表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れがたき炎の物語  作者: 判虹彩
老龍編
1/21

第1話「竜の女」

お初にお目にかかります。判虹彩(ばんこうさい)と申します。どうかよろしくお願いします。さて、私は生まれて初めてこの小説を書きました。いかがでしょうか?

文才こそありませんが、小学生の頃から漫画にハマり、書いては友人に見せて楽しんだものです。どうやらその頃から何かしらストーリーを考えては表現するのが好きな性分のようです。でも難しい文章や表現力はありません。頭の中に浮かんだ世界をひたすら文に起こしていく。それだけです。お見苦しいところもあるかとは思いますが、この世界を気に入ってくれたなら本望です。

よろしくお願い致します。

男は剣を片手に持ちながら、森の奥をじっと見つめている。髭を蓄え、ボロボロのレザーアーマーに身を包んでいる。肘、肩、頬や瞼に傷があり、血が滴り落ちている。額には汗が滲み、頬から顎にかけて、血と混じり合いながらポタポタと流れ落ちている。

しかし男は微動だにせず、ただ森の奥を剣を構えながら凝視しているのだ。

ふと左鼻の穴からドロっと血が垂れる。すぐさまグイッと袖で拭き取りながら男は呟いた。


『くそったれ。3匹もいるなんて聞いてねえぞ。』


その時であった。男が見つめる森の奥から大きな影が飛び出した。木々や葉を吹き飛ばしながら、大きな影は空へと浮かび上がる。



バサッバサッと大きな音を立て、その影は、みるみるうちに男の方へ向かっていく。


『グオオオオーーン!』


大地を揺るがすような咆哮。

まさにそれは“ドラゴン“そのものであった。


その大きな影は、すっかり男を陽光から遮り、下にいる男をギラリと睨み付けた。


そのドラゴンは、全身を銀色の鱗で覆われており、陽光に当たると、乱反射しキラキラと輝いている。頭には角が2本生えており、口には鋭い牙がたくさん生えている。全長10数メートルはあるだろうか。またその翼は、そのおよそ2倍はあるであろう。

バサッバサッと羽ばたいた風は、容赦なく男にぶつかっていく。尻尾は垂直に垂れ下がっており、先の方はゆっくりと左右に振れている。


男はドラゴンから目を離さず、剣を構えながらジリジリと後ろに下がった。その時、剣を持たない方の手から青白い火がボッと出たかと思うと、手の周りにまとわりつかせた。どうやら彼は火を操れるようである。


『さあ、来やがれ!』


男がこう言うと、ドラゴンは一瞬ふっと上昇し、頭から男目掛け、物凄いスピードで突っ込んできた。そして、牙を剥いて男に襲いかかる。


その瞬間、男は火をまとっている手をドラゴンの方にかざした。


『ファズ!』


男の手から放たれた光球が、ドラゴンの目の前で閃光を放ちながら爆発した。


バーン!と物凄い音が森中に響き渡る。


ドラゴンは咄嗟に目を瞑り、ぐわっと首を曲げて向きを変えようとした。

その瞬間、男はくるくるっとドラゴンの腹の下に向かって前転し、持っていた剣を左右に弧を描くように振り払った。ドラゴンの腹からブバッと血が吹き出す。あまりにも鮮やかな動きである。

ドラゴンは、「グオオ」と叫びながら体制を崩し、ドーンという地響きと共に、地面に倒れ込んだ。


『やったか?』


男はドラゴンの方を振り返る。しかし、ドラゴンはすぐさま起き上がり、男の方に向き直した。


『ちっ!タフなやつめ!』


男はドラゴンの方を向きながら、ジリジリと横に移動し、もう一度片方の手に火をまとわせた。

ドラゴンは、今度は四つん這いになりながら、男と対格に距離を保ち、円を描くように移動していく。


『ロロロロ…』


ドラゴンは喉を鳴らしながら、男を睨み付けている。腹からはポタポタと血が垂れている。


男は火をまとわせた手を、今度は自分の横の地面に向けてかざした。その瞬間、手から光球が飛び出し、ボンッ!と地面に穴があいたのである。そして男は、またぱっとその横に移動する。

男は段々と肩で息をするようになってきた。


『はぁはぁ、このままだと俺の体がもたねえ。…この技は使いたくなかったんだが…決めさせてもらうぞ!』


そう言いながら、男はまた地面に光球を放ち穴を開ける。


その時、ドラゴンは口を大きく開き、男目掛けて炎を吹き出した。


ゴオオオオ!


