第3話「沼地の魔物」
中世の荷物ってこんな感じみたいらしいですね。
遠くの方で動物の鳴き声が聞こえる。
今夜は満点の星空である。
平原の気候は、降雨量が少ない為、乾燥しており、昼夜の寒暖差も激しい。夜は焚き火を絶やさず、クローク(マントのような毛布)にくるまっていないと凍えてしまう。
パチッと焚き木がはねた音で、ドロレスはふと目が覚めた。
ガラが起きている。見張り番をしているのだ。
『ん?目が覚めたか?交代にはまだ早えぞ』
『ん…寒っ』
古代遺跡の壁がちょうど風を凌いでくれているが、やはり夜は冷える。
『さっき、そこの小川で水汲んできたんだ。スープ飲むか?』
『うん…』
ガラはビッグホーンの骨から出汁を取り、胡椒を少々振りかけたスープをドロレスに渡した。
『ほっ…あったかい。サンキュ』
ドロレスは起き上がってスープを飲んだ。味は薄いが、温かさが身体に染み渡った。
『これ、懐かしいな。あの時飲んだやつだね』
『あ?…ああ、ケルピー退治の時だっけか?』
ドロレスはクロークにくるまりながら、スープが入ったカップを片手にガラの隣に座った。
『アーヴァンクだよ。忘れたのか?』
『ああ、そうだった。お前と初めて会った時だったな。』
ガラは、ドロレスと初めて会った時のことを思い出した。
今から数年前、ガラが勇者隊を離れてまだ間もない頃、貿易都市パンテラのギルドに顔を出した。彼は、とにかく旅費を稼ごうと、何か手っ取り早い仕事はないかと探していたのだ。
目に留まったのは「魔物討伐依頼」どうやら、サーティ川上流域の集落に最近魔物が現れ、住民を苦しめているそうだ。
ガラが“元勇者隊“ということは、ギルド連中では既に噂になっており、若干冷ややかな目で見られていた。
ドロレスは、当時既にギルド1の稼ぎ頭として名を馳せており、その討伐隊の頭であった。統率の取れた良い隊だとガラは思った。それはドロレスの実力によるものであるとも。
討伐隊は、サーティ川上流の魔物発生現場に到着し、野営を張った。しかし、その夜、突如大雨が降り、川が増水した。翌日早朝、雨が小康状態になった頃、討伐隊の一人が魔物の出現を確認した。
川辺に生息する魔物「アーヴァンク」である。青黒い毛皮で覆われた、大きなビーバーの様なその魔物は、鋭い鉤爪を持ち、獰猛な性格で高い知性も持っていた。数匹が現れ、集落を襲おうとしていたところだった。ドロレスたちは、すぐに駆けつけた。
ドロレスたちにとって、この依頼は“中の下“程の比較的簡単な仕事であった。
しかし、ミスというものは何気ないところに起きるものである。ドロレスは川辺に飛び移ろうと石に足を乗せたところ、苔で足が滑り、川に転落してしまったのだ。増水した川は水かさが増しており流れも速かった。ガラは咄嗟に川へ飛び込み、ドロレスの方に向かった。みるみるうちに二人は流されていく。
途中の流木に捕まり、ガラはなんとかドロレスを引っ張り上げることが出来た。しかし、そこは運悪くアーヴァンクの棲家の近くであった。わらわらと棲家からアーヴァンクが出てくる。しかもドロレスは、滑った時に足を負傷してしまっていた。
ガラはドロレスを庇いながらも、必死にアーヴァンクを撃退していった。
その様子を見ていた討伐隊の皆は、ガラに対する評価を一変させた。一躍英雄視されたのである。
ドロレスも、ガラによって命を救われたのであった。
『あの日、冷えた身体にあんたが作ってくれたスープが美味くてさ。これ飲んだら思い出したよ。』
ガラは少し照れくさそうにした。
『あの時は色々考える前に、気付いたら川に飛び込んでたな。今思えば無茶だった』
