大なミミズのような姿をしている。目は退化して無いが、ナマズのような触覚や口をしている。沼地に迷い込んだ動物や魚などを飲み込み、沼の中へ引きずりこむのだ。


『ギョオオオアーッ!』

ワームは鳴き声をあげた。その時、開いた口からドロレスの足が見えた。


『ドロレス殿!』

マコトは鞘から“女狐“を抜き、ワームの首目掛けて飛び上がった。そして、首元目掛けて振り抜いた。

「しゅぱっ!」と刀は一閃を描き、ワームに当たった。ギョオオーッとワームが叫ぶが、手応えは満足ではなかったようだ。

『まだ浅い!』

そして、ワームは再び、沼の中へ沈んでいった。

『くそっ!』

ガラはもう一度、ファズを放とうとする。

しかし、今度はガラの後ろからワームが飛び出したのだ。

『ギョオオオアーッ!』

『ちっ!』

ガラはすぐさま振り返った。

しかし、ワームは鳴き声を上げたまま、地面に倒れ込んだ。その時、ワームの頭から何か飛び出した。

『ドロレス!生きてるのか!』

ドロレスのメガデスがワームの頭を切り裂いて出て来たのだ。

セレナはスキッドローで、ワームの頭をさらに切り開く。

『ブハッ!ゲホッゲホッ』

中から泥と血まみれのドロレスが出てきたのである。

『ドロレス!よかった!』

セレナはドロレスに抱きついた。

『あ〜くそっ!最悪だ!生臭い!』

ワームの体の中から、たくさんの骨や人の衣服のような物が出てきた。おそらく旅人を襲っては、食べていたのだろう。

『ワームがこの湿地帯にいるとはな。』

ガラはかつてこの周辺を旅していた時、ワームなどは見かけなかったという。何か様子がおかしいとガラは思った。先程から魔物の出現率が高くなってきているのだ。


『ガラ、何か感じる!』

その時、セレナはドラゴン特有の超絶的な感覚で何かを感じ取ったようだ。

『またワームか?』

『違う…もっと恐ろしい何か…もっと大きな…』


ドロレスが奥の方を指差した。

『何か来るぞ!』

マコトは女狐を構えた。


その時、ズーンという地響きがなる。大地が震えるような感覚である。

『!?火山が噴火でもしたか?』

ドロレスは目を凝らす。


ガラは、体が震えた。

『おいおい、まさか…こいつは…』


『ベヒーモスだ!』


ガラが叫んだ。

『ベヒーモスだって?伝説の怪物じゃないのか?』

ドロレスが言った。

『伝説?実在しないはずの魔物ということであるか?』

マコトも声をあげた。


ベヒーモスとは、古代から存在が確認されており、巨大な象やカバのような生き物とされている。

ガラ自身、噂に聞いていた程度であったが、この沼地に生きているとは思えなかった。しかし、ワーム以上の大きさで、沼地に生息しているとすれば、ベヒーモスくらいしか思い浮かばなかったのである。


セレナは、既に服を脱ぎ始めている。

ガラは止めようとしたがセレナは聞く耳を持たなかった。

『グオオオオン!』

凄まじい咆哮と共に、銀のドラゴンが姿を現した。

『セレナ!』

ドロレスが見上げた。

『これが真の姿であるか!』

マコトは初めてドラゴンになったセレナを見たのである。

『セレナ!無理すんな!』

ガラはセレナに忠告した。セレナはこくりと頷き、飛び上がり、巨大な魔物に向かっていった。

『みんな!行くぞ!』

ガラは、ドロレスとマコトに声をかけた。

セレナは翼を羽ばたかせると、霧がだんだんと晴れていく。奥から巨大な魔物の全貌が段々と明らかになっていく。


牛の様な角、カバの様な口、飛び出した牙。濃い紫色の毛皮で覆われ、犀のような体と(ヒヅメ)を持っていた。全長は30〜40メートルはあろうか。目はギロリと鹿のような横長の瞳孔である。