すぐさま男は横に転がり回避する。


『まだ分かんねえみてえだな!俺に火は効かねえんだよ…』


そう言いながら、またしても男は地面に穴を開ける。四つほど穴を開けただろうか。穴はドラゴンを囲んで外側に四隅に位置している。

そして男は、剣を両手に持ち替え、刃を地面に向けて突き刺した。


『ファイヤーハウス!』


その瞬間、穴を開けた四隅の角の内側の地面から大きな火柱が立った。


ゴオーという音と共に、火柱はみるみるうちにドラゴンを覆い尽くした。


『グオオオオン!!』


ドラゴンは悶絶しながら吠えている。


男は地面に突き刺した剣を握りながら、無言でドラゴンを見つめている。


その時であった。ドラゴンは男の反対方向にくいっと体制を向け、尻尾を男目掛けてぶつけてきたのである。


すぐに男は剣から手を離し、後方へ飛んだ。


『ちっ』


剣がドラゴンの尻尾で折れて吹き飛んだ。その瞬間、火柱がふっと消えていった。


そして、ドラゴンはそのまま力無く倒れ込んだ。ドオーンという音があたりに響く。


男は膝から崩れ落ち、地面に座り込んだ。

『はぁはぁ、やったぞ』

しばらくすると、ドラゴンはみるみるうちに縮んでいく。角、羽、尾、鱗は次第に消え去り、形を変えていく。頭からは銀色の髪が生え、鱗は白い艶のある肌に変わっていった。まさしく女の姿である。女はそのまま倒れ込んだ姿で、苦しそうにしている。


男は立ち上がり、脇から短刀を取り出して、その女に近付いていく。女は、カッと目を開き、男に顔を向けた。見た目は10代後半くらいであろうか。女は、必死の形相で男を睨みつけている。


『さあ、殺すがいい!』


女の目は、燃え盛る火のようにオレンジ色をしていた。先程のドラゴンと同じ色の目である。

そして、銀髪は腰まで伸び、白い肌を半分程隠していた。


男は短刀を女の方に向けていたが、さっと懐にしまい、向きを変え歩き出した。


『どうした!殺さないのか!』


男は女の声に気にも止めずに歩いていく。しかしながら、歩調はフラフラである。おそらく男は既に体力が限界なのであろう。


女も立ち上がり、男に近付いていく。女も歩調はフラフラである。


『待て!人間!なぜ私を殺さない!』


『うるせえな…うちに帰んな。もう悪さすんなよ。』


女は男を見ながら立ち止まる。

そして、すぐにまた男の方へ歩き出す。


『待て人間、どこへ行くんだ!』


『なんだよ。俺はもうお前に用はねえんだよ。』


そう言いながら、男は地面に置いてあった革袋を持ち上げた。そしてまた歩きだすと、そこには2体のドラゴンが倒れていた。

先程戦ったドラゴンと、ほぼ同じ姿かたちのドラゴンである。だが既に2体とも息はなかった。男が仕留めたのであろうか。男は無言でドラゴンの角や牙を抜く。そしてそれを淡々と革袋に入れていった。女はその様子を男の少し後ろで、ずっと見つめている。