『だけど、あそこであたしを助けてくれなきゃ、あたしは多分ここにいなかった』
ドロレスはガラの肩を軽く叩いた。
『あれからずっと顔を出さないから心配してたんだ。王国から離れていったからね。あたしは何かに巻き込まれたんではないかと思ってたよ。』
ガラはふっと笑った。
『まぁ、実際に巻き込まれてるけどな』
『あはは、遅かれ早かれか…』
ドロレスはふと夜空を見上げた。
『なぁ…ガラ』
『…ん?なんだ?』
『あたしはね、あんたが好きだ。』
ガラはドロレスの方をふいと向いた。ドロレスは夜空を見たままだ。
『あ…』
『でもさ、あたしはセレナも大好きなんだ』
ガラはセレナの方を見た。ドロレスはゆっくりとセレナの方を優しい目で見つめた。
『…だからさ、二人が一緒にいて欲しいって思ってるんだ。これは嘘じゃなくてね。』
ガラは、ドロレスの方を無言で見つめた。
『たしかに、この子は今後どうするのか分からないよ。エルフのドラゴンを助けた後、またコンパルサに戻っちまうのか…多分本人もまだ分からないんだよ。』
『ああ、そうかもな…』
セレナはコンパルサの奥から、ガラに付いて行き、人間の世界へと飛び出した。刺激的な楽しみや愉快な仲間たちにも会えた。しかし、様々な問題にもぶつかった。それは偶然なのか、必然であったのか誰にも分からない。
セレナはドラゴンとして、またオーブを守る為に森に帰るのか。もしくは人間として、ガラと共に生きるのか。まだ彼女には答えは出ていないのかもしれない。
ドロレスは、素直な気持ちをガラに打ち明けたのだ。
『でもさ、セレナがあんたと一緒にいたいって言うなら、私はそうして欲しい。…ガラ、一人でいたって、人生つまんないよ。』
ガラは黙って、焚き火の揺らいだ火を見つめている。
『ご馳走様!じゃあ後は、あたしが見張りやるから、あんたは休みなよ!』
ドロレスはそう言って、ガラの背中をバンと叩いた。
ガラは静かに横になった。
夜空は時折り流れ星も瞬いている。静かで寒い夜であった。
ーーー夜が明けた。
朝日が丘の上から顔を出し、小川の方から鳥の鳴き声がする。
見張の番であったマコトは、刀に手を掛けながら頭をこっくりこっくり動かしている。
『ほら、まこちょん。朝だぞ』
セレナはマコトの頭をこんこんと小さく叩いた。
『んあっ!お、起きてますぞ!』
ぷっとセレナは笑った。
ガラたちは小川で水を汲み、馬にまたがり、さらに北西へと進んだ。
気温がぐんぐんと上がっていく。夜の寒さはどこへ行ったのか。燦々と降り注ぐ陽射しは、ガラたちの体力をじわじわと奪っていく。
『さすがに馬は速いな』
『だけど、馬も疲れてるよ。そろそろ休憩しよう!』
ドロレスは、小高い丘と丘の間の道を指差した。
マコトは地図を確認する。
『この道を抜ければ、沼地に出ますぞ。』
サーティ平原には、広大な湿地帯もある。そこを抜ければポカロ山脈まで後すぐである。しかし、その湿地帯こそが、サーティ平原で最も困難な道のりであるのだった。
馬の足取りが段々と悪くなっていく。
『馬を降りよう!』
ガラは皆に指示をした。足場が悪く、このままでは馬の体力の消耗が激しくなる。ガラたちはやむなく馬を置いていくことにした。
また、時折り、水たまりからウォーターリーパーが飛び出してくる。
『ちっ!このやろう!』
ドロレスはメガデスで払う。
ウォーターリーパーとは、沼地に生息する魔物である。小さいが、手足はなく、羽の様なヒレが付いている。魚のようだが、鋭い牙が生えており、水辺から飛び掛かってくるのだ。
『ガラ!ここはヤバいぞ!この沼地は避けた方がいいんじゃないか?』
ドロレスが提案するが、マコトは地図を見ながら言った。