鼻から激しく息を吐きながら、ゆっくりとこちらへ向かってきている。

『ヴモオオオオオーッ!』

沼地一体に響き渡る声である。先程のワームが小さく見える程の大きさである。


『こいつはヤベェな!』

ガラはオーバードライブを発動し、メタリカに火をまとわせた。

ドロレスは、アックスを回している。

マコトは、女狐を持ち構えた。


ベヒーモスは角を振り回して、セレナを追い払おうとした。ブワッと突風が襲う。セレナはくるっと飛びながら角を回避した。

セレナは咄嗟に炎を吐いた。

ゴォーッという音と共に、ベヒーモスの顔の上部が燃えた。苦悩の表情をしながら、ベヒーモスは頭をブンブンと振り回した。

その時、ベヒーモスは前足を振り上げ、地面を激しく打ちつけた。地面がまるで地震のように震える。ガラとドロレスは、よろけて体制を崩した。

その時、マコトは回り込み、ベヒーモスの後ろ足から背中へよじ登ろうとしていた。

『まこちょん!いつの間に!』

マコトはベヒーモスの背中に辿り着いた。そして、女狐を手に、ベヒーモスの背中へ突き刺したのである。

『ヴモオオオオオ!』

ベヒーモスは暴れ出す。その隙にマコトは、すたっと地面に降り立つ。


『雷鳴よ!轟け!』


マコトは、人差し指と中指を揃えて眉間の前に立てた。

その瞬間である。

『ピシャーン!』

突然雷撃が、ベヒーモスの背中に刺さっている女狐に落ちたのである。

ベヒーモスは、さらに暴れ出した。

『いいぞ!まこちょん!』

ドロレスはメガデスを深く構えた。


『ロイヤル・ハント!』


メガデスが高速で回転し、ベヒーモスに向けて飛んでいった。

しかし、ベヒーモスの体に当たり弾かれてしまった。

『くっ!こいつめっちゃ硬いぞ!』


ガラはベヒーモスの下ろした前足を斬りつけた。

シュバッという斬撃と主に炎が巻き上がる。

しかし、すぐに火はおさまってしまった。


『こやつ!火も雷撃も斬撃も効かない!』

『さすが伝説のばけもんだぜ!』


『ガラどうする!?』

ベヒーモスの顔付近ではセレナが飛びながら火を吹き、懸命に戦っている。

その時、バシッという音と共に、セレナが落下してきた。ベヒーモスの角がセレナに直撃したようだ。

ズーンと、セレナが地面に着地する。肩あたりから血を流している。

『ロロロ…』

セレナは喉を鳴らして警戒している。

その時、ベヒーモスの前足がガラたちの目の前に飛び込んできた。

ガラたちは吹き飛んだ。

『ぐあーっ!』

『くそっ!肋骨が何本か折れちまった!』

ドロレスは体制を整えながらぶっきらぼうな笑みを浮かべた。

『あれ次食らったらヤベェぞ!』

ガラも自分の腕を押さえている。


その時ガラはマコトに言った。

『マコト!お前の刀は刺さったままか?』

『さよう!』

『もう一回あれ撃てるか?』

『拙者の幻術はあと2回と言ったところ!』


ガラは何か思いついたようだ。

『よし、セレナ!俺を持ち上げて飛んでくれ!』

『ガラ!どうする気だ?』

『あいつの口ん中に入って、ファズをお見舞いしてやる!』

『無茶だ!角で吹き飛ばされるぞ!』

『ドロレス!お前のアックスで目を狙うんだ!』


ドロレスは、不適な笑みを浮かべた。

『なるほどね!とにかくやってみるしかない!』


ベヒーモスは、前足を振り上げてガラたちの方に向かって来る。

『来たぞ!今だセレナ!』

セレナはガラを持ち上げて飛び上がった。


『今だ!ドロレス!目だ!』

ドロレスはメガデスを深く構える。

『よっしゃ!ロイヤル・ハント!』

メガデスがベヒーモスの目に目掛けて飛んで行く。

ズバッ!とベヒーモスの目に当たった。

ベヒーモスは、悶絶しながら動きを止めた。

『行けぇぇっ!マコト!』


マコトはまた眉間の前に指を立てる。

『雷鳴よ!轟け!』


ピシャーン!と雷撃がベヒーモスに落ちる。

ベヒーモスは前足をあげて悲鳴を上げた。

『ヴモオオオオオ〜ッ!』

その瞬間であった。ベヒーモスの口が大きく開いたのだ。

『今だ!セレナ!俺を口に放り込め!』


セレナはガラをベヒーモスの口目掛けて放り投げた。


『やったか!』

『入った!』


『ヴモオオオオオ…』

ベヒーモスは、鼻息を荒げて、姿勢を低くした。


『どうなんだ?』

ドロレスは、メガデスを構えている。

『動きが止まり申した!』


セレナは地面に降り立った。

数秒間経ったが、何も起こらない。


『ヤバい!ガラが!』

ドロレスは、咄嗟にベヒーモスに向かって走り出した。

『失敗したのであろうか?』

マコトも走り出した。


その時である。

ベヒーモスの体内からドンドンと音が響いてきたのである。

ドロレスは足を止めた。

『ガラが撃ってるぞ!』

ドンドンと何度も音が聞こえる。


その時、ベヒーモスは口を大きく開けた。その中から突然大量の液体が吹き出したのである。

ドバドバと、ドロっとした液体が勢いよく吹き出ている。その中から大きな塊が飛び出した。

その塊は、地面に落ち、ゴロゴロと転がった。

『ガラ!』

ドロレスは、その塊がガラだと分かったようだ。


その時、ベヒーモスは白目を剥いて、ぐらりとよろけ、地面に倒れ込んだのだ。


『よけろ!』

ドロレスは、皆に呼びかけ、マコトとセレナはさっとその場から離れた。


ズズーン!と物凄い地響きと共に、砂埃が巻き上がる。沼地の木々もバキバキと倒れる。


ベヒーモスは白目を剥いて動かない。息もしていないようだ。


『やった…やったぞ!ベヒーモスを倒した!』

『伝説の魔物を退治した!』


セレナは人間の姿に戻った。そして、ガラの元へ駆け寄り、肩を貸してガラを立たせた。

『ガラ!倒したよ!私たち!』


マコトもドロレスに肩を貸し、立ち上がらせた。

『みんなボロボロだな!あはは…イテテ!』

ドロレスは肋骨が折れている。

『ぐちょぐちょだね!あはは!』

セレナも笑った。


ガラたちは、ついに力を合わせ、伝説の魔物を打ち破ったのだ。


ガラたちのこの戦いが、後世に語り継がれる新たな伝説になろうとは、この時はまだ夢にも思っていなかったのである。


読んでいただきありがとうございます。

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