『それを売るのか?』


男は女の方に向かずに答える。


『これは証拠品だ。ギルドで金に替える』


よし、と言うと男はまたしても歩き出した。

女はすぐに男の後を追いかける。


『なあ、なあ、どこへ行くんだ?人間の棲家へ行くのか?』


『そうだ。』


男は歩きを止めない。


女の姿は、まるで人間の少女そのものであった。先程戦ったドラゴンの姿とは到底似ても似つかない。


『なぁ、人間よ!私もついていきたい!そこへ連れていっておくれ!』


男はピタッと足を止めて振り返る。


『お前何言ってんだ?』


女は続ける。


『お願いだ!あなたのお供にさせておくれよ!』


男はふぅーっと息を吐き、しばらく女を見つめると、また歩き出した。


『好きにしろ。俺は知らん。』


と言うと、女の顔はパッと明るい表情になった。


そして、すたすたと男のそばまで近づいていく。男は女を見て言った。


『お前、そのかっこで付いてくるのかよ?』


そう言った瞬間、男は苦しそうな表情に変わり、ううっと唸ったまま倒れ込んでしまったのだった。







男が目を覚ますと、そこは広い洞窟の中だった。男は起きあがろうとするが、体が言うことを聞かない。


『くそっ。無理し過ぎた』


すると奥から女が歩いてきた。ドラゴンから変身した女だ。銀髪は後ろで束ねられ、布切れを身につけている。


『なんだ、お前の棲家か?』


よく見ると女の手には葉っぱが数枚握り締められている。


『じっとしてろ。大丈夫。食ったりはしないよ』


そう言うと女は、握っていた葉っぱをおもむろに口に含み、くちゃくちゃと噛み出した。次に着ている布切れの端をびりっと破くと、そこにくちゃくちゃになった葉っぱをぺっと吐き出した。すると、男の体の傷の部分にそれをくっつけたのである。うっと男は声を出すが、女は言った。


『竜の薬草だよ。傷が治るんだ。』


たしかに男は体の奥から温かくなっていくのを感じた。そして、女はまた奥へ行き、戻ってくる。しかし次は口に何かを含んでいる。男の頭のすぐ横に座ったかと思うと、男の口へ自分の口を付けた。

男は驚いたが、まだ体が言うことを聞かない。

その瞬間、口の中に水が流れ込んでくる。女は口移しで男に水を与えたのだ。


『飲め。』


そう言うと女はこの動作を二、三回繰り返した。


男はそのまま眠りに付いてしまった。


その夜、男は夢を見た。燃え盛る家々、逃げ惑う人々、男は何かを必死で探していた。家の前で倒れている女性を見つけると、男はぐっと抱き寄せた。


『ウラ!俺だ!目を覚ませ!』


『あ…あなた…』


女性の衣服は全身焦げており、意識は朦朧としている。


『ウラ!しっかりしろ!』


女性はそのまま男の腕の中で息を引き取った。


『ウラ!!!』


ハッと男は目を覚ました。


隣にはすーすーと、寝息を立てて女が眠っている。おそらく、一晩中男を看病していたのだろう。男は体の痛みがすっかり引いてることを実感した。


『こいつはすげぇな。』


そう呟くと、置いてあったレザーアーマーを手に取り、素早く着用しながら外へと歩いて行き、再び森の中へ入って行った。


女が目を覚ますと、薪火がくべられ、そこに串に刺された動物の肉が焼かれていた。


『ほら、食え』


その肉を女にやると、女は夢中でそれに食いついた。


『じゃあ俺は行く。傷、治してくれてありがとうな。』


女は立ち上がり


『お願いだ!私も連れて行って!あなたの邪魔はしないから!』


男はしばらく考えると


『どうなっても知らねえぞ』


女は笑顔になり


『うん!ありがとう!人間!』


と答えた。


男は


『俺はガラってんだ。』


と言いながら洞窟の出口へと歩き出した。


『ガラ!私はセレナ!』


セレナは嬉しそうにそう言い、ガラに付いて行ったのだった。

いかがでしたでしょうか?ガラとセレナの出会い。ありきたりな展開かもしれませんが、どうか長きに渡りお付き合いいただければ嬉しいです。ご感想もお気軽にください。今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