『いや、ドロレス殿。この湿地帯を回り込むとすると、かなりの時間を無駄にしてしまいまする。』
『ああ、一気に抜けた方がいいだろう!』
『ガラ!なんだか先が見えなくなってきてる!』
セレナが指差した先は、霧がどんどん濃くなっていた。
『みんな視界が悪くなってくるぞ!あまり離れるな!』
『あ〜最悪だ!膝までぐっちょぐちょだよ』
『深みにハマるな!出れなくなるぞ!』
視界は既に5メートル程しか見えない状態である。
その時であった。
『うっ!』
ドロレスの叫び声がしたかと思うと、しーんと静まり返ってしまった。
『ん?ドロレス?どうした?』
ガラが振り返る。しかし返事は無い。
『ドロレース!そこにいるの?』
セレナも叫んだ。
『ドロレス殿!返事をされよ!』
マコトも声をかけるが反応は無かった。その時、ガラは叫んだ。
『みんな!ちょっと伏せてろ!』
ガラは後方のドロレスがいた付近の少し上あたりに手をかかげた。
『ファズ!』
ガラの手から光球が放たれ、閃光と共に爆発した。
その時である。爆発音と共に、沼から巨大なワームが姿を現した。10メートルはあるだろうか。ワームとは、沼地に生息する魔物で、真っ黒な体の巨大なミミズのような姿をしている。目は退化して無いが、ナマズのような触覚や口をしている。沼地に迷い込んだ動物や魚などを飲み込み、沼の中へ引きずりこむのだ。
『ギョオオオアーッ!』
ワームは鳴き声をあげた。その時、開いた口からドロレスの足が見えた。
『ドロレス殿!』
マコトは鞘から“女狐“を抜き、ワームの首目掛けて飛び上がった。そして、首元目掛けて振り抜いた。
「しゅぱっ!」と刀は一閃を描き、ワームに当たった。ギョオオーッとワームが叫ぶが、手応えは満足ではなかったようだ。
『まだ浅い!』
そして、ワームは再び、沼の中へ沈んでいった。
『くそっ!』
ガラはもう一度、ファズを放とうとする。
しかし、今度はガラの後ろからワームが飛び出したのだ。
『ギョオオオアーッ!』
『ちっ!』
ガラはすぐさま振り返った。
しかし、ワームは鳴き声を上げたまま、地面に倒れ込んだ。その時、ワームの頭から何か飛び出した。
『ドロレス!生きてるのか!』
ドロレスのメガデスがワームの頭を切り裂いて出て来たのだ。
セレナはスキッドローで、ワームの頭をさらに切り開く。
『ブハッ!ゲホッゲホッ』
中から泥と血まみれのドロレスが出てきたのである。
『ドロレス!よかった!』
セレナはドロレスに抱きついた。
『あ〜くそっ!最悪だ!生臭い!』
ワームの体の中から、たくさんの骨や人の衣服のような物が出てきた。おそらく旅人を襲っては、食べていたのだろう。
『ワームがこの湿地帯にいるとはな。』
ガラはかつてこの周辺を旅していた時、ワームなどは見かけなかったという。何か様子がおかしいとガラは思った。先程から魔物の出現率が高くなってきているのだ。
『ガラ、何か感じる!』
その時、セレナはドラゴン特有の超絶的な感覚で何かを感じ取ったようだ。
『またワームか?』
『違う…もっと恐ろしい何か…もっと大きな…』
ドロレスが奥の方を指差した。
『何か来るぞ!』
マコトは女狐を構えた。
その時、ズーンという地響きがなる。大地が震えるような感覚である。
『!?火山が噴火でもしたか?』
ドロレスは目を凝らす。
ガラは、体が震えた。
『おいおい、まさか…こいつは…』
『ベヒーモスだ!』
ガラが叫んだ。
『ベヒーモスだって?伝説の怪物じゃないのか?』
ドロレスが言った。
『伝説?実在しないはずの魔物ということであるか?』
マコトも声をあげた。
ベヒーモスとは、古代から存在が確認されており、巨大な象やカバのような生き物とされている。
ガラ自身、噂に聞いていた程度であったが、この沼地に生きているとは思えなかった。しかし、ワーム以上の大きさで、沼地に生息しているとすれば、ベヒーモスくらいしか思い浮かばなかったのである。
セレナは、既に服を脱ぎ始めている。
ガラは止めようとしたがセレナは聞く耳を持たなかった。
『グオオオオン!』
凄まじい咆哮と共に、銀のドラゴンが姿を現した。
『セレナ!』
ドロレスが見上げた。
『これが真の姿であるか!』
マコトは初めてドラゴンになったセレナを見たのである。
『セレナ!無理すんな!』
ガラはセレナに忠告した。セレナはこくりと頷き、飛び上がり、巨大な魔物に向かっていった。
『みんな!行くぞ!』
ガラは、ドロレスとマコトに声をかけた。
セレナは翼を羽ばたかせると、霧がだんだんと晴れていく。奥から巨大な魔物の全貌が段々と明らかになっていく。
牛の様な角、カバの様な口、飛び出した牙。濃い紫色の毛皮で覆われ、犀のような体と蹄を持っていた。全長は30〜40メートルはあろうか。目はギロリと鹿のような横長の瞳孔である。
鼻から激しく息を吐きながら、ゆっくりとこちらへ向かってきている。
『ヴモオオオオオーッ!』
沼地一体に響き渡る声である。先程のワームが小さく見える程の大きさである。
『こいつはヤベェな!』
ガラはオーバードライブを発動し、メタリカに火をまとわせた。
ドロレスは、アックスを回している。
マコトは、女狐を持ち構えた。
ベヒーモスは角を振り回して、セレナを追い払おうとした。ブワッと突風が襲う。セレナはくるっと飛びながら角を回避した。
セレナは咄嗟に炎を吐いた。
ゴォーッという音と共に、ベヒーモスの顔の上部が燃えた。苦悩の表情をしながら、ベヒーモスは頭をブンブンと振り回した。
その時、ベヒーモスは前足を振り上げ、地面を激しく打ちつけた。地面がまるで地震のように震える。ガラとドロレスは、よろけて体制を崩した。
その時、マコトは回り込み、ベヒーモスの後ろ足から背中へよじ登ろうとしていた。
『まこちょん!いつの間に!』
マコトはベヒーモスの背中に辿り着いた。そして、女狐を手に、ベヒーモスの背中へ突き刺したのである。
『ヴモオオオオオ!』
ベヒーモスは暴れ出す。その隙にマコトは、すたっと地面に降り立つ。
『雷鳴よ!轟け!』
マコトは、人差し指と中指を揃えて眉間の前に立てた。
その瞬間である。
『ピシャーン!』
突然雷撃が、ベヒーモスの背中に刺さっている女狐に落ちたのである。
ベヒーモスは、さらに暴れ出した。
『いいぞ!まこちょん!』
ドロレスはメガデスを深く構えた。
『ロイヤル・ハント!』
メガデスが高速で回転し、ベヒーモスに向けて飛んでいった。
しかし、ベヒーモスの体に当たり弾かれてしまった。
『くっ!こいつめっちゃ硬いぞ!』
ガラはベヒーモスの下ろした前足を斬りつけた。
シュバッという斬撃と主に炎が巻き上がる。
しかし、すぐに火はおさまってしまった。
『こやつ!火も雷撃も斬撃も効かない!』
『さすが伝説のばけもんだぜ!』
『ガラどうする!?』
ベヒーモスの顔付近ではセレナが飛びながら火を吹き、懸命に戦っている。
その時、バシッという音と共に、セレナが落下してきた。ベヒーモスの角がセレナに直撃したようだ。
ズーンと、セレナが地面に着地する。肩あたりから血を流している。
『ロロロ…』
セレナは喉を鳴らして警戒している。
その時、ベヒーモスの前足がガラたちの目の前に飛び込んできた。
ガラたちは吹き飛んだ。
『ぐあーっ!』
『くそっ!肋骨が何本か折れちまった!』
ドロレスは体制を整えながらぶっきらぼうな笑みを浮かべた。
『あれ次食らったらヤベェぞ!』
ガラも自分の腕を押さえている。
その時ガラはマコトに言った。
『マコト!お前の刀は刺さったままか?』
『さよう!』
『もう一回あれ撃てるか?』
『拙者の幻術はあと2回と言ったところ!』
ガラは何か思いついたようだ。
『よし、セレナ!俺を持ち上げて飛んでくれ!』
『ガラ!どうする気だ?』
『あいつの口ん中に入って、ファズをお見舞いしてやる!』
『無茶だ!角で吹き飛ばされるぞ!』
『ドロレス!お前のアックスで目を狙うんだ!』
ドロレスは、不適な笑みを浮かべた。
『なるほどね!とにかくやってみるしかない!』
ベヒーモスは、前足を振り上げてガラたちの方に向かって来る。
『来たぞ!今だセレナ!』
セレナはガラを持ち上げて飛び上がった。
『今だ!ドロレス!目だ!』
ドロレスはメガデスを深く構える。
『よっしゃ!ロイヤル・ハント!』
メガデスがベヒーモスの目に目掛けて飛んで行く。
ズバッ!とベヒーモスの目に当たった。
ベヒーモスは、悶絶しながら動きを止めた。
『行けぇぇっ!マコト!』
マコトはまた眉間の前に指を立てる。
『雷鳴よ!轟け!』
ピシャーン!と雷撃がベヒーモスに落ちる。
ベヒーモスは前足をあげて悲鳴を上げた。
『ヴモオオオオオ〜ッ!』
その瞬間であった。ベヒーモスの口が大きく開いたのだ。
『今だ!セレナ!俺を口に放り込め!』
セレナはガラをベヒーモスの口目掛けて放り投げた。
『やったか!』
『入った!』
『ヴモオオオオオ…』
ベヒーモスは、鼻息を荒げて、姿勢を低くした。
『どうなんだ?』
ドロレスは、メガデスを構えている。
『動きが止まり申した!』
セレナは地面に降り立った。
数秒間経ったが、何も起こらない。
『ヤバい!ガラが!』
ドロレスは、咄嗟にベヒーモスに向かって走り出した。
『失敗したのであろうか?』
マコトも走り出した。
その時である。
ベヒーモスの体内からドンドンと音が響いてきたのである。
ドロレスは足を止めた。
『ガラが撃ってるぞ!』
ドンドンと何度も音が聞こえる。
その時、ベヒーモスは口を大きく開けた。その中から突然大量の液体が吹き出したのである。
ドバドバと、ドロっとした液体が勢いよく吹き出ている。その中から大きな塊が飛び出した。
その塊は、地面に落ち、ゴロゴロと転がった。
『ガラ!』
ドロレスは、その塊がガラだと分かったようだ。
その時、ベヒーモスは白目を剥いて、ぐらりとよろけ、地面に倒れ込んだのだ。
『よけろ!』
ドロレスは、皆に呼びかけ、マコトとセレナはさっとその場から離れた。
ズズーン!と物凄い地響きと共に、砂埃が巻き上がる。沼地の木々もバキバキと倒れる。
ベヒーモスは白目を剥いて動かない。息もしていないようだ。
『やった…やったぞ!ベヒーモスを倒した!』
『伝説の魔物を退治した!』
セレナは人間の姿に戻った。そして、ガラの元へ駆け寄り、肩を貸してガラを立たせた。
『ガラ!倒したよ!私たち!』
マコトもドロレスに肩を貸し、立ち上がらせた。
『みんなボロボロだな!あはは…イテテ!』
ドロレスは肋骨が折れている。
『ぐちょぐちょだね!あはは!』
セレナも笑った。
ガラたちは、ついに力を合わせ、伝説の魔物を打ち破ったのだ。
ガラたちのこの戦いが、後世に語り継がれる新たな伝説になろうとは、この時はまだ夢にも思っていなかったのである。
読んでいただきありがとうございます。
